~平成ライダーよ、永遠に~『平成ジェネレーションズFOREVER』補完・考察計画

「あの頃、本当に俺のそばに仮面ライダーはいたんだ。覚えてる限り、ライダーはいる!」

こんにちは、the-Writerです。すごい素敵なセリフだな、と思います。

僕のライダーへの個人的な思い入れを書いても特に興味はないと思うのでここにはほとんど書きませんが、最近『仮面ライダージオウ』にはまりまして……前年度と今年度のライダーが共演する恒例の冬の劇場版、『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』を観ました。非常に満足度の高い作品でした……気づけば20作も製作されてきた平成仮面ライダー、その総決算としても『ジオウ』の物語としても『ビルド』の物語としても見事なシナリオ、過去作品と現行作品の両方を丁寧に扱い、驚異的なバランスで完成された一本でした。

f:id:the-Writer:20190208215733p:plain「映画はそれを観る人の数だけ存在する」という言葉を聞いたことがあります。同じ映画でも、それを観る人たち一人一人には感情,印象,知識によって違う見え方をしているので、実質的に異なる映画が観客の数だけ存在するということを言い表した言葉です。『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』ほどその性質が如実に表れた映画もなかなか無いのでは、と思います。20年の歳月の中で人それぞれがライダーと関わってきた歴史は全く異なります。人によってこの映画に別々のものを見、自分の『平成ジェネレーションズFOREVER』ができるのではないでしょうか。個人的には求めてきたものが全てある……そう言っても過言ではないですね。f:id:the-Writer:20190208215701p:plainただ、そのシナリオはかなり難解な事も確かなんですよね。観てる最中はどっとあふれてくる感情に流されて楽しんでいるものの、後から考えると「……結局あれはどうで、どうしてこうなったんだっけ?」となるような。ですけど、僕はこれくらいの塩梅でいいと思います。『2001年宇宙の旅』の如く「これ何が起こってるの?」とさっぱり理解できないでもなく、全てが懇切丁寧に解説されてしまって解釈の余地がないような映画でもない。観ている最中はそのスクリーンのエネルギーに酔いしれ、後から考えると色々考えさせてくれる……「子供向け」ですけど、その「子供向け」とはあくまで子どもがパッと見ても普通に楽しめて、中身は大人にも十分通用するレベルのものです。

今回は自分の中で設定を整理するために、そして2018年末に出会ったことでよみがえった平成ライダーの記憶を残しておくためにこの記事を書くことにしました!知識を整理する目的が大きいのと本当に解釈が分かれる(正解が無い)映画なので、解説の形をとった備忘録のような感じですが……。『仮面ライダージオウ』のTV本編を観ており、アナザーライダー関連のルールを理解しておいてもらえると本記事も割とスムーズに読めると思います。それとこの記事、長いです!了承できましたらお付き合いくださいませ( ノ_ _)ノ

※上に貼った2つの記事とツイートは本記事執筆の際に大いに参考にさせてもらいました。著者の方々、ありがとうございます!

目次

0.『仮面ライダージオウ』の世界観

まず調べてみて割と衝撃なのが今作『仮面ライダージオウ』の世界観でした。『クウガ』~『ジオウ』までの平成ライダー20作分が地続きになった世界……これは常日頃から言われている事です。TV本編では歴代の主人公本人がオリジナル・キャストで登場しますし、彼らとのクロスオーバーがすべて一本の時間軸(=世界)で行われます。しかし、あくまで「実は今までのライダー作品はすべて繋がっていた」という認識よりは、「ジオウの世界ではなぜか毎年ライダーが誕生してきた」という認識の方がよいと思われます。10作目に当たる『ディケイド』では並行世界という概念が提唱され、それまで基本的に世界観を分かち合うことは無かった9人の仮面ライダーたちはそれぞれ並行世界の物語であることが示唆されました。この考えは11作目の『W』以降にも当てはめると都合がよく、19作目の『ビルド』ではその設定を積極的に活かした展開が観られます。『ジオウ』ではそれまで放送されてきた作品と全く同じレベルの原作再現が行われてはいますが、あくまで「もしも全てのライダーが同じ時間軸上にいたら」という話であり、これまでのライダーたちとはやはり並行世界であると考えるのが妥当かと思われます。f:id:the-Writer:20190208221121p:plain『ジオウ』第1話時点では既に(主人公である)平成ライダーはソウゴが変身するジオウただ一人でした。なぜかというと、クウガ~ビルドまでのライダー達全員が歴史改変により、ライダーにはならず一般人として生きている事になったからです。なおこれに関して、長年平成ライダー作品のプロデューサーとして携わり『仮面ライダージオウ』ではチーフプロデューサーを務める白倉伸一郎氏はTwitterでこんな発言をしていました。

 (↑該当ツイートが削除された場合、新たに「魚拓」を貼ります)
僕なりの「白倉仮説」の解釈を書いていきますね。そもそも平成ライダー20作の出来事が全てつながっているというのは、本来ならあり得ない事態なんですね。例えば『電王』と『ビルド』の設定を組み合わせると、電王が主に2007年で戦っている間、火星から持ち込まれたパンドラボックスの解放によって日本は三つに分断されてしまったという事になります。f:id:the-Writer:20190209084620p:plainかなり楽しい世界観ですけど、それが本来なら起こりえない理由。それはそもそも設定が矛盾しちゃう事です。例えば人類が誕生した理由について。『アギト』では人類は「闇の力」という超常的存在が自らに似せて作りだした、という設定ですが『ブレイド』では2万年周期で開催される「バトルファイト」という戦いでヒューマン・アンデッドが勝利したから人類は生まれた、という事になっていました。しかし、タイムジャッカーの度重なる介入によって各ライダーの物語が繋がってしまった時間軸が生まれた、というのがジオウの世界観のようです。

どうしてそれが可能になるのかと言うと、僕なりの解釈にはなるのですが「時間は生き物」だからです。『ジオウ』のTV本編を見るに、今作で描かれる時間と言うのはどうも流動的で融通が利くというか、一定の法則に従って生き物のように自由な動きを見せます。f:id:the-Writer:20190208214819p:plain『ジオウ』第5話のフォーゼ編がわかりやすいのですが、2011年に発生した『フォーゼ』2話時点の出来事が描かれるシーンがありました。敵のスコーピオン・ゾディアーツと弦太朗が変身したフォーゼが相対しているとき、タイムジャッカーがアナザーウォッチでフォーゼの「力」を奪い取った途端に、フォーゼの変身が強制解除され、ドライバーと弦太朗の記憶、そしてスコーピオン・ゾディアーツまでもが消滅してしまいました。

他の話の描写も併せて考えると、タイムジャッカーがアナザーウォッチを使用して行う歴史改変とは、時空を超えて影響が及ぶことでライダーの歴史が根こそぎ消滅する……という事が読み取れます。ライダーの「力」とは、ライダーへの変身能力だけではなく、ライダーを取り巻く関係人物や敵対勢力も含んでいるのですね。ジオウ世界3つのルールに従い、全く異なる三者がそれらの全てを「アナザーライダー」として担うことで、歴史はアナザーライダーを正規の仮面ライダーとして認識し、「力」を不正に剥奪されたライダーは一般人として生きてきたことに「されてしまう」のです。f:id:the-Writer:20190208223902j:plainなお、あくまでこの「白倉仮説」はなぜ設定がいくつか矛盾する『クウガ』~『ビルド』が一本の時間軸上に存在するのかという理由を説明しただけであり、どこまで真面目に考えていいのかという問題もあります。そもそもタイムジャッカーが歴史に介入した結果クウガ~ビルドの歴史を作り上げたのはオーマジオウの誕生を阻止するためです。しかしオーマジオウとなるジオウはクウガ~ビルドの歴史があったから誕生したからで……と、「鶏が先か卵が先か」の延々と答えが出ない堂々巡りの問題を内包してしまっています。2019年のある日にジオウがオーマジオウとして覚醒して世界を焼き尽くし、2068年には世界人口が半分となってオーマジオウが支配しているらしい「逢魔降臨暦」の内容は気になりますが、とにかく「タイムジャッカーによって毎年ライダーが生まれては消失してきた」という世界観が出来上がったのは確定でしょう。矛盾した設定同士の作品が共存できているのはタイムジャッカーのせい、という裏設定のような認識で良いのかもしれません。TV本編や劇場版でちょくちょく描かれるアナザーライダーの誕生はその過程を描写している事になりますね。

f:id:the-Writer:20190208222301p:plain常盤ソウゴが高校3年生として生活する2018年に至る前、大本として存在していたのは『クウガ』と同じ歴史であったと思われます。本来であればそのまま事は進んで2000年1月29日の九郎ヶ岳遺跡にて発掘隊がグロンギを解放してしまい、持ち出されたアークルは常に笑顔とサムズアップを忘れない男・五代雄介が装着して仮面ライダークウガに変身するはずでした。しかしオーマジオウの誕生を阻止したいタイムジャッカーによって遺跡の発掘前に「力」を奪われ、クウガは誕生しないことになってしまいました。f:id:the-Writer:20190208222420p:plain突然ではありますが、これによって時間軸が二つに分岐します。結果、この分岐した時間軸は2つの並行世界に成ったのではないか……と推測されます(その根拠は後で書きますね)。一つは「白倉仮説」に従って2001年に次の仮面ライダーであるアギトが誕生した世界である「ライダー世界」。もう一つは東映がフィクションのヒーロー番組として『仮面ライダークウガ』を1年間放送していく世界の「現実世界」です。

ここでは「ライダー世界」に注目していきますが、実はアギトが戦う2年前、クウガが世界を守るために戦っていたという裏設定が存在します。ただこれは『クウガ』の設定と矛盾するので、歴史改変による時空のゆがみがクウガの物語を復活かつ1年前に押し戻したのかもしれません。タイムジャッカーがどこかの時点で介入し、アギトの「力」を奪ったため今度は2002年に龍騎が誕生。しかし黒幕である神崎士郎の度重なるタイムベントのタイムループにより、龍騎の歴史は何度も異なる結末を迎えながら最終的に龍騎そのものが存在しない歴史となりました……ただ一人のライダーを除いては。これは恐らく2019年でタイムジャッカーが介入し、それを認識した歴史が、2003年にファイズを生み出し……とタイムジャッカーによる介入と歴史改変が繰り返された結果、ビルドの誕生と消滅が行われ、2018年の常盤ソウゴが仮面ライダージオウに変身する……という歴史につながっていくものと思われます。ライダーが消滅する度に新しいライダーが生み出されるので、「MOVIE大戦」や「平成ジェネレーションズ」のような新旧のライダーが揃い踏みするような事態は、ジオウの歴史ではまずあり得ないんですね。f:id:the-Writer:20190210091936p:plain

個人的にここで着目すべき点は2つあると考えています。

一つは、これらは全て一つの時間軸上で行われている事。「歴史の塗り替え合戦」とでも言うのか、それが幾度も行われています。例えば『ビルド』を例にとると……タイムジャッカーが介入した日を2017年の〇月×日とします。2018年からタイムマシンで〇月×日より後に行けば、そこは既に歴史改変がされておりスカイウォールやブラッド族といったものは存在しません(……はずです)。関わった主要人物たちもただの一般人として過ごしています。しかし、〇月×日前に行くとそこにはまだスカイウォールがあり、仮面ライダービルドが敵対勢力のファウストと戦っています。タイムジャッカーが介入した順番はビルド→エグゼイド→フォーゼ……とクウガ→アギトと正規の順番とは全く関係なく、アナザーライダーを誕生させる時代もバラバラだったりするので本当にややこしいですが、正規のライダー誕生→消滅(アナザーライダー誕生)→次の正規のライダー誕生→消滅(アナザーライダー誕生)……というのが既に18回繰り返された時間軸が完成しています。極論、2018年の『ジオウ』第1話時点にはアナザーライダーは18人もいることになります(実際は色々な事情があってそうではないですが)。

もう一つは、歴史はその場その場の対応をしている事。例えばエグゼイドの「力」が奪われたとたん、歴史は宇宙にブラッド族と言う存在を出現させ、葛城巧という人物が天才物理学者であるという設定を与えています。そして10年前にスカイウォールが日本を三つに分断した「ことにしました」。このように歴史は前述の有機的な性質から、あるライダーが消滅したとたん時空を超えて新しく何かを生み出したり既にいる誰かに役割を担わせたり、恣意的に新たなライダーの物語を誕生させてきましたf:id:the-Writer:20190209133410p:plain補足……と言えるかはわかりませんが、ジオウの世界観に昭和ライダーがいるかどうかは全く持って不明です。『フォーゼ』の設定を持ち込んだ時点で昭和ライダーも存在していたことになる可能性もあるのですが、例え存在していたとしてもフォーゼの「力」が奪われたことに伴って消滅したと考えるのが妥当です。ただ『平成ジェネレーションズFOREVER』は見事に平成ライダー20人のみに絞り、徹底的にそれで物語を進めていました。できればその姿勢は継続してほしいのが望ましいですね。

 

1.ティードの計画

f:id:the-Writer:20190209133629p:plain不気味なテーマ曲とチートレベルに強力な能力、大東駿介さんの怪演が合わさってすさまじい迫力を醸し出していた『平成ジェネレーションズFOREVER』の黒幕です。「平成ライダーの抹消」にこだわっている割に、冷静に考えてみるとその動機などの背景がよくわからない人物でした(まあ『ジオウ』本編でもタイムジャッカーという勢力自体の説明が全然されていないのですが)。f:id:the-Writer:20190209151532j:plain動機に関連した劇中での数少ない言動を合わせると、「平成ライダーを抹消することで、自分が世界の王になる」というのが彼の目標のようです。少なくとも劇中では「タイムジャッカーのティードだ」と名乗っているので、『ジオウ』本編のウール・オーラ・スウォルツら3人のタイムジャッカーとは広義的に、オーマジオウと敵対する同じ勢力に属しているようです。なお、彼ら3人は第三者をアナザーライダーにしてオーマジオウに代わる王に仕立てようとしているのに対し、ティードはアナザーライダーをただの手下として使う上にオーマジオウをそもそも歴史から抹消して自らが王になろうとしています。というわけで、彼ら3人とは相いれずに別行動をしているのは自然です。それにティードってなんか全体的にキモいからハブられてそうだよねf:id:the-Writer:20190209144921j:plain仮面ライダー電王』に慣れ親しんでいた方はおっとなる用語が本作でカギをにぎりました。特異点」……それはどんな歴史改変が起ころうとも全く影響を受けない存在です。タイムトラベルとそれによる歴史改変を扱う『電王』では、「人の記憶こそが時間を作る」という概念が提唱されていました。これにより、タイムトラベルで過去が破壊されようとも、特異点が元の正常な記憶を持っていれば歴史はそれに従って修復されるようになっています。電王の物語が発生したジオウの世界には、この性質が付与されます。タイムジャッカーにとっては非常に邪魔な存在。何としてもこの障害を取り除きたいという事で、ティードは2000年で7歳の少年・シンゴが狙われました。

ティードの計画をまとめるとこうです。

1.平成ライダーを全員消して2068年では王になりたい

2.平成ライダーが20人も生まれるきっかけになったクウガを消そう

3.てか特異点がいるとそもそも歴史改変ができないじゃん

4.平成ライダーを知らない特異点=シンゴの能力を封じ込めよう

5.手下として使うためにアナザーライダーが欲しい

6.まずダブルの「力」と、念のために直接特異点の電王の「力」も奪おう

7.2000年に飛んでクウガの「力」を奪い、シンゴ誘拐はアナザーWにやらせる

8.これで平成ライダーは全員消えた!

9.2018年に戻り、シンゴを封印して世界を滅ぼし王になる

(10.全てが終わった後でシンゴを解放すれば、「記憶こそ時間」ルールとライダーを知らない記憶に従って世界が修復され、ライダーが全く存在しない世界が完成する?)

 1~6は映画開始以前の動機であり、7~9が映画劇中での出来事です。主人公はソウゴと戦兎なので、彼らの視点で物語は進みます。よってあちこちの時間で工作を行うタイムジャッカーの行動がパッと見ではわかり辛いのですが、ティード視点では2000年の九郎ヶ岳遺跡でクウガの「力」を奪ったのが、描写された内の最初の行動です。順番で言うと中盤→冒頭→終盤、ですね。f:id:the-Writer:20190209142031j:plain平成ライダー誕生のトリガーとなるクウガの「力」を奪う……ティードがこれを実行した結果「0.『仮面ライダージオウ』の世界観」で書いた通り、『クウガ』で描かれた通りの物語が始まるだった世界は二つに分岐し、それぞれ並行世界となりました。一つは後にジオウが誕生する「ライダー世界」・もう一つはライダーが虚構とされる「現実世界」です。自身が不正にクウガとなってからは、ティードはずっと「現実世界」に身を置いています。

ちなみに特異点であるシンゴは歴史改変による影響を受けない、つまり記憶が改変されることはありません。それにも関わらず、なぜかシンゴくんは歴史改変の結果である「仮面ライダーは『虚構』」という認識を持っています。2018年に連れ去られて一旦逃げ出した後出会ったソウゴやアタルに、「『仮面ライダークウガ』、すっげ~楽しみ!」と発言しているんですね。これに関しては、恐らく映画で描かれたシーンの順番は逆だったのではないかと思います。2000年1月29日、シンゴ誘拐→ティードがクウガに成り代わる……という順番でしたが、理屈を考えると本来はティードがクウガに成り代わる→シンゴ誘拐、という事ですね。ティードがクウガの「力」を奪ったことにより、分岐した並行世界の「現実世界」ではその日から『仮面ライダークウガ』が放送開始されるという事に「なりました」。前述の「歴史が行うその場その場の対応」ですね。シンゴは外でアナザーWに遭遇する直前の病院内で、『クウガ』の番組宣伝を観ていたのではないでしょうか?母親は下手に動かせない状況で病室におり、眠っているので暇だったシンゴ。TVで『クウガ』の放送ジャンクションを目にした・『クウガ』の番線ポスターを見た・他の患者の子どもたちが『クウガ』について話しているのを聞いた……といったように、『クウガ』というヒーローの存在を知ったのだと考えられます。ティードがアナザークウガに変身してタイムマジーンと揉み合ってる最中、シンゴが『クウガ』の番宣を目にした→アナザーWに遭遇→未来から来たアタルがアナザー電王にされる→シンゴ誘拐……という順番で起こったことになります。

f:id:the-Writer:20190209154904j:plain『ジオウ』本編で描かれた通り、タイムジャッカーによって「力」を奪われたライダー本人と関連人物たちは全員一般人として生きてきたことになります。これは未来からタイムトラベルしてきて現代に滞在している人間も例外ではなく、ゲイツツクヨミまでもがソウゴと同じ高校の同級生、というように歴史が改変され、2018年までの歴史に組み込まれてしまいました。推測なのですが、ウール・オーラ・スウォルツも例外ではなかったのではないかと思うのですね。前述のとおり、この3人とティードが対立していることは容易に想像できます。平成ライダーをまとめて始末するついでに邪魔なタイムジャッカー3人まで無力化できれば、ティードとしては儲けものです。f:id:the-Writer:20190209155113j:plain2000年でひとしきり暴れた後アナザーデンライナーに張り付いて2018年へと向かうティード。平成ライダーは全員消えた・自分はクウガの「力」を手に入れた・特異点のシンゴは自分の手中・アナザーライダーを2人も配下にした……計画は手際よく進み、もうあと一歩で野望が完遂できる段階まで来ました。後の破壊活動など最早お遊びのようなものです。しかし、僕の見解ではティードには誤算が二つありました。一つは電王の「力」を奪っていたつもりが無意味だった事。一つは時間軸が二つに分岐していたことを認識できていなかった事。f:id:the-Writer:20190209180734p:plainここで計画の崩壊の前兆となるような出来事が早速発生。2018年に戻ってきた途端に(接近してくる何かをかわすつもりで移動した)ゲイツと衝突事故が発生。これはジオウ側の作戦でもなんでもありません。本っっっ当にただの事故です。

f:id:the-Writer:20190209155214p:plain

出典:映画見た後だとなんか予告等のシーンが笑えるティード【平ジェネFOREVER】

そしてなぜかジオウやビルドと、消えているはずのライダーが力と記憶を従来通り保持して目の前にやってきます。事あるごとに「消えたはずのお前らが」とか「存在しないはずなのに」と連呼しますが、彼の認識では平成ライダーの抹消はアナザーライダーとしてクウガに成り代わった時点でほとんど完了しているに等しいのです。それをなぜか理屈を超えてくるような理不尽さで、何度もポンポン復活してくるライダーには当惑するのも自然でしょう。f:id:the-Writer:20190209181911p:plain他にも・なぜ戦兎には洗脳が効かなかったのか→ネビュラガスへの耐性やブラッドスタークの洗脳を経験済みだから・アナザーライダー化するとなぜバカになるのか→クウガの時はともかく、アルティメットの時は「究極の闇」の力におぼれた・そもそもなぜここまで悉く計画が裏目に出たのか→アナザー電王を作ったせいで良太郎の不幸が移ったから、なんて細かい疑問にも一応答えは出せます。

アナザー電王に関しては笑いを誘いますけどあながち冗談でもないんじゃないかと思いまして。『ジオウ』本編第6話にてアナザーファイズが登場しましたが、2003年に誕生した彼はそれから8年の間にアナザーファイズの力がどんどん消耗していきました。これはオリジナルの巧がオルフェノク(=短命)であるという性質を反映しているのではないか?という見方ができるので、アナザー電王を作った際に良太郎を襲う数々の不幸もうつってきたのも自然なんですよね。

強すぎるのに運が悪すぎた結果として、彼が物語で迎える結末はご存じのとおりです。

 

2.なぜライダーたちは来てくれたのか

f:id:the-Writer:20190209181349p:plain本作『平成ジェネレーションズFOREVER』には解釈の余地がかなりあると思います。その中に「電王は『ジオウ』本編での彼なのか」「時間軸が二つに分岐したのは、並行世界にまでなったのか否か」という疑問があります。よって本項目で書く内容については、あくまで僕の解釈であり正解ではないことにご注意ください!

白倉氏は「『ジオウ』本編と『平成ジェネレーションズFOREVER』では微妙に設定が違う」とTwitterで発言しているので、そもそもこの映画がTV本編とは実質パラレルワールドであまり関係がない、という見方もできます。しかし僕はあえて、『ジオウ』本編に『平成ジェネレーションズFOREVER』を組み込む方式で論理を建てていこうと思います。だってその方が楽しいじゃん~f:id:the-Writer:20190209184324p:plain時間軸が分岐したという現象は『ジオウ』TV本編でも起こりました。第17話より「もう一つの可能性のある時間軸」からジオウではなくゲイツを崇拝する白ウォズが来たものの、あくまで世界は一つなのでこれからどちらの未来に転ぶかはわからない状態です。しかしこの映画ではそうではなく、なぜ「ライダー世界」と「現実世界」という二つの並行世界に成ったと思うのか。

まず先ほどまでティードと交戦していた世界に戻るために、Wライドウォッチを触れたソウゴと戦兎が無数の地球がらせん状を描くトンネルを抜けていく描写があります。『ディケイド』や『ビルド』ではいくつもの並行世界が地球として表現されており、これを踏襲した描写ではないかと思うのです。また、これに加えて映画ではあくまでこの二つの世界に注力している、と考えます。なぜならそうでないと、後述するイマジンのフータロスがライダー達を召喚する際、計19個の並行世界に手を出している事になり、それはあまりにも設定が破綻するレベルの強さではないか、と思うからです。1つの作品で扱う規模としても妥当な感じがします。f:id:the-Writer:20190228113128p:plainティードの行動を追うと、「ライダー世界」の2018年(あるいは2068年?)→「ライダー世界」の2000年→「現実世界」の2018年、と時間を移動しています。見方を変えると、彼は「ライダー世界」から「現実世界」へと並行世界間の移動を成し遂げている事になります。本来タイムジャッカーは一つの時間軸(=世界)にしか影響は及ぼせないですが、クウガの「力」を奪うという大変動を成し遂げたスーパータイムジャッカーだからこそ、という見方もできるでしょう。「ライダー世界」から「現実世界」へと移り、そこで彼が倒されることによって、「ライダー世界」からティードはいなくなったことになります(※もし並行世界ではなくあくまで一つの時間軸が分岐した理屈だと、黒ウォズと白ウォズのように「同一人物が二人いる」……つまりソウゴはライダーが虚構になった時間軸のティードを倒しても、元の時間軸にティードが残っていることになります)。従って今回の事件が終わった後の『ジオウ』本編でソウゴ達はティードと戦う必要が無いんですね。これもまた、本編の補完となっているのでしょう。

f:id:the-Writer:20190209185259p:plainティードの致命的な誤算として、電王の力を見くびっていたこと。九郎ヶ岳遺跡でクウガの「力」を奪う前にアナザー電王ウォッチを持っていたことから、クウガから始まる平成ライダーの消滅に任せるのではなく、念のために直接電王の「力」を奪いに行ったのではないかと思うのですね。そして何か騒動を起こし、電王が来たところでアナザーライドウォッチを起動。ここで電王の変身が解除され、それに伴ってデンライナーやイマジンもいったん消えます。それでティードは満足して撤退したのだと思います。f:id:the-Writer:20190209185206p:plainしかし特異点の良太郎にはどんな過去改変も効かず、元通りの記憶を保持します。それに従って歴史も修復され、「ライダー世界」と「現実世界」の両方における電王の「力」は完全に元の通りに修復されたのではないでしょうか。従って、いずれ一部の未来人はエネルギー化しイマジンが誕生するという歴史も守られるのです。イマジンの存在がタイムジャッカーの介入で消えないため、フータロスも現代にやってきたのだと思います。どういう手段を使ってか、一時期自分の存在を危うくした敵がいる。その敵が歴史改変をもくろんでおり、特異点である少年・シンゴが危ない。シンゴが敵の計画で誘拐される前に守るために、その弟である久永アタルと契約します。それにしてもフータロスって本当いいやつでしたね……。『電王』TV本編に出てくるイマジンってほとんどが契約者の願いを曲解して雑に叶えるため、フータロスがその類だったら「仮面ライダーに会いたい」なんて言うアタルをヒーローショーの現場に叩き込んでハイ終わりでしたよ。

フータロスが大きく関わる『平成ジェネレーションズFOREVER』における「ライダーが『虚構』とされている世界云々~」の仕組みは以下の通りです。f:id:the-Writer:20190210091544p:plainフータロスは良いヤツなうえに、並行世界に力が及ぶほど強大な能力の持ち主です(その反動か実戦はイマイチ)。孤独を抱えたアタルの「仮面ライダーに会いたい」という切なる願いを聞いたフータロスは、並行世界である「ライダー世界」より、本物のライダーたちやその関係者たちを召喚します。その召喚とは、並行世界同士同一人物がそれぞれの世界に存在する関係上、「ライダー世界」の人物たちを「現実世界」の該当人物に憑依させる、という方式だったのではないでしょうか。ただし、諸事情で同一人物が存在しない戦兎と万丈は本人の肉体ごと「現実世界」に転送されてきます。ただし「ライダー世界」のライダーたちはタイムジャッカーたちによってほとんどが「力」を失っています。それに関してはアタルの記憶が「記憶こそ時間」ルールに従ってライダーたちの元の「力」を復帰させたうえで、フータロスが「現実世界」の彼らに憑依させているものと思われます。だからこそ、『ビルド』本編最終回後のビルド達と『ジオウ』本編のジオウたちのクロスオーバーが可能になったのでした。先ほど歴代のライダーがジオウの世界にて並び立つのは不可能、と書きましたが今回はフータロスとアタルによる超特例です。

f:id:the-Writer:20190209192912j:plain映画冒頭で、ソウゴが『ジオウ』本編第1話のようにタイムマジーンとの追いかけっこを披露するシーン。あれは至って普通の反応であり、なぜなら「現実世界」において一般人のソウゴの前に突然タイムマジーンなんて巨大物体が出現したからです。あのシーンで観客は「なぜ本編のジオウまでもが記憶を失った?」と思うでしょうが、実は一種のミスリードです。ごく一部の場面(ウォズにソウゴが起こされるシーンと最後にソウゴと戦兎が分かれるシーン)を除いて、この映画はほとんどが「現実世界」での出来事を描いています。従ってアナザー電王に殴られたソウゴがライダーの記憶と力を取り戻したように見えたのは、そのタイミングで「ライダー世界」から『ジオウ』本編のソウゴが一般人のソウゴの肉体に宿ってたのでした。f:id:the-Writer:20190209193412p:plainまた、中盤で「現実世界」にてシンゴを確保したティードが計画を発動し、大量の怪人を放つシーン。その前から既にフータロスの限界を超えてビルド関係者たちの記憶が次々と消えていきましたが、自暴自棄に陥ったアタルが契約終了を告げたのでフータロスが能力行使を終え、ライダーたちの存在が消えていきます。戦兎と万丈は元の世界に強制送還=消滅したものの、ソウゴは最終的にどうなったのかは描写されていません。もしかするとへたりこんでいるアタルの傍らでライダーの変身が解除され、ただの同級生としてのソウゴが立ち尽くしていたのかもしれませんね。f:id:the-Writer:20190209185332p:plainここで電王の考察です。毎年、新しくライダーが生まれるたびにそのライダーの原動力であるエネルギーも、その世界に「存在していた」というように歴史に存在が加わります。電王と言う仮面ライダー自体、その出自がほとんど語られないのですが変身システムの説明はこのようにされています。「ライダーパスを持つ使用者のオーラをフリーエネルギーに変換してオーラアーマーを装着する」。次に敵となるイマジンについてはこうです。「未来人たちのエネルギーが現代にやってきて契約者の思い浮かべるイメージを借りて実体化した」。この未来人たちがエネルギー化したというのは、「時の運行」から外された・採用されなかった未来で生きる人間たちが肉体を失い、魂にも近い状態になったことです。もしもこのエネルギーが電王システムが使うフリーエネルギーを指しているならば……仮面ライダーのお約束的な設定として、「ライダーと怪人の力の源は同じ」というのがありますが、電王とイマジンは同じフリーエネルギーを使っていることになります。f:id:the-Writer:20190210094253p:plainここで電王について少し考察したのは、(「ライダー世界」にせよ「現実世界」にせよ) 電王が2007年に誕生した時点でフリーエネルギーはその世界に存在します。それは2018年になっても変わりません。イマジンのフータロスは、そのフリーエネルギーを使って「ライダー世界」から「現実世界」に本物のライダーを呼び寄せることに成功しました。しかし、一個体という制約上やはり能力にも限界があり、主役ライダーの関係者から記憶は消えていってしまいます。しかし、強い思いは一種のオーラ→フリーエネルギーとして使えるのではないか?と仮説を立てます。電王に助けてもらった後のアタルは、一度ライダーは虚構であることを受け入れた上で、それでも自分のそばにいてくれたからその存在は本物なんだ、という強い思いを持ちました。それに伴って存在が危うくなったビルドとクローズ、グリスやローグも復活しました。f:id:the-Writer:20190210095259p:plainライダーがTVの中の絵空事と思われている「現実世界」で、ティードは世界を滅ぼそうと無数の怪人たちを放ちました。襲われる人々は、特にライダーをヒーローとして知る人たちは強く願います。「助けて、ライダー!」と。この祈りともいえる強い思いがフリーエネルギーとして、フータロスの動力源になったら?人々からあふれ出る感情がフータロスの能力を増幅させ、破格の規模の「平成ライダー全員終結」が実現します。f:id:the-Writer:20190210095005p:plain理屈としては、何人かのライダーは『ジオウ』本編で描かれた通り「力」を失っています。しかし「現実世界」で一般人として生きるライダーたちに、「ライダー世界」から呼び寄せられ、「現実世界」でそのライダーを心の底から応援してきた人々の記憶に基づいて復帰した「力」が宿ることで、夢の平成ライダー20人揃い踏みが実現しました。ティード涙目f:id:the-Writer:20190210101730p:plain序盤に「現実世界」でアタルとソウゴが風麺でラーメンをすするシーン。あれはアタルがひょっこり「二人で一人の仮面ライダー」としての翔太郎とフィリップがやってくるという展開を期待していたのだと思いますが、やはりフータロスの限界により持ってこれたのはその「力」が込められたライドウォッチだった……と僕は解釈しています。それも、いざ怪人に襲われているときにリアルタイムで『W』を応援していたであろう年代の高校生たちが呼ぶと颯爽と「さあ、お前の罪を数えろ!」と出てくるのがまさしく仮面ライダーで良いですね。

f:id:the-Writer:20190210095910p:plainえー、さてこの世界の破壊者なのですが……。『ジオウ』本編第14話より通りすがったディケイドは『W』~『ビルド』の能力を使えるようになった状態であり、その証拠にバックルがマゼンダに染まったネオディケイドライバーを所持していました。しかし本作で登場した彼はドライバーが白いいつもの彼です。『平成ジェネレーションズFOREVER』が『ジオウ』本編ではどのあたりに位置するのかはよくわからないですが、僕の考えではこれは『ジオウ』本編を通りすがる前のディケイドであると思っています。いくつもの並行世界を「架け橋」であるオーロラを渡って旅するディケイドですから、恐らく『W』~『ビルド』の旅の最中にこの『ジオウ』の世界(=「ライダー世界」)から分岐した「現実世界」も通りすがったのでしょう。f:id:the-Writer:20190210102416p:plainライダーたちが最強フォームになったりしないのは嬉しかったです。大体同じくらいのレベルの基本フォームだからこそ、戦いに各ライダーの個性が出る。僕の解釈では召喚されたライダーは全員TV本編最終回後の彼らなので、様々な経験を積んだ彼ら一人一人が基本フォームで鮮やかに敵を倒してくと思うとこれまたカッコいい。そしてアナザーアルティメットクウガの倒し方は見事の一言に尽きました!例年のヒーロー大集合映画のように全員で一斉突撃方式ではなく、各ライダーの個性を入念に研究した結果のペアで見せ場を分散し、論理的な構成による必殺技の乱れうちが観ていて楽しい。

原典の頃から処刑宣告と名高い「ファイナルベント」の音声と共に龍騎ドラゴンライダーキックで先陣を切る、
ウィザードが飛び上がるとそれに合わせてキバも浮かび上がって暗転した背景を炎が彩る、
アギトと響鬼が紋章を足に吸収する予備動作を同時に行う、
怯んでいる隙にトライドロンを回り込ませ、スピードロップで足元を徹底的に攻めるドライブ、
…などといった具合に各々の個性が最大限に活かされた、怒涛の連続ライダーキック
を次々に受け、
クウガの繰り出したマイティキック、ジオウとビルドの繰り出したダブルライダーキックを挟み撃ちの形で叩き込まれて倒された。

出典:ティード/アナザークウガ(仮面ライダージオウ) - アニヲタWiki(仮) - アットウィキ

最後にシンゴくんが目を覚ました時、煙が晴れて姿を現していく平成ライダーたちを観て「わ~仮面ライダーだ!」と喜ぶシーンがまた……。 僕なんて新ライダーのデザインが発表されるたび、大抵「なんだこれ?!」と言ってしまうのにシンゴ君の純粋さよ……そういえば僕もシンゴの年位の時は、本当にあるがままに仮面ライダーを楽しんでいた気がします。仮面ライダーは、今やただ人類の自由と平和のために戦う戦士ではなく、みんなの心のそばにいる大切なヒーローなんですね。f:id:the-Writer:20190210120830p:plain

 

3.最後に

f:id:the-Writer:20190210095230p:plainf:id:the-Writer:20190210095029p:plain『平成ジェネレーションズFOREVER』は限られた条件で最高のものを作り出した熱意をひしひしと感じられる作品でした。長らく仮面ライダーといった特撮ヒーローから離れていた僕にあの頃の興奮をもう一度燃え上がらせてくれたほどです。今作は「平成ライダーとは何か」というテーマに挑み、それに見事に答えを(しかも公式側から)出してくれたというのが大きな軸です。しかしその脚本に込められたメッセージ性以上に、この映画に対する姿勢そのものが図らずとも「平成ライダーとは何か」という問いに答えを示しているなと。今作は過去のライダーたちを出演させるにあたり、仮面ライダー史上最高と言ってもいいほど創意工夫をもって挑んでいると思います。これを言ってしまうと興ざめかもしれませんが……クライマックスでの平成ライダー20人集結において、当時のスーツアクターの方を起用・セリフをオリジナルのキャストが新録・出演が叶わなかった場合はライブラリ音声を使用、といった具合にありとあらゆる策を講じて「全員本人」という理想を限界まで追求しています。f:id:the-Writer:20190210140527p:plainf:id:the-Writer:20190210140532p:plainぶち壊しなことを言うと、スーツの中に入っているのは演技をしている俳優本人ではなく、スーツアクターです。だから仮面ライダーを「虚構(フィクション)」だと断じるのはすごい簡単なことです。しかし、いざ戦う時に見せるいつもの動き。要所要所で上げる声や息遣い。本人の声による決め台詞。見慣れた姿。中に入ってるのは違う人かもしれないけど。f:id:the-Writer:20190210140116p:plainf:id:the-Writer:20190210141101p:plainまさに正体を隠すために仮面をまとい、専用マシンに乗って人知れず戦う。迷い無しに敵軍に戦いを挑むその姿を観て、ライダーを知る僕らは「あっ本人だ」と直感的に理解する。たとえ本人がそこにいなくても、ライダーがそこにいるんです。一見矛盾しているようですけど、本当に自分がよく見知っているライダーがいて、仮面の下の顔が見える気がするんです。だから僕はよく知らないライダーであるビルドの「俺たちはここにいる。今、ここにな」という言葉が次元を超えて伝わってきました。ターミナルで意味深な間を開けてモモタロスが「馬鹿野郎、俺たちもお前を、忘れるかよ」と言った相手が、良太郎だけではないように思えました。f:id:the-Writer:20190210141423p:plain↑ただの喧嘩好きなチンピラ赤鬼がいつしか皆に応援されるヒーローになった所を見せられて本当に感動ですよ……

 人々の思いに応えてライダーたちは駆け付けてくれました。それもみんなが知るようなヒーローとして、人々の声援を背に戦い続けました。そしてティードという超大物を倒した今、すべては元の日常に戻ります。ソウゴは元の「ライダー世界」に戻って不穏な予感もさせる覇道を突き進み、フータロスが去った今ライダーたちはまたもや「力」を失います。多分、ソウゴと同じく元の世界に戻った戦兎や万丈もいずれ例外ではなくなるでしょう。アタルは現実と向き合いはじめ、シンゴは元の時間に帰っていきました。僕は『仮面ライダージオウ』を最終回まで観るつもりですが、その後は仮面ライダースーパー戦隊を引き続き観るかはわからないので、もしかすると東映の特撮ヒーローはこれが最後かもしれません。一度ソウゴが映画中盤で経験した通り、すべてはあたかも「夢」だったかのように終わりました。

 

けど平成ライダーが終わろうとしている時に、もう一度だけ「夢」を見せてもらえて、あの情熱を味わうことができてよかったと真摯に思います。本当にありがとうございました……。