ポジションから読み解く『最後のジェダイ』の考察

 

スター・ウォーズ/最後のジェダイ』はライアン・ジョンソン監督が贈る、2015年に公開されたエピソード7こと『フォースの覚醒』の待望の続編。

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エピソード8である『最後のジェダイ』ではレイ、フィン、ポーなど新たに登場したキャラクターたちの物語の続きが描かれるものの、肝心のあらすじは未だに明かされないという謎っぷり。今回は、そんな『最後のジェダイ』がおかれているポジションについて考察を行っていこうと思います。

(ここで説明しておきますと、エピソード1~3がプリクエル・トリロジー=新三部作、エピソード4~6がオリジナル・トリロジー=旧三部作ならば、エピソード7~9は「続編」を意味するSequelより、シークエル・トリロジー=続三部作とし、エピソード1~9の本編をサーガ、ローグワンから始まるスピンオフをアンソロジーと呼ぶことにします)

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続三部作を拡張する

伝えられるところによれば、『最後のジェダイ』は『フォースの覚醒』から直結する始まり方をするとのこと。一番最初に公開されたエピソード8の映像より、『フォースの覚醒』のラストを改めて撮影しなおしたような映像が挿入されているので、この情報は確実です。f:id:the-Writer:20170504190649p:plain

今までサーガは作品毎に必ず1年以上の間がとられており、その間に起こった主要な出来事はあのオープニングクロールで説明されますね。このスタイルが破られることとなり、エピソード8がSW界の革命児であることを予感させますが……(実際エピソード8のオープニングクロールはどうなるんだろう)

『フォースの覚醒』を観て思った事の一つは、ビジュアル的には目新しい印象が無いこと。例えば登場するエイリアン種族をとっても、既存の種族があまり登場しない割には新しく登場した種族のデザインが印象的でもなかったり。メカに至ってはX-WingやTIEファイター、スターキラー基地まで含めてもオリジナルからの延長でした(ただし、明記しておきたいのは僕はこれらを批判しているわけではなく、ましてや嫌いでもありませんよ)。『フォースの覚醒』は雰囲気全体としてはオリジナルに忠実であり、どの世代のファンにもなじみやすいものだったと思います。そして、『フォースの覚醒』の役割はSWサーガの再起動であり、新世代への受け継ぎであると僕は考えています。

したがって、シークエル・トリロジーの第2章にあたる『最後のジェダイ』は思いきり新たなる物語を紡いで行けるわけです。

例えばティーザー映像の雰囲気を比較してみると、『フォースの覚醒』は新しくもやはり懐かしく、『最後のジェダイ』は新鮮で目新しい印象を受けます。

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先ほど記述したメカについてなら、身近にある形ながら印象的なフォルムのものが登場し、「さすがデザイン部門」とさっそく賞賛を贈らずにはいられませんでした。

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また、先日開催されたスター・ウォーズ・セレブレーション2017にてインタビューを受けたレイを演じるデイジー・リドリーは「ラフカットを観た何人かの人たちと話したら、『変わってる、変わってる』というの。ライアンにビジョンとイメージがあることに加えて、J.Jが新旧ファンを取り込んだから、彼のやりたいことをする余裕があったと思う」と答えていました。よって、彼のシャープなセンスが新鮮な一作を創り出す事に期待してよさそうです。

また、ライアン監督はTwitterもやっていますが、話題になったツイートをいくつか取り上げると、

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・「エピソード8の脚本を読んだけど、待ちきれない君たちとこれをシェアしなきゃと思った。聞きたいでしょ?」と言うC-3PO役のアンソニー・ダニエルズに対してライアン監督のリプライ

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・「彼らはただ『帝国の逆襲』をコピーしようとしている。新しいものは何もない」とグレッグというファンに対し、「グレッグは正しい、僕は『帝国の逆襲』のコピーに3年間も費やしたんだから」とリプライ

などなど、ライアン監督は確かなセンスに加えて独特のユーモアや皮肉っぽさも持ち合わせているようですね。

 

プリクエルとオリジナルの交差点

先日の『ローグ・ワン』登場のベイダーの記事でも書きましたが、SWは製作順の都合上、より楽しむためには製作側も観客側もプリクエルの要素をオリジナルに盛り込む・刷り込む努力が必要になります(たとえばコミック『ダース・ベイダー』ではベイダーの回想シーンでパドメが登場する・エピソード6の数か月後を描く小説『アフター・マス』にB-1バトルドロイドが登場する等)。例外的に、Ep.6ラストのアナキンのシーンが存在しますが、あれはSWの創造主たるルーカスのみが許される特権かつ例外ですよね。

実は『フォースの覚醒』には「もしもアナキンが登場していたら」というコンセプトアートが存在しています。それがコチラ

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一見よくわかり辛いですが、共通しているのはどれも顔の半分以上が機械化しているということです。機械→ベイダー→ダークサイド、つまりライトサイドとダークサイドの両方にどっぷりつかった彼は、霊体化した後にそれが体に表れたということです。

また、レイがアナキンのセーバーに触れた時に見た意味深なヴィジョン(何気にSWサーガ史上初の過去シーンがです)では、観たことのある景色と共に「そのエネルギーがわしらを包み、結び付けている」「レイ?これが君の最初の一歩だ」とそれぞれヨーダとオビ=ワンの声が聞こえてきました。これは、ヨーダ・オビ=ワンそしてもしかするとアナキンが『最後のジェダイ』で戻ってくる暗示なのではないでしょうか?それもフォースの霊体として。

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ダークサイドから新たな勢力が誕生し、銀河が危機に陥ったその時、フォースと一体化した最強のジェダイ・マスターたちが戻ってくるのです。この3人のジェダイで特にアナキンは「フォースにバランスをもたらす者」「選ばれし者」として役割が大きいので、カムバックを期待したいところ。

また、本当に登場するのであれば、オビ=ワンはプリクエルで演じたユアン・マクレガーのハズ。レイのヴィジョンで語り掛けてくる際、一部オリジナルでオビ=ワンを演じたアレック・ギネスの声が使用されているのは、オビ=ワンの役者の「受け継ぎ」「統合」の意味が含まれていると思います。

そして、この3人がどこで登場するのかといえば、やはりルークがいる惑星アク=トゥーのジェダイ寺院と思われます。それもレイを交えた修行中に。

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ヨーダとオビ=ワンは旧共和国時代にジェダイのいわゆる「傲慢さ」により、シスの陰謀に気付けずに帝国の勃興を許してしまったので、ジェダイの欠点を反省している可能性が考えられます。そしてその真っただ中にいたのが、アナキンなのです。この3人はとても心強い味方となります。カイロ=レンが他のダークサイドの信望者と共に新ジェダイ・オーダーを壊滅させてから、アク=トゥーにこもっていたルークはフォースを通じてジェダイ・マスターたちと交信していたと考えられます。

更に立派なジェダイ・マスターに成長したルークがこの3人と並ぶところを考えてみれば……オリジナルの主人公とプリクエルの主人公がスクリーンで肩を並べて立っているのです。それもルークがアナキンと「父さん」「息子よ」と会話をして。

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これがスクリーンで実現された瞬間、時代の壁に隔てられていたプリクエルとオリジナルが溶け合い、融合して『最後のジェダイ』が創り出すSWサーガの流れに合流するのです。そう考えると、エピソード8は初めてプリクエルとオリジナルが本格的に融合する革命的かつ重要な位置にいることになります。

 

SWユニバース根幹の真実

最近、SWユニバースで強調されていると感じる点があります。

実例を挙げていきますと、

アニメ『クローン・ウォーズ』で説明されたアナキンの「選ばれし者」としての能力

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アニメ『反乱者たち』でのジェダイとシスのホロクロンの融合

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ベンドゥの能力

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アソーカのフォース的な立ち位置

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……これらの要素に共通するのは「ライトサイドとダークサイドの中間」ということです。

 

また、『フォースの覚醒』の「最初のジェダイ寺院」

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『反乱者たち』の惑星マラコアで語られた古代のジェダイとシスの戦争

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ローグ・ワン』で登場した惑星ジェダ(パンフレットによればジェダイの名前の由来にかかわるほどの歴史がある)

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「ウィルズの守護者」

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そして、『最後のジェダイ』に登場する古めかしい数冊の本

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ウィルズに関しては、今度また別途記事を書くことにしますが、これらは全てSWユニバースの古代を物語っています。特に『フォースの覚醒』の惑星アク=トゥーの最初のジェダイ寺院と、『ローグ・ワン』のジェダは、ジェダイの起源にかかわるレベルで重要な設定が潜んでいそうです。

 

したがって『最後のジェダイ』では、ジェダイの起源にまつわる古代のエピソードフォースの中間=ニュートラル・フォースが重要になると思われます。これらは確かにSWユニバースの根幹にかかわる設定となり、ライアン監督がほのめかす『帝国の逆襲』以上の要素となりそうです。ここにフォースと一体化した3人のジェダイ・マスターが関わってくるのが必然ではないでしょうか?

『最後のジェダイ』ティーザー最後で、ルークは「僕が知る真実はただ一つ、ジェダイの終焉の時だ」と意味深に言っています。

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ここからはほぼ推測になりますが……

ここで言う「ジェダイ」とは、「フォースを光と闇に分ける考え」のメタファーと僕は思っています。実際、フォース感応者たちがジェダイとシスに分かれた結果、その抗争の中で数え切れないほどの命が失われてきました。一つの宗教が二派にわかれて争う構図は現実の宗教戦争を思わせるモノですね。エピソード3の「ジェダイとシスはほとんど変わらない」というパルパティーンのセリフ、エピソード6の「真実は視点によって変わる」というオビ=ワンのセリフがこの裏付けになりませんか?

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あれだけジェダイになりたがっていたルークがこのような決断を下すのは衝撃ですが、アク=トゥーにこもっていた中で得た悟りであると思われます(ジェダイを終わらせるからと言って、僕はルークが死ぬとは思いません。その実例が、ジェダイ・オーダーを抜けたアソーカですから)。

 

『最後のジェダイ』のストーリー的には、アク=トゥーを訪れたレイに修行を施す中で、ルークはフォースを通じてレイに真実を教えることになると思います。ここで三人のジェダイ・マスターと共に、ジェダイの歴史や真実を伝え、フォースのありのままの姿=ニュートラル・フォースを教えるのです。

個人的に期待しているのは、このニュートラル・フォースの教えとして「人間は生きていくうえで様々な感情を持つことになる。誰の中にも光と闇はある。その感情に対しては正直に、ただし一つの感情に執着せずに生きていくのが良いんだ」といった、実は身近なメッセージが含まれている事です。家族愛や友情といった普遍的なメッセージがこもっているのがSWの特徴でもあるので、ここは是非ともその流れで言ってほしい所です。

追記:エピソード8で明かされる衝撃の真実として、レイア姫のフォースにおける立ち位置についても明かしてほしいところです。「フォースにバランスをもたらす者」の子供はなぜ二人なのか?兄のルークはジェダイとして、父アナキンをライトサイドに呼び戻し、ダークサイドを打ち倒す役割を果たしましたが……レイア姫はフォースというよりは、政治の道に進んで新共和国に尽力してきました。本当にそれだけなのか?ここの説明にも期待したいところです。

 

 

以上、考察をまとめてみました。

この考察が正しいかどうかはまだわかりませんが、考えてみれば考えるほどに奥が深いことに気づかされ、公開が待ちきれなくなってしまいます。

 

SWサーガのエピソード8『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は12月15日、日本公開。