本当に面白い映画が、また一本増えました

 僕が映画館に行くのは面白い映画が観たいからです。

「面白い映画が観たい」、その思いには新しい映画を開拓するという面があります。自分が初めて目にする映画が楽しめるかどうか、以後「面白かった」として心に残るかどうかは観終わるまでわからないので映画館に行くのは僕にとって一種の賭けでもあります。最近はかなり「面白かった」と言える映画に恵まれてますが、やはり「うーん…」といったものや「お金払った意味、無かったな」と思ってしまうようなものにも逢ってきました。それでもDVDが出るまで待たずに映画館にちょくちょく行くのは、やはりあの環境が味わいたいのが大きいですね。ポップコーンなど映画館の心地よい香り、ゆったりとした座席、一たび上映が始まれば視界に映画しか入らない劇場、映画に極限まで没入できる音響……この環境の中で観た面白い映画は思い出として自分の中に残ります。劇場公開が終わると、DVDをレンタルして家で観るという流れは同じでも、この映画館で観たという思いでがあるとないでは、いつもの家のテレビなどで再生する時の感触が圧倒的に違うんですね。

そんな思い出の映画に今名を連ねるのがバーフバリです。元々名前はTwitterなどの口コミで知っていたのですが、そのあまりの熱狂ぶりと具体性のなさにわざわざ劇場に行くのは敬遠していたというのが正直なところです。いや、だって、観た人全員が「バーフバリ!バーフバリ!」しか言わなくなるんですもん……(´・ω・`)

それとインド映画という勝手な偏見も邪魔をしていました。それでも一応Youtubeで「『伝説誕生』ダイジェスト映像」や「バーフバリ万歳」などはチェックはしていました。最近の気になる映画も一通り観ましたし、今年は12月にSWがありません。『アベンジャーズ4(仮)』はタイトルすらわかりませんし、その中で公開されたのが『バーフバリ 王の凱旋<完全版>』でした。敬遠しつつも好奇心は少しずつ積み重なっていた映画なので、よしいっちょ観に行くかと割と平静な気持ちで行きました。折角だしノッてみようと。IMAX、料金は高いですがその体験はそこでしか味わえず、映画によっては非常に高い満足度を得ることができます。『ブラックパンサー』の時は、本当にワカンダに入国したと錯覚するほどの没入感でした。経過を端折ると、観に行った一週間後には手元に『バーフバリ 伝説誕生』と『バーフバリ 王の凱旋』のBlu-rayがありました(`・ω・´)f:id:the-Writer:20181113204415p:plain観た方が何度も口にする「バーフバリ」とは人名でした。古代インドに存在した都市国家、マヒシュマティ王国の王家の血筋たる名字。バーフバリという名を冠する映画は2部作であり、いわゆる前編と後編にあたります。描かれるのは父と息子がそれぞれ送った、仲間と共に数々の戦いを駆け抜けた壮絶な人生の軌跡でした。

2作まとめて感想を書くと、「すごい面白かった」これに尽きます。「インド」「ボリウッド」「長い」といった偏見は開始3分で吹き飛ばされ、ハリウッドに全く引けをとらないこの世界にすぐさま夢中になってしまいました。壮麗で美しい風景・個性と背景を持つ登場人物たち・盛り上がる音楽・小気味のいい軽口の会話・テンポの良い編集・アツいバトル・感情をあらゆる方向に揺さぶる展開・豊かな物語。f:id:the-Writer:20181113213552j:plain面白い映画の全てが詰まっている。その全てが圧倒的な熱量で描かれ、最初から最後まで統一されている。これは純粋な娯楽大作だと思いました。この事前に自分の中で作り上げていた壁が、その映画のすさまじい面白さに圧倒される感覚、『七人の侍』と全く同じ現象です。

民の圧倒的な支持を受ける父アマレンドラと、民と共に生きる息子マヘンドラ。この二代の物語が映画二本分にわたって描かれるのですが、その順番は一般的な時系列順ではなく多少のシャッフルが入っています。結果として、どちらから観ても構わない作りになっていると感じました。また、元々二部作として構想されているだけあって、『伝説誕生』と『王の凱旋』にはそれぞれ互いにリンクし、補完しあう箇所があらゆるところに配置されています。よってどちらから観ても、一周観るだけでは監督が意図した展望には到底気づけないような周到な作りになっており、一周どころか何度観てもその興奮が薄れることは無いんですね。f:id:the-Writer:20181113203200p:plainf:id:the-Writer:20181113203204p:plainリアルタイムでこの映画に出会えて本当によかったなと思います。やはり観てやっとわかったのですが、この映画をレビューしようとすると、その圧倒的な熱量のせいで「主人公が槍を振り回したら敵が5人くらい吹っ飛んだ」という面白い感じの文章になってしまいますし、カリスマ性溢れる主人公がカッコよ過ぎて、観た後は「バーフバリ!バーフバリ!」と称えたくなるんですね。『王の凱旋』予告編での「空前絶後のアクション」「豪華絢爛な歌と踊り」「常識破壊のインパクト」「映画の神様は本当にいた。」という宣伝文句、正直大げさすぎてむしろ安っぽく感じていました。しかしそれは煽りではなく、逆に本編が宣伝を超えてきました。宣伝だけでなく、ファンの熱狂的な要望に応えて『伝説誕生』と『王の凱旋』を完全版を上映し下さった配給会社のtwinさんには本当に感謝です……。

f:id:the-Writer:20181113213619j:plainSWやアメコミ映画、筋肉映画が好きな方はまず間違いなくハマるのではないでしょうか。それにバーフバリはアクション超大作というだけでなく、その物語の流れそのものが哲学的・神話的な側面もあり、更に幅広いジャンルの観客が楽しめるようになっています。ここ数年、『シン・ゴジラ』『新感染 ファイナル・エクスプレス』『ブラックパンサー』など、それぞれ登場する国を前面に出した映画がヒットしています。これは素晴らしい流れであると思いますし、バーフバリも見事にこの流れにのりました。いや、それどころか新たに加わった一本として流れを形作ったと言えるでしょう。やはり、製作側が本気で作り、本当に面白いものは国を超えて観客の心に響くのだと思いました。面白い映画が観たいな、と思ったらバーフバリを観ましょう。最高ですよ。