日曜洋画劇場が似合いすぎる一本!『エイリアン2』感想

 

まだ現在ほどCG技術が発展していなかった時代、周りのセットはほとんど実際に組み立てられたものであり、音楽と相まって観る人には一種の懐かしさを感じさせる……『エイリアン2』はそれにまさに該当するような作品です。芸術性も併せ持ち、静かな恐怖を描いた『エイリアン』でしたが、その続編を今や『アバター』や『ターミネーター』などで有名なジェームズ・キャメロンが手掛けた結果、ただの焼き直しではない傑作が誕生したのです。今回は、僕がそんな『エイリアン2』に対して思う事をつらつらとまとめてみました。

 

あれから57年、リプリー

前作『エイリアン』(以降『1』と呼びます)にて、主人公リプリーは、ウェイランド・ユタニ社の陰謀により、ノストロモ号という巨大かつ密閉された空間で「絶望」と隣り合わせの決死の24時間を強いられることになりました。命からがら乗り込んだ脱出戦は予定通りならば6週間で地球に回収されるはずでしたが……f:id:the-Writer:20170630062528j:plainなんと57年間も宇宙を漂流したのちに回収されるという大きな番狂わせ。

また、『1』では前半は特にフォーカスされず、もはや「このヒゲモジャのダラス船長が主人公でしょ?え、違うの?」という目立たなさでした(あくまで個人の見解です)。

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そこから一転、待望の続編である今作ではリプリーは最初からバッチリ主人公しています。彼女が抱えたトラウマ、エイリアンや会社に対する憎しみ、娘を亡くした悲しみや後悔といった感情がよく掘り下げられているのです。とにかく生存のために「逃げる」がメインだったノストロモ号内から打って変わって、「ぶっ殺す」という攻めの姿勢に転じているのも見どころの一つですね。

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個性的なキャラクター達

「今度は戦争だ!!」というキャッチコピー(パワーワードともいう)に現れている通り、今回は辛うじてエイリアンを追い払う程度の道具に頼るしかない、という先が不安過ぎる状況とは違います。重火器をフル装備した屈強な海兵隊が挑む戦争アクションなのです。その海兵隊のメンバーはそれぞれキャラクターがしっかり設定されており、海兵隊の会話シーンはグダグダなどではなく、むしろ愉快なもので、彼らの日常やこれまでの信頼関係を感じさせてくれる不可欠なシーンです。

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クラスの先生アポーン軍曹、頼りがいがあり優しい一面もあるヒックス、「屈強」の名がふさわしいバスクェスと相棒のドレイク、お調子者のやかましいハドソン などなど……

個人的に好きなのはハドソンで、やはり軽口たたきまくるやつはムードを盛り上げてくれて笑わせてくれますよね。アポーン軍曹にいちいち呼び出し食らって怒られているあたり、完全にクラスの悪ガキと先生の関係です。

しかし、ハドソンの魅力はそこだけにとどまらず、本番はこれから始まるのです……エイリアン軍団との初交戦。

「アポーンはどこだぁ?!」「アアアアァァァァッッッ!!!(完全に巻き添えでエイリアンの返り血を浴びる)」「最高だよ、いうことねぇや、ゲームオーバーだメーン、ゲームオーバーなんだよぉ!!」

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そう、前半のお調子者はあくまで表面的に装っていたものであり、後半からハドソンのキャラクターも盛大に方向転換してヘタレと化すのです……

今作きっての愛されキャラ。
今作の弱音は大半がこいつの発言。
字幕版では「メーン」の発言数で観客の腹筋を攻撃し、吹き替え版では原作を超えるヘタレ発言で完膚なきまでに腹筋を破壊する。

エイリアン2 - アニヲタWiki(仮) - アットウィキ

兎にも角にも同作品内におけるヘタレの代名詞として認知されている。
態度が変わってからはメーンの連呼に、各吹き替え声優たちによる名演により、
シリアスなSFモンスターパニックアクションの筈が腹筋崩壊を起こそうとするコメディアンと化している。

ハドソン(エイリアン2) - アニヲタWiki(仮) - アットウィキ

 そう、このヘタレっぷりに僕がハドソンが好きなキャラの1人に入っている理由があるのです。本当はビビリ気味なところを軽口でごまかしていたのを、いざ本当の危機に直面して本当の性格が表れる……

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(↑調子に乗っていた態度から一転、この泣きそうな顔である)

自分の恐怖や焦りを素直に口にしているあたり、今作のキャラクターたちの中で一番人間らしいのではないでしょうか?だからこそ、どうしてもハドソンに共感・応援をしたくなってしまいます。赤い非常灯で照らされた指令室での決戦では、なんだかんだでパルスガンをぶっ放して検討する彼の姿は印象的でした。

海兵隊のほかにも直接の会社からの使者バーク、敵か味方かアンドロイドのビショップの2人が「今は味方のようだけど本当に信用できるのか?」という疑念が、ストーリーを一本調子でなくしていますね。

そして、植民地Lv.426唯一の生存者であるニュートことレベッカf:id:the-Writer:20170701095756j:plain(↑作中、数少ない癒し)

まだ幼いにも関わらずエイリアンによって家族や知り合い全員を奪われた彼女は、似たような経緯で同じく家族や仲間を失ったリプリーと惹きあいます。やがて2人は血縁はないものの、強い「絆」で結ばれることになるのです。

 

 

リプリーが失ったもの、得たもの

前述のとおり、リプリーは家族や仲間、挙句の果てに職業まで失い、自分が経験した恐怖やその経緯をすべて戯言の一部として片づけられてしまいます。海兵隊と共に向かった先で出会ったのは同じく孤独な少女のニュート。

このニュートの存在が、リプリーに前作になかった強みを与えることになったのです。f:id:the-Writer:20170701100040j:plain

それは「母性」です。

一度失った「娘」との生活を取り戻すチャンス、もう絶対に娘は奪わせない、守り抜いて見せる……それが単身エイリアンの巣窟に殴り込みをかけ、ニュートを奪還する(ついでにエイリアンを全滅に追い込む)程の強さを与えたのではないでしょうか?まさしく「母は強し」なのです。クイーンとの最終決戦は、見方を変えれば母と母の対決でもありますね。パワーローダーを着用してバックライトともに登場するリプリーの姿にはしびれました、屈指の名シーンです。

 

 オマケ: ハドソンを演じていたビル・パクストンは、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』でファレル軍曹という鬼軍曹を演じました。

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(↑「ハドソン、こっちに来い!」)

エイリアン2』ではアポーン軍曹によく怒られていた彼がついに軍曹になって新兵をしごいているとは、感慨深いものがありました。

 

 

 

 

 

以上、『エイリアン2』の感想でした。前回のサバイバルホラーから一転、SFホラー兼戦争アクションという大胆な方向転換は見事に大成功をおさめ、エイリアンシリーズに新しい一面や魅力を加えてくれました。1作目とは異なる照明や舞台デザインが醸し出す雰囲気がまた良いです。『エイリアン2』はストーリー、キャラクター、美術、その他もろもろを総合して好きな作品の一つです。

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