「希望」のDCフィルムズ・ユニバース、その軌跡

※本記事では『マン・オブ・スティール』,『バットマンvsスーパーマン』,『ジャスティス・リーグ』,『スーサイド・スクワッド』,『ワンダーウーマン』の作品名に対してMoS,BvS,JL,SS,WWという略称を使っていきます

「希望」___それは2013年から始まったDC映画の主要なテーマの一つである、と思っています。2013年にはウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ配給の元、マーベル・スタジオが自社の保有するコミックのキャラクター達が同じ世界観で活躍する数々の映画群(MCU)を成功させてきたので、その企画の成り立ちは配給を行うワーナー・ブラザースによる後追いという印象があります。2019年5月現在、『マン・オブ・スティール』,『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』,『スーサイド・スクワッド』,『ワンダーウーマン』,『ジャスティス・リーグ』そして『アクアマン』,『シャザム!』が公開されてきました。今や立派な映画群ともいうべき数です。緻密な計画に基づいて着実に成功を収めてきたMCUに比べると、DCはかなり前衛的な試みがみられる計画でした。配給に当たっていたワーナー・ブラザースによって複数にわたる方針転換などの政策の結果、映画の製作過程などはかなり揺れていたと言えるでしょう。f:id:the-Writer:20190327170308j:plainこのDC映画群の正式名称、実は未だに正式決定されていません。人によってDC Extended Universe, DC Films Universe, Worlds of DC……などなど、呼ぶところは様々です。また映画に対する評価の変動が顕著であります。このDC映画の世界を築くうえで、ザック・スナイダー監督の功績の大きさは誰もが認めるところでしょう。過去の記事に書いた通り、僕はザック・スナイダー監督の描いてきた物語が好きです。DC映画の、世に公開されるまでの波乱万丈さが最も現れたのが大作『ジャスティス・リーグ』でした。その結果がワーナーの思うようにいかなかったことで、DC映画の制作にあたる部門の人員が変わった結果、『アクアマン』や『シャザム!』が公開され、上々な評価を受けています。見方によれば、ワーナー・ブラザーズのDC映画部門はようやく安定したレールが見えてきた、と言えるでしょう。
今回の記事では、DC映画のこれまでの体系の分析、これからの辿る道筋について書いていこうと思っております。

ザック・スナイダーワーナー・ブラザースの天秤

f:id:the-Writer:20190325213744j:plain先に書いた通り、ザック・スナイダー監督のDC映画群での功績は大きいです。それはこの世界観の基盤を築き上げた、と言っても過言ではないでしょう。振り返ってみるとワーナー・ブラザースは2006年に往年のクリストファー・リーヴ主演の『スーパーマンⅡ』の続編として『スーパーマン リターンズ』を公開した後、その興行収入を判断した結果スーパーマンのリブートを決定しました。その一方で2005年に『バットマンビギンズ』、2008年には続編の『ダークナイト』がヒットしたことで、「バットマンが現代にいたらどうなるのか、それを徹底的に描く」という構想を熱心に売り込み、監督を務めたクリストファー・ノーランがこの新しいスーパーマンの企画に雇われました。プロデューサーとして就任したクリストファー・ノーランエマ・トーマスによる選考の結果、2010年に新たなるスーパーマンの映画の監督にザック・スナイダー選ばれましたf:id:the-Writer:20190325213615j:plainそれに伴って映画の中核を担う脚本にデヴィッド・S・ゴイヤー、音楽にハンス・ジマーダークナイト3部作でノーランと働いたメンバーが配置されることとなります。ゴイヤーは『マン・オブ・スティール』が公開される2013年6月、「『マン・オブ・スティール』,『バットマンvsスーパーマン』,『ジャスティス・リーグ』の3作に脚本として続投する」という契約を結んでいます。ただ同年12月、BvSの脚本を書き上げたゴイヤーは他のプロジェクトを抱えていたことからBvSから離脱。ここに『アルゴ』の脚本を書き、アカデミー賞を受賞したクリス・テリオが雇われ、脚本のリライトを行います。この後、クリス・テリオはザック・スナイダーと共同でスナイダーの構想を脚本にしていくライターという重要な位置に就きます。f:id:the-Writer:20190326164950j:plain2014年7月、BvSの主要撮影も始まっていた中クリス・テリオはJLへの続投が決定。同年10月にはワーナー・ブラザースが発表したDC映画の今後のラインナップには、JLの二部作構想が明記されていました。2016年3月、完成したBvSの公開を迎えましたがこの時点で、次作のJLの脚本はザック・スナイダーとクリス・テリオによって完成されていました。その内容は以下の記事の通りです。しかしBvSに対する批判からワーナー・ブラザースはそのリライトを指示し、JLは一話完結となる内容に変更されました。主要撮影は翌月の4月から開始され、6月にはJLは二部作ではなくなったと公式に報じられています。以降の製作経緯は過去の記事に書きましたが……主要撮影がいつどこで終わったのかは不明瞭ながら、2017年2月には主要撮影された映像は全て脚本に沿って編集が終わっていました。内部の人間によればワーナー・ブラザースの幹部たちはザック・スナイダーの方針を快く思っていませんでした。3月、不幸なことにスナイダー監督の娘であるオータム・スナイダーが自殺。5月にはスナイダー監督は降板し、ジョス・ウェドンがその任を引き継ぎました。予定通りの日付に公開したJLはワーナー・ブラザースが期待した通りの評価を得られず、ワーナー・ブラザースのDC映画部門の製作陣の人事が変わりました。

2019年5月現在、JL以降にリリースされる予定だった6作品中予定通りリリースされたのは『アクアマン』と『シャザム!』の2作品です。最も具体的に制作の進捗が聞こえてくる『フラッシュ(仮)』は、2バージョン存在する脚本のどちらを採用するか、主演とされていたエズラ・ミラーの契約期限が今月中と迫っています。一方で、当初の予定になかった『ワンダーウーマン』続編の『ワンダーウーマン1984(現題)』にザック・スナイダーがプロデューサーとして参加しています。

……上記のところまではザック・スナイダーのDC映画における関わりを可能な限り客観的に書きました。ここからはザック・スナイダーと雇用主であるワーナー・ブラザース、それぞれの思惑について流れに着目する事で書き出してみようと思います。

先ほど2013年12月、MoS公開から6か月後にデヴィッド・S・ゴイヤーが続くBvS,JLの脚本に続投するという報道がありました。つまり、この時点でスーパーマン・トリロジーという構想は存在していました。2012年、マーベル・スタジオはそれまでの4年間で積み重ねた集大成である映画『アベンジャーズ』は世界歴代興行収入第3位を記録しました。ワーナー・ブラザースMoSの製作時からJLへの発展を考えていたのは間違いないのですが、これにはただのマーベル・スタジオの後追い以上の意図があります。f:id:the-Writer:20190330094237j:plainワーナーブラザーズは2007年時点で『スーパーマン リターンズ』,『ダークナイト』,『Justice League: Mortal』というDCコミックスを原作としながらそれぞれ別々の映画を製作していました。この時点ではマーベル・スタジオは翌年公開に向けて『アイアンマン』を製作中であり、「シェアード・ユニバース」という概念はまるで一般的ではなかったためです。ジョージ・ミラー監督指揮下の『Justice League: Mortal』は諸所の事情があって2008年に製作中止となり、結果的にザック・スナイダーが手掛ける一連の流れに形を変えて取り込まれました。

2010年、新しいスーパーマンの映画の監督にザック・スナイダーが選ばれ、クリストファー・ノーランとの共同作業でMoSという映画は形作られていきます。後の2017年、ザック・スナイダー本人はインタビューで以下のように答えました。

驚くべきことに「ワーナーブラザースバットマンとスーパーマンを会社としてやらなければならないという企業命令があるわけではない」という。「自然とそうなったんだ。クリスと僕がそういうアイデアを持っていて、たまたまそうやってジャスティス・リーグに展開していったというだけのことだ。委員会によって多くが決まるということはない。

出典:ザック・スナイダー監督が語る『ジャスティス・リーグ』完成までの道のり

その一方で、以下のような話もあります。ある業界関係者によれば、スナイダー監督は「JLでヒーローを集める前にそれぞれ映画を作った方が良い」と思っていたそうです。つまりBvSの直後にJLをやろうと発案したのは配給のワーナー・ブラザースであり、スナイダー監督ではなかったと。

そしていつ頃からかは不明ながら、スナイダー監督の脳内にはある壮大な計画が存在したことが確定します。上記の業界関係者であるニール・ダリー、DC映画ユニバースを通してストーリーボード・アーティストとして参加しているジェイ・オリヴァ、コミックブック専門家のケヴィン・スミスからの証言を総合してみると以下のように確定します。

『マン・オブ・スティール』→『バットマンvsスーパーマン』→『ジャスティス・リーグ』→『ジャスティス・リーグ2(仮)』→『ジャスティス・リーグ3(仮)』f:id:the-Writer:20190327170656j:plainSNSのVeroでスナイダー監督は積極的に自身の作品に込めていた意図などの設定を少しずつながら、ファンの声にも反応しながら積極的に発信しています。それとケヴィン・スミスの証言を合わせると、JL以降の更なる展開はこうなるはずでした。

ジャスティス・リーグ2(仮)』は三部作の中間作にあたって、リーグの敗北と言う結末で終わる。BvSで印象的なバットマンのみた悪夢「ナイトメア」"Knightmare"はまさにこの展開を見据えたものでした。ロイスが死亡することで、スーパーマンはダークサイドの反生命方程式に操られ、ダークサイドの側につきます。夢の中でスーパーマンに殺されたブルースが目を覚ますと、未来のフラッシュが警告を叫んでいました。

このフラッシュは現実であり、夢の通り荒廃した未来からフラッシュがいずれ訪れる脅威について警告に来たのですが、過去に戻り過ぎたようです。また、これによりブルースは将来奇襲される可能性を考えて基地をバットケイヴから旧ウェイン邸に移すことにしました。スナイダー監督の構想通りに製作されたJL「スナイダーカット」では、メインヴィランのステッペンウルフの背後にいる黒幕・ダークサイドの出番がもっとあるはずでした。それも劇中で一瞬姿を見せることで、JL2のメインヴィランとなることが示唆されるものです。そして最終的にバットマンを含むリーグの3名のメンバーが亡くなるはずでした。そしてそれがBvSの時点で示唆されていた、と。

ジャスティス・リーグ3(仮)』についてはジェイ・オリヴァも知っており、Asteroid Cowboyさんの訳を引用させていただくならば、「具体的には説明できないが、エピックで、壮大であり、エモーショナルで、喜ばしく、忘れられない」と説明しています。依然JL3が詳細不明ですが、BvSの時点でJL2の重要展開が示唆されていたのならば、2016年3月時点でJL1,2の展開が決まっていたことになりますね。

先に2016年3月、BvS公開前の時点でJLの脚本は完成していたもののワーナー・ブラザースによってリライトが決定された、と書きました。今年3月下旬の三日間開催された通称:スナイダーコンにて、ザック・スナイダーが登壇した際に思い描いていた構想について沢山語ってくれました。この初期の(言い様によっては真のオリジナルの)脚本では、JLという作品にしては衝撃的な展開です。

その内容はリンク先にて読んでいただきたいのですが、この展開。今まで少しずつ明かされてきた情報が一挙に集約されたかのような印象を受けます。そしてどうも今で言うJL1,2の二つを合わせたような内容に思えないでしょうか?2014年時点でJLは二部作になるはずでした。その「パート1」がダークサイドとの闘いでリーグが何人も死亡する熾烈な展開であったならば、「パート2」はそれこそ一握りの人物以外は知らない完全未知数の内容です。「パート1」の脚本は2016年3月末より、今の『ジャスティス・リーグ』と製作が延期されている『ジャスティス・リーグ2(仮)』に分割されたと考えられます。こう考えると、以前ヴィクター・ストーン/サイボーグ役のレイ・フィッシャーがこう述べていたのもつじつまが合うんです。

「ザックは、サイボーグの今後に関する具体的な計画を抱いていました。おそらく、最初の時点(=『ジャスティス・リーグ』撮影時のこと)で、もう2本分くらいの量は撮影していたと思います。『ジャスティス・リーグ』については、絶対に三部作で考えていたんだと思いますね。彼のヴィジョンが結実したら、きっとサイボーグは、映画ユニバースの全カノンにおけるメタヒューマンの1人、あるいは最強のメタヒューマンになったかもしれない。」

出典:『ジャスティス・リーグ』三部作構想あった ─ 「ザック監督には計画があった」サイボーグ役レイ・フィッシャー語る

ワーナー・ブラザースによるDCEUが成り立つ根本的な流れを、僕なりにまとめてみるとこうです。クリストファー・ノーランによるダークナイト三部作がヒットしている事で、リアル路線のアメコミ映画の開発が検討されます。ここに今まで企画は存在していたものの実現に至らなかった「スーパーマンの映画」「ジャスティス・リーグの映画」を取り込もう、という話になったのではないでしょうか。ノーランが「スーパーマンの映画」のプロデューサーになった時には、 既にマーベル・スタジオがシェアード・ユニバースの計画に本格的に取り掛かっています。つまり、宙に浮いていた映画の企画+ノーランのリアル路線+シェアード・ユニバースの計画→DC映画ユニバースの誕生、に至ったのではないでしょうか?f:id:the-Writer:20190327090504j:plainここに呼び込まれたのがザック・スナイダーです。この説が正しければ、MoS公開前からJLの製作は決まっていた……「JLありきの計画」でした。だからMoSが公開された2013年末、当時メインの脚本家であったデヴィッド・S・ゴイヤーMoS,BvS,JLの3作分に続投する契約を結びます。スナイダー監督の「(BvSについては)別に会社から要請があったわけではない」という発言は、一応矛盾はしません。なぜならMoS,JLは最初からやることが決まっているので、その中間作として彼が考え出したのがBvSという構図が考えられるからです。

仮にザック・スナイダーが真に自由を与えられていたのならば、MoS→2作目(BvS?MoS2?)→JLに登場する各ヒーローの映画→JLとなるはずであったのでしょう。そしてここにスーサイド・スクワッドやシャザムといった、リーグに直接関連しない作品が作られることはありません。これはワーナー・ブラザースからの指示によりMoSの3年後にBvSとSS、その翌年にWWとJL、以降はJL2とヒーローの映画を何作も作っていく……というスケジュールになりました。

(↓2016年度サンディエゴ・コミコンより当時の監督たち。左から『バットマン(仮)』のベン・アフレック,『フラッシュ(仮)』のリック・ファムイーワ,SSのデヴィッド・エアー,WWのパティ・ジェンキンス,『アクアマン』のジェームズ・ワン,JLのザックスナイダー)f:id:the-Writer:20190327092122j:plainBvS,SSまでは(一応)ワーナーの計画していた通りに製作は完了しますが、一方でBvSの続編となるJLがワーナー内で懸念されるようになります。ザック・スナイダーが手掛けた二作目のBvSに対する批判の声が激しかったためです。BvSの評価を受けて、ワーナーはJLをリーグが一旦敗北するといったハードな展開を書き直すように指示。スナイダー監督がJLパート1の一作でやろうとしていた事が、パート1,2の二作に分割される・構想よりもストーリーの進行が遅れた、と推測されます。そしてJLパート1はシンプルにJLとして、単作映画らしく次に続かずにそれで結末が存在するように仕上げられていきます。そして現実には一部の映画は予定通り進行しているものの、予定されている映画の製作が思うように進まなかったり、予定外の映画が製作されることとなったりという経過をたどっています。

現在、DC映画部門はトップが変わったことによって「ユニバースの構築よりも、単独作を重視する」姿勢を方針に掲げる一方、ファンがいかにスナイダー監督の遺産を重視しているかそのとてつもないプレッシャーを感じてもいるそうです。ザック・スナイダーは『ワンダーウーマン1984』にプロデューサーとして関わる一方、またDC映画を監督することに意欲的な姿勢を見せています。『フラッシュ(仮)』や『バットマン(仮)』の製作が非常にスローペースながら進む一方で、DC映画部門は『アクアマン』のヒットを受けてスピンオフに当たる作品の製作を決定しています。果たしてザック・スナイダーが今後入り込む余地はあるのか…….。

 

今後のDCフィルムズ・スケジュール

2017年11月公開の『ジャスティス・リーグ』はワーナー・ブラザースのDC映画部門にとって一つの転換点になったと思います。配給会社側からの介入がうまくいかなかったことにより、その担当者たちの人事異動によって製作方針は変わることとなりました。2014年に発表されたスケジュールからかなりの変動がある中、現在製作が進行しているDC映画を以下にまとめます。ソースは米メディアColliderですが、記事が書かれた時よりも一部進捗がある場合、それも書き加えておきますね。

 ・『バーズ・オブ・プレイ(原題)』 f:id:the-Writer:20190327105003p:plain公開日:2020年2月7日

監督:キャシー・ヤン

脚本:クリスティーナ・ホドソン

キャスト:マーゴット・ロビー,エリザベス・ウィンステッド,ジャーニー・スモレット=ベル,ロージー・ペレス,エラ・ジェイ・バスコ,ユアン・マクレガーetc...

進捗:2019年5月現在、主要撮影の真っ最中。マーゴット・ロビー演じるハーレイ含む女性チーム:バーズ・オブ・プレイユアン・マクレガー演じるブラックマスクと戦う。キャスト達演じる役柄のティーザー映像が公開されている。

 

・『ワンダーウーマン1984(原題)』f:id:the-Writer:20190327105632j:plain公開日:2020年8月5日

監督:パティ・ジェンキンス

脚本:パティ・ジェンキンス,デヴィッド・キャラハム,ジェフ・ジョンズ

キャスト:ガル・ガドット,クリス・パイン,クリステン・ウィグ,ペドロ・パスカルetc...

進捗:2018年12月に主要撮影が終了し、現在ポスト・プロダクションの真っ最中。音楽はハンス・ジマーが担当する。『ワンダーウーマン』以降の1984年を描くが、監督曰く「独立した作品」である。例えとして007シリーズが挙げられている。

 

・『フラッシュ(仮)』f:id:the-Writer:20190403171025p:plain公開日:不明

監督:ジョン・フランシス・デイリー,ジョナサン・ゴールドスタイン

脚本:ジョビー・ハロルド,ジョン・フランシス・デイリー,ジョナサン・ゴールドスタインエズラ・ミラー,グラント・モリソン

キャスト:エズラ・ミラー,カーシー・クレモンズ,ビリー・クラダップetc...

進捗:監督は何度も変更になった結果、デイリーとゴールドスタインのコンビに決定。彼らはDCマルチバースやスピードスター・マルチバースを扱う脚本の手直しも担当したが、2019年3月に主演のエズラがそれに加えて「ダークさ」を求めてクリエイティブ面で監督たちと対立していることが判明。コミック・ライターのグラント・モリソンを呼び込んで二人と自分が求めるバージョンの脚本を執筆したが、エズラの出演契約は今月で切れる。

 

・『バットマン(仮)』f:id:the-Writer:20190327112838j:plain公開日:2021年6月25日

監督:マット・リーブス

脚本:マット・リーブス

キャスト:不明

進捗:元々JLよりベン・アフレックが続投する予定だったものの、2019年1月にベン・アフレックが本企画より離脱したことを言及。5月現在リーブス監督が脚本を執筆しており、撮影開始は2019年末を目指している。ストーリーはバットマンの過去を描くものであり、90年代であるという。

 

・『ザ・スーサイド・スクワッド(仮)』

公開日:2021年8月6日

監督:ジェームズ・ガン

脚本:ジェームズ・ガン

キャスト:不明

進捗:ディズニー傘下のマーベル・スタジオでガーディアンズ・オブ・ギャラクシー・トリロジーを手掛けるジェームズ・ガンが、2018年7月ディズニーによって一度解雇された時に、ワーナー・ブラザースに雇われた。当初2016年の『スーサイド・スクワッド』続編として進められていた。……が、プロデューサーのピーター・サフランによれば「完全なリブート」として『The Suicide Squad』と呼ばれ、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズのトビー・エメリック会長は『Suicide Squad 2』と呼んでいる。報道によれば、キャストはハーレイ役のマーゴット・ロビー,アマンダ・ウォーラー役のヴィオラ・デイヴィス,キャプテン・ブーメラン役のジェイ・コートニーが再演し、新しいキャラクター役にイドリス・エルバが呼ばれた。撮影開始は2019年9月を目指している。

 

・『トレンチ(仮)』f:id:the-Writer:20190327114843j:plain公開日:不明

監督:不明

脚本:ノア・ガードナー,エイダン・フィッツジェラル

キャスト:不明

進捗:2019年5月現在、監督やキャストが不明であるが2022年の『アクアマン』続編までに公開とされている。ホラー調の低予算作品であるが、『アクアマン』以後の時間軸でありアトランティスの世界観を掘り下げる目的である。

 

・『アクアマン2(仮)』f:id:the-Writer:20190327115441j:plain公開日:2022年12月16日

監督:不明

脚本:デヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック

キャスト:ジェイソン・モモア,アンバー・ハードetc...

進捗:『アクアマン』の続編という事で急がずに製作するために公開から4年の月日が設けられた。監督は不明だが、プロデューサーのジェームズ・ワンが前作より続投するかは脚本次第である。

 

・その他、存在する企画

バットガール』,『グリーンランタン・コァ』,『ニュー・ゴッズ』,『サイボーグ』,『マン・オブ・スティール2』.『ナイトウィング』,『ゴッサムシティ・サイレンズ』,『スーパーガール』,『ジャスティスリーグ・ダーク』,『ブラックホーク』,『ブルービートル』,『プラスチックマン』,『デスストローク』,『ブラックアダム』,『ロボ』

進捗:作品によって監督や脚本家は決まったりしているが、特に進捗が聞こえてこないために以上にまとめて記した。2018年1月にワーナー・ブラザースのDC映画部門の人員が入れ替えになったため、ここに名前が挙がっている企画のうちどれが製作されるかは今後の続報を待つしかない。

 

・『ジョーカー(原題)』f:id:the-Writer:20190327165613j:plain公開日:2019年10月4日

監督:トッド・フィリップス

脚本:トッド・フィリップス,スコット・シルバー

キャスト:ホアキン・フェニックス,ザジー・ビーツ,ロバート・デ・ニーロ,フランセス・コンロイ,ダンテ・ペレイラ=オルソン,ブレット・カレン,ダグラス・ホッジetc...

進捗:2018年12月に全撮影が終了、2019年5月現在ポスト・プロダクションの真っ最中。『シャザム!』に続く2019年のDC映画第2弾なので、本来ならばこのリストの一番上に書くべきだったが、本作はMoSから始まるDC映画ユニバースとは別の映画なので一番下にした。ジョーカーというキャラクターのオリジンを描く本作は『スーサイド・スクワッド』登場のジャレッド・レトのジョーカーとは別人であり、言うなれば独自のユニバースの映画である。ティーザー予告ワーナー・ブラザーズ公式より公開されている。

 

ジャスティス・リーグ』が問う、映画ビジネスの哲学

どうしてもマーベル・スタジオのMCUと比較されがちなワーナー・ブラザース配給のDC映画ユニバース、このネット社会ではその進捗が一般人に瞬時に伝わるようになりました。それらのニュースから判断すると、DC映画ユニバースはやはり駆け足で突貫工事、あるいは迷走という印象は否めません。既に成功を収めている先例がいる中、その二番煎じでは投資に見合う利益は見込めませんし、観客の心にも残りません。何か別のことを行う必要があります。f:id:the-Writer:20190328110331j:plain僕なりに調査を行った結果、そんなビジネス的な思惑があるワーナー・ブラザースの数々の注文に、ザック・スナイダーはよく応えてきたと個人的に思います。彼の監督作品を観ればわかる通り、彼は非常にビジュアルにこだわる監督です。言い換えれば確固たる実現したいビジョンがあり、それを可能な限り映像で再現する美術系の監督という事でもあります。クリエイターのザック・スナイダーと、ビジネスのワーナー・ブラザース。この二者に限ったことではないですが、これは水と油とも言っても良い組み合わせではないでしょうか。f:id:the-Writer:20190328110029j:plain現在リリースされている劇場版JL、改めて観てみると面白いと思いました。小気味のいい軽口、明るく色鮮やかな画面、シンプルなストーリー。むしろ元のスナイダー監督ではできなかったであろう、ジョス・ウェドンならではの原作コミックの再現や巧みなセリフ回し等、気に入った場面もいくつもあります。クラークが蘇生した後に細く流れる、ジョン・ウィリアムズによる往年の「スーパーマンのテーマ」も面白いアイディアだと思いました。f:id:the-Writer:20190329172239j:plainしかし、僕はそれで満足するわけにはいかないんです。劇場版も面白いですけど、やはりこれはスナイダー監督が超特急で製作していたスナイダー・カットの予告編、と僕はみています。ここに至るまでにMoS,BvSがありました。その二作は壮大な規模で一人の男が無敵のスーパーマンへと至る旅の足跡を描き、ハンス・ジマー作曲のテーマがそれを荘厳に演出し、他にも人知を超えた存在がいる世界観の深みを存分に観客にみせてくれます。そもそもワーナーの計画によってMoS,BvS,JLのスーパーマン・トリロジーが形成されました。やむを得ず作風転換を行うのはわかるのですが、トリロジーの3作目での実行は明らかに最悪のタイミングだったのではないかと思うのです。作風転換を行うならばそのタイミングは二つ:2作目から・もしくは3作全てが終わってから、にするべきだったと。1作目が終わった時点で転換するのならば、トリロジーの各作品が異なる方向性を持つことになります。3作全てが終わってからなら、トリロジーが完結したという事できりが良いでしょう。f:id:the-Writer:20190329172541j:plainしかし2作目まで、それも壮大に盛り上げて盛り上げてからの作風転換は、それまでのファンの期待を裏切る事となりました。それだけでなく、3時間近くあった上映時間は2時間にまで短縮された事で、提起した問題に対する見せるべき答えがいくつもカットされてしまいました。「スーパーマンはなぜ地球でヒーローとなるのか」「バットマンワンダーウーマンは孤独と諦めを捨ててなぜ、今光に向かって一歩踏み出すのか」「フラッシュ、アクアマン、サイボーグは外宇宙の敵との戦いで盟友を得ることで何に向かっていくのか」といった話運びに説得力がなくなります。

ハンス・ジマーのテーマ曲やジャンキーXLが用意しようとしていた各ヒーローの専用テーマ曲までもが削除された事が更に拍車をかけます。観客は感情的に、直感的にMoSやBvSからつながる物語だと感じられず、その二作で得た感動や悲しみを昇華させる事ができず、行き場がないままの不完全燃焼です。重厚な物語は軽薄なものとなってしまうのです。僕の中では世界はスーパーマンを失ったままであり、ブルースとダイアナもいずれ訪れる更なる脅威を薄々感じ取る程度です。他の3人の超人に至ってはどんな見た目でどんな能力を持っているのかもろくにわかっていない……そんな段階で時間が止まってしまっています。f:id:the-Writer:20190405120533j:plainスナイダー監督の作風はクセがあり、決して万人受けするものではありません。しかし逆に万人受けする作風など存在するでしょうか。例え同じ作品を作らせても、監督一人一人によって違うものが生み出されます。仮に観客が10人いたとしたら、8人に「まあまあ」と記憶される映画と、3人に「これは本当にすごい!」と気に入ってもらえる映画ができます。後者のパターンは一見非常にリスキーですが、残りの7人が全員作品を否定する側に回ることもないでしょう。大勢が一回見てそれっきりになるようなほどほどの映画ではなく、例え一部であっても熱烈な支持者がいる……DC映画ユニバースはそれ位が、少なくともザック・スナイダーのJLまではその方針でよかったのでは、と思います。

上記の劇場版JLの「明るい」要素はむしろDC映画に必要なものであると思いますが、それを持ち込むタイミングが明らかに不適切であったのではないか、と思います。そのせいで「明るい」要素はむしろ実際、BvSが公開され、その続編を求める観客には不評でした。現実にはJLはDC映画ユニバースで興行収入は最下位であり、撮影・編集された本来のJLスナイダー・カットを求める動きが活発に行われているという異常事態になりました。

実際こちらの2016年末~2017年頭にかけたJL製作中のザック・スナイダー監督とワーナー・ブラザースの幹部の攻防(?)、もし書かれている事が全て真実であればワーナー側の態度はもはや侮辱ではないでしょうか。明らかにクセのあるクリエイターはどこまでも製作会社のビジネス通りに作るべきだったのか、それとも会社が雇うクリエイターを適切に吟味しその自由を尊重するべきだったのか。あるものを作り出すのに才能を持つ人間を「使う」のはどこまで許されるのか。結局、このフランチャイズにおいてどうすればよかったのか誰にもわかりません。別の可能性を辿った未来をみるなんて不可能なわけですから。

計画通りに行かず、計画を変更するのは決して悪いことではありません。現実に何があるかは結局どうしても予測不可能な箇所があり、それは誰の責任とは断言できないでしょう。アメコミ映画というジャンルに限らず、このような大作映画を連続で作り、サーガを形作っていく方式のフランチャイズでは、シリーズの規模に比例して上層部の決断は非常に重要なものになります。大金を投じて何ヵ月もの撮影、それに関わる大勢のスタッフ、製作する作品に関わる関連商品、株主への見返り……。課題は山積みです。ただ僕はこの問題を一層難しくしているものがあると思います。それは関わる人間の「私的なもの」です。

ここが作品を作るクリエイターと、その運用を考える配給会社の兼ね合いの難しいところなのですが……作品が観客一人一人にとってより面白く思えるよう作れるのはクリエイターであり、それをどうやって世間に受け入れられるように考えるのが配給会社のビジネスです。スーパーマン・トリロジーに対して、ワーナー・ブラザースはただでさえ数々の注文を出したので、せめて作品そのものはスナイダー監督の思う通りに作らせるべきだったのは、と思います。映画は観客の審美的・感情的な箇所に訴えかけ、心に残るものなため、それを扱う映画業界・ビジネスは利益の数値では測れない側面があります。これがまさに、「人の個人的なもの」です。とても繊細で、大切にしたいもの。作り上げることができても、そう簡単に変えることはできないものです。そしてこれは、観客側だけでなく製作側の人間もそうでしょう。f:id:the-Writer:20190329184626j:plain僕がなぜスナイダー・カットを求め続けるのか。それは「始めたことは終わらせてもらいたいから」です。MoS,BvSは僕の心の中に大切な作品として残っています。公開前、ワーナー・ブラザースは最初に公開した2つの予告編・プロデューサーをはじめとする関係者の口から「(ザックは降板してしまったが)ザックの作品を届ける」と約束してくれたはずです。トリロジーの完結を行う3作目は、その作品自体だけでなくトリロジー全体の評価をも担う大切な立ち位置です。発売中のBlu-ray/DVD収録の特典である舞台裏映像では徹底的にスナイダー監督しか登場していません。あたかも大規模な再撮影などなく、劇場版JLこそザック・スナイダーの映画であると言わんばかりに。トリロジーの結末の部分を露骨にビジネス重視の方針のもとに不適切に改変しておきながら、それを押し隠しつつできたものを完成版として沈黙を続ける姿勢には納得がいきません。f:id:the-Writer:20190329184649j:plainただし、この運動は怒りといった敵意ではなくあくまで誠実に作品を求める感情でやるべきだとも思います。Twitterを主に "#ReleaseTheSnyderCut"「スナイダーカットを出せ」というハッシュタグが積極的に使われていますが、よく怒りの矛先が向けられているのがこの劇場版製作を指揮したジョス・ウェドン監督です。しかし、本当に彼が責められるのだろうか、という疑問が残り続けています。彼が手掛けたアベンジャーズ二作は歴代世界興行収入トップ10に名前を残しており、彼は指折りの映画職人と言える実力を持っています。彼こそ既に何本もヒーローの映画が作られた後、そのキャラクター達を一手に引き受けて作るヒーロー大集合映画を心得た人物、と言えるでしょう。確かにBvSから続投していたJLの作曲家・ジャンキーXLを解雇したのは彼ですが、彼もまたワーナー・ブラザースの幹部たちの被害者ではないか?と個人的に推測しています。特に「上映時間を2時間に収める」というケヴィン・辻原元CEOからの指示の非合理さを一番よく理解していたのではないか、とすら思います。これだけ大規模な再製作に貢献したウェドン監督ですが、彼については名前がオープニング・クレジットに脚本として載るだけであり、先ほどの舞台裏映像ではウェドン監督の映像は徹底的に乗せられていません。ワーナー・ブラザースは数々の優秀なクリエイターや大勢のスタッフ、観客をうまく扱えていなかったように見えます。ただ怒りをもって向かっても反発が生じたりしこりがのこるものです。そこはあくまでまっすぐに声を上げ続け、スナイダー監督の物語を区切りの良いところまで終わらせるべきではないかと思います。f:id:the-Writer:20190329165924j:plainザック・スナイダーは自負している通り、熱狂的なコミックファンです。つまり彼自身が自分が仕事として、作品として手掛けるコンテンツを愛しています。自分が心から愛しているものに自分で手を加えたり、新しく何かを創り出すのは非常に勇気がいる作業だと思います。なぜならその工程は自分が愛する元のコンテンツを汚すことになりかねないからです。まあ彼を傲慢とすることもできますが、そもそもそれ位の肝がないと映画監督という職は務まらないでしょう(確かに余計な爆弾発言をかまして炎上することはありますが……)。

更に、美術系の彼の作品は、どのカットの構図や登場人物の行動などすべてに理由があります。芸術的で文学的な作品です。しかし、その描き方が世間に受け入れられるかどうかは別問題です。そもそも原作としているDCコミックスが希望や楽観を根底のテーマとしている中、彼が監督した作品の影響でDC映画は「ダーク」だと言われることは少なくありません。ただし、彼はトリロジーを締めくくるJLでついに定番中の定番である、「記者のクラークがシャツの胸元を破るとSのマークが現れる」というシーンを撮影していました。これは元になった作品の自分の解釈や表現にただ酔いしれているのではなく、しっかり押さえるところは押さえる原作愛の証明ではないでしょうか。f:id:the-Writer:20190330191858p:plain先ほど書いた通り、ザック・スナイダーが参加したDC映画ユニバースという企画は「スーパーマンが中心」という事だけでなく、スーパーマンの映画と、必然的にその発展形となるジャスティス・リーグの映画込みでした。スナイダー監督してはスーパーマンの映画で始まりつつ、やはりジャスティス・リーグという壮大な作品を作るには相応の時間と手間をかけるため、各ヒーローの映画の製作を望んでいました。しかし数々の事情があり急ぎたいワーナー・ブラザースの注文に合わせて、スナイダー監督はMoS,BvS,JLというスーパーマン・トリロジーの構想を創り出しました。この3作(4作?)は互いに密接に関係しており、各作品は映画として基本的に別々ながらも俯瞰して観た時に巨大な物語を紡ぎます。

スナイダー監督の、自分が手掛ける作品によって描くサーガの構想は少なくとも二度、ワーナー・ブラザースの要望による大きな変化を経て現在の形になったと考えます。

 [MoS→MoS2?→各ヒーローの映画→JL]

→[MoS→BvS→JL1→JL2]

→[MoS→BvS→JL1→JL2→JL3]

という変遷をたどったのではないでしょうか。

彼の構想のいわゆる「第二形態」までは、先ほどのJLの本当の構想という記事を読んでいただければわかる通り、非常に前衛的な内容です。現在のリーグの勝利で終わるJLスナイダー・カットですら、厳密には彼が思い描いていたストーリーではなく、ワーナー・ブラザースのリライトの指示によるものという事が判明しました。ただし彼の作風も合わせて考えると、完全にスナイダー監督の構想に従って作られたJLは正しかったのだろうか?という疑問があります。個人的に面白いのは確定なのですが、まだ世間一般にリーグの敗北・半数が死亡、という展開は早すぎたのではないかと。そもそも一定の興収がないとそもそも続編が作れないという前提がありますよね。f:id:the-Writer:20190329182404j:plain個人的にJLスナイダー・カットはベストの形なんですよね。初期のJL脚本が結果的にトリロジーに(恐らく)分割されたのは、僕にとって思わぬ幸運でした。これによって結果的にリーグを語る時間が延長されたので、たっぷりと彼ら6人のことを観ることができますし、結果的にリーグの物語を語るのに最適な形になったのではないかと。じっくりとしたストーリーテリングでひたすらにカッコいいヒーローの映像を仕上げ、様々な哲学をも内包してくる「濃い」ジャスティス・リーグの映画を三作も堪能できるのは幸福という言葉以外には浮かびません。ワーナーのDC映画担当部門の人事が大きく変わったことで、製作されている作品のラインナップを見るにまたしても方針転換は明白です。その中で現状ではJL2の製作すら何も続報がなく、ザック・スナイダーの関与もまた然りです。ザック・スナイダー本人はVeroでまたDC映画を監督する事への意欲を示唆していますが、2019年5月現在ではスナイダー監督の遺産はスーパーマン・トリロジーという事になります。 f:id:the-Writer:20190405130103j:plain確かにザック・スナイダーの映画は前衛的過ぎて大多数に受け入れられなかった箇所はあったかもしれません。僕は大ファンですが、DC映画を全てザック・スナイダー色に染め上げろと言っているのではありません。いつかは彼のサーガは完結を迎えることとなりますし、現状それがJLである(べきだ)と思っています。彼の築いたサーガから、彼が考えていなかった数々の映画が生まれていく……まさしくDC Extended Universeと言えるでしょうか(個人的な話ですが僕はこのDC映画ユニバースを呼ぶ時、JLまでをDCEU・JL以降も含める時はDCFUと呼ぶようにしています)。『アクアマン』と『シャザム!』、共にとても面白かったです。しかし、JL以後のこの2作にザック・スナイダーのDNAは確かに受け継がれており、それが世界中に観客に絶賛をもって受け止められました。例えば『アクアマン』であればキマッたカットの数々や主人公の生い立ちをシャッフルして描く技法。『シャザム!』ではMoSの超高速最終決戦をおちゃらけた雰囲気のビリー君が引き継いでくれました。だから彼の技法そのものは(適切な使いようによっては)、大勢の観客たちのドツボにハマるという事がわかります。↓以前書いた記事で、「(ザックの築いた)『神話っぽさ』をどれだけ盛り込んでいくかは、個々の作品の監督にかかっている」と書きましたが、それが『アクアマン』,『シャザム!』というホラーを手掛けた監督たちによる二作が証明してくれたわけです。

JLのスーパーマンはついに「シャツの下からSのマーク」をやってくれました。これはスーパーマンが一種の極地、ついに一人の人間から誰もが憧れ、誰をも守る無敵のスーパーマンへと至ったことへの表れであると思います。一度そうなった以上、これからのDC映画の全体的な方針は原作コミックの楽観や希望をより前面に押し出していくようになるのでしょう。DCコミックスの人気ライターであるジェフ・ジョーンズに言わせれば、DCとは希望と楽観の世界です。ただワーナーがそれを映画群にするにあたり、その時はマーベルという強力なライバルがいたのでザック・スナイダーが呼び込まれました。彼が行ったのは、神話のような重厚な語り口で「誰もが知る希望のヒーロー」はどうやって出来上がっていったのか、という物語の設計です。しばしばそれが「ダーク」とも評されましたが、結果的に「明るい」調子の世界につながるものです。これからのDC映画は『アクアマン』のような快活な冒険映画、『シャザム!』のような楽観的で少しスパイスのある成長物語など、明らかに陽性のものだけでいくのか。それとも「明るい」はあくまで全体の方針であり、その中に現実的で「ダーク」とされる教訓めいたものもしっかり盛り込んでいくのか。観る人みんなが「自分の好きなものはこれ」と選べるようなバリエーションの広さを持ち、どれもちゃんと一つの映画として成り立つ、そんなシリーズにDCFUはなっていくのでしょうか。これからもDC映画を応援し続けようと思います。