『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』感想 パート1
『スターウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』は1980年公開の、監督:アーヴィン・カーシュナー、脚本:ローレンス・カスダン、製作総指揮:ゲイリー・カーツによるオリジナル・トリロジー第二作。僕の主観的な話なのですが、「一番面白いスターウォーズはどれ?」という質問に、多くのファンは「帝国の逆襲」と答えていたと思います。また、「シリーズで一番好き」という声も多かったです。
僕はスターウォーズで一番楽しいのは『エピソード4/新たなる希望』と思っているんですね。
なぜなら『インディ・ジョーンズ』さながらの爽快な冒険活劇であり、それなりに話が完結するので一本の単品映画としても見られるからです。一方で、今まで『帝国の逆襲』と言えば、地味で色味含めて少し暗く、何とも「堅く」、主人公たちの敗走劇という印象がありました。
SWサーガに属する一本なので、もちろん『帝国の逆襲』も好きでしたが、今年の年末にシークエル・トリロジー第二作(←ココ重要)『最後のジェダイ』公開を控えています。元々のファン達による高い評価を理解し、より好きになろうという思いからも、本記事の執筆に至りました。
そこで『帝国の逆襲』の感想は、「映画的視点」の分析(のような何か)と「SW的視点」の解説(のようなry)による、前後編の二部作(のよry)で行こうと思います。僕の感想を交えながら進めていきますね。
〈映画的視点〉編
新しいメカや舞台
前作エピソード4でデススターが盛大に爆破され、まさに絵にかいたようなハッピーエンドを迎えてからどうなったのか?あれから3年、物語の舞台はある惑星に帝国の偵察ドロイドが送り込まれるところから始まります。
エピソード4の湿度と気温が共にすごい不快な熱帯のヤヴィン4から一転、観ているだけで寒々しい一面真っ白の雪の惑星ホスに、反乱同盟軍は秘密基地を新たに設置しました。
また、主人公のルークが訪れることになる、森が鬱蒼と茂る常に薄暗く不気味な惑星ダゴバ。一方で帝国から逃げるハン達が訪れる空中都市が浮かぶ惑星べスピン。特に空中都市はSWならではの独創的なフォルムです。
エピソード4に登場した惑星はタトゥイーン、オルデラーン、ヤヴィン4(厳密には衛星ですね)くらいでしたが、それらとはまた別に様々な特徴を持つ惑星が登場し、スター・ウォーズには多種多様な惑星が存在する、という事を知らしめてくれます。
メカに関しては、おなじみのミレニアム・ファルコンやX-Wingに加えて、寒冷対策を施したより身軽な戦闘機スノー・スピーダーや、コッペパンのような形の輸送船がお披露目です。一方の帝国は、スター・デストロイヤーに加えて超巨大な旗艦スーパー・スター・デストロイヤーや、地上戦専用のAT-ATも登場。AT-ATは、SWを代表するくらいに有名で特徴的なシルエットですね。
移動速度はそこまで早くないもの、放たれる一発一発の威力が高く、反乱軍を叩き潰そうと着実に迫ってくる帝国の脅威として、うまく役割を果たしていたと思います。実はスター・デストロイヤー艦内の様子や帝国のマーチなどが登場するのも今作が初だったり。
魅力的な新キャラ達
帝国の追手を振り切ろうと新たな道を進んでいくルークとハン&レイアの前に、それぞれ新キャラクターが登場します。
偉大な戦士であり、オビ=ワンを指導したという緑色の小柄なジェダイのヨーダ。その一方でベイダーの師であり、前作でも存在が言及された銀河帝国の皇帝。ルークのジェダイとしての修行を指導するのは、ジェダイで恐らく最強クラスのマスター・ヨーダ。ホログラムで姿を現したのは、ベイダーが膝をつく相手であることから暗黒面最強クラスの皇帝。ルークが足を踏み入れたフォースの世界で、それぞれの大御所が登場したのです。
帝国から逃亡するハンをかくまったのは、空中都市の執行官であり、ギャンブラーでハンとは旧知の友というランド。帝国は銀河全域を支配しており、いつどこにいても何となく落ち着かない不安と焦燥感にかられるような情勢です。ようやく足を落ち着けた場所はハンの旧友とはいえ、ギャンブラーであり、どことなく胡散臭いといいますか、信用が置けない感じです。
また、後に大人気となるT字型のバイザーを持つヘルメットをかぶった賞金稼ぎのボバ・フェット。作中で描かれるボバ=フェットの功績は、ミレニアム・ファルコンをベスピンまで追跡するということくらいではありますが。
これらの登場人物は、よりストーリーを予想外の方向に向け、深みを与えてくれます。
新キャラだけでなく、2作目ともなると1作目から続投するキャラクターたちは成長を遂げ、互いの間にも関係が確立され、変化していく様も描かれます。それらに集中するためか、ストーリーはジェダイの修行を積むルークと、帝国軍から逃げるハンとレイアの二手に分かれますね。
エピソード4ではフォースをまともに使えたのはヤヴィンの戦いでもはやまぐれのような感じだったものの、今回はその能力をある程度は発現させ、ライトセーバーを引き寄せたり、石ころや自分の体を支えることに成功しています。また、出会った仲間や友達を大切にしており、彼らを思う心が強いという一面も描かれたり、タトゥイーン出身の若者の内面が掘り下げられていました。
ハンとレイアは、一見正反対の二人ですが惹きあい、恋人同士になる展開です。前作では未だ出会ったばかりということもあり、多少の壁がありましたが、それから3年が経ち、お互いのことをよくわかり、慣れてきた感じがします。お互いに対してツンツンしていて口ではひどいことも言いますけど、なんだかんだで愛し合う二人はどこか応援したくなったり。
そしてベイダー。
極限まで低い声と呼吸音の不気味な喋り方で観るものを震えさせます。大柄な体でマントをはためかせ、失敗した部下を容赦なく処刑する姿は、まさに「悪役」そのもの。前作エピソード4からその恐ろしさが進化し、よく引き立っています。彼のマスクの下には過去をほのめかす凄まじい様の頭がチラッと見え、後に彼の衝撃の事実も明らかになりますが……
下降気味のストーリー
本文で何回も繰り返している表現ではありますが、本作『帝国の逆襲』は主人公たちの敵からの敗走劇です。よって雰囲気もどことなく暗めではあります。ルーク、ハン、レイアは敵に殺されることはないものの、結局何らかの形で敵につかまり、傷つけられます。物語終盤、まさかのハンが炭素冷凍という、初見ではショッキングな仕打ちを受けた上に敵に連れ去られますよね。
中でも特筆すべきは、ジェダイの修行半ばで仲間たちを助けるために駆け付けたルークがベイダーと対決し、そのまま敗北してしまうことではないでしょうか。映画だから、ファンタジーだからといって、修行半ばの力で強敵に勝てるわけでなく、負けてしまうというのが一種のリアルさを感じさせます。
この主人公が敵に敗北するという展開。本作はある意味「挫折・敗北の物語」ともいえるでしょう。これはのちに作られる様々な映画の続編に、ちょうど黒澤明監督の映画のように大きな影響を与えたのではないでしょうか。2作目は、1作目から発展して新しいキャラクターや設定で世界観を広げつつも、暗く、よりハードな展開になる、というものです。今やメディア・サイトが「2作目」を撮る監督などにインタビューをすると、「『帝国の逆襲』調になる」というセリフが多々聞かれます。そして、DVDなどの音声解説に収録されていますが、「『帝国の逆襲』は特殊で、途中から始まり、途中で終わる物語だ」と語られています。
確かにそうなのですが、主人公たちを二手に分けたことによって展開される二つの冒険、より現実的でしっかりとした展開、さりげなく次回作に向けて張られる伏線など、単品映画としての完成度がまたしても高いのです。
多くのファンたちの心を惹きつけるのは、SWに持ち込まれたより現実的でハードなストーリー、なお希望も残すエンディング、拡大された世界、堅実な演出の数々など、脚本などをはじめとする製作陣の様々な努力によるものでしょう。
最後に、コチラの記事↓
製作の舞台裏の話に興味がある方は是非!とてもわかりやすく、興味深いので次から『帝国の逆襲』を見る際には製作陣の血のにじむような努力に思いをはせずにはいられませんよ。
以上、僕なりの『帝国の逆襲』の映画的視点による分析でした。
監督、脚本などにジョージ・ルーカス以外の外部の優秀な人間が加わったことにより、『帝国の逆襲』は『新たなる希望』の続編、スターウォーズ オリジナル・トリロジーの次章というだけでなく、映画としても優れた一本に仕上がったのだと思います。
次に〈スターウォーズ的視点〉編がございますので、興味がある方はお読みくださいませ~(2017/6/10公開予定)
追記:〈スターウォーズ的視点〉が書けました、コチラ↓になります~