希望は、生きている。『ジャスティス・リーグ』ザック・スナイダー・カットの存在と進捗状況

『マン・オブ・スティール』『バットマンvsスーパーマン』に連なる続編にして、数々のヒーローが結集し外宇宙からの脅威に立ち向かう超大作『ジャスティス・リーグ』が去年11/23に公開されました(以下、MoS,BvS,JLと書きます)。

この3作を連続して監督したのはザック・スナイダー。そのじっくりとしたストーリーテリングや、いちいちキマッているカット、彼にしか取れない神話のような重厚な雰囲気には定評があります。なお、残念なことに数々の事情が重なり、ザック・スナイダーはJLより降板し、代わりに参入したジョス・ウェドン(『アベンジャーズ』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で監督・脚本を兼任)によってJLは一旦の完成を迎えました。

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しかしJLはウェドンによる大規模な再撮影・作曲家の交代・2時間以内に収められた上映時間、主にこの3つによりMoS,BvSからの連続性は薄まったものの、コンパクトで明るい作風の映画に仕上がりました。これに対して「オリジナルのザック版を見せてくれ」という声が相次ぐ事となりました。ついには署名運動まで発足し、現在17万人を集めています。今でも大勢のファンがいわゆる「スナイダー・カット」を求めている異例の事態です。

かく言う僕も前2作の大ファン。本来ならザック・スナイダーが3作連続して撮るはずだったMoS,BvS,JLはスーパーマンが中心に据えられていることから、一部ではザック・スナイダー・スーパーマン・トリロジーなんて呼ばれることもあります。

詳しく感想を書くのはまた別の機会にしますが、MoS,BvSと経て迎えたJLは気付けば終わっていた、そんな印象でした。作風は明るくなり、楽しい映画に仕上がっていたのは確かですが、少なくとも僕が求めていたものではありませんでした。JLは明らかに、製作・配給にあたっていたワーナー・ブラザーズが指示したてこ入れの影響が目に見えており、てこ入れ=上記3つの要因はJLを恐ろしくコンパクトなものにしました。ワーナー・ブラザーズによって手が加えられる前の純粋なザック・スナイダーによるJLが観たい。この思いは劇場で観た日からずっと持ち続けています。

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とはいえ「スナイダー・カット」という代物はそもそも存在するのか?という疑問があります。

ザック・スナイダーが2017年5月、家族の悲劇を理由に公式に降板を発表した時点で、純粋に彼によって作り上げられていたJLはどの段階にあったのか。公開後、ワーナー・ブラザーズからはスナイダー・カットに関する公式発表は一切ないものの、非公式ながらカットされた映像がぽつぽつリークされたり、内部に通じていると主張する人間がネット掲示板でスナイダー・カットは存在すると言ったり、VFXスタッフと主張する人間が存在しないと言ったり、情報は混迷を極めています。

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仮に映画として完成したスナイダー・カットがリリースされないでも、2時間以内に収める過程で大量に生じたであろうカットされた未公開シーン。せめてこれさえ映像特典として含まれればよかったのですが、現在発売されようとしている劇場版JLの映像ソフトに含まれるのはおよそ2分ほどのスーパーマンのシーンのみ。ザック・スナイダーによるトリロジー完結編を望むファンとしては生殺しと言わざるを得ません。スナイダー・カットを巡る情報は基本的にほとんどがワーナー・ブラザーズではない、非公式の匿名の情報なのですべてが全て真実とは限りません。この求めるものがすぐ目の前にあるようで手が届かない膠着状況。

 

そんな中、スナイダー・カットを観たいという熱心なとある人物からタレこみ、もといいくつかの貴重な情報提供をいただきました。一つは海外の映画関連を扱うニュースサイトScreenRantによる記事です。

「JLのザック・スナイダー・カットはあなたが思う以上に出来上がっていた」という題名が付けられたこの記事。1/28に投稿されたものであり、既に映画製作に携わったクルーによるSNSへの投稿などの確固たる証拠を基に、JLのスナイダー・カットが存在することを導き出していますが、それだけにとどまっていません。そのスナイダー・カットは製作段階における終盤まで来ていた、と述べています。スナイダー・カットを望む身としては、相当ありがたい情報です。そんなわけで、今回はここにその内容をかいつまんで記述しておこうと思います。

 

 

 

スナイダー・カットは既にピクチャー・ロックがなされている

まず、Veroの2017年2月17日、ザック・スナイダーによる投稿です。映画のポスト・プロダクションを請け負うCompany 3でステファン・ソネンフェルドとバットマンの戦闘シーンに取り組んでいることがわかります。このシーンは今見るとゴッサム・シティでのステッペンウルフの軍団との戦闘のようですね。

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さて、このステファン氏はJLにおいてデジタル・インターミディエイト・カラリストを務めた人物。映像の色調調整の担当にあたります。この作業はデジタル・インターミディエイトあるいはカラーグレーディングと呼ばれるのですが、なぜ重要なのかというと、この作業は普通ピクチャー・ロックの後に行われるからです。

ピクチャー・ロックとは、撮影された映像をとりあえずつなぎ合わせたものが、編集による整理・調整を経たもの。まだ視覚効果や音響効果はついていないですが、更なる追加シーンや編集される個所は無く、映像の編集自体は最終版である状態を指しているのです。よってこの状態なら恐らく、上映時間も決定していると言えます。映像学校時代からの旧知の間柄であり、ザック・スナイダーが監督する『ウォッチメン』『バットマンvsスーパーマン』で撮影監督を務めたラリー・フォンは、映像編集→色調調整というこの手順をTwitterで認めています。

その最終編集版は、オープニングの一コマ目からエンドクレジットの最後まですべて決まっていることになるそうです。

では、今回はその手順を踏まずに撮影した映像をすぐに色調調整に回した、つまり映像自体はきれいにつながった最終編集版は存在しないというケースはあり得るのでしょうか?ピクチャー・ロックよりも前に色調調整を行ったケースとしては、ベン・アフレックが監督・製作・脚本・主演を務めた映画『夜に生きる』があります。これは映画完成に先駆けて「こんな風にする」というヴィジョンを具現化するためのものでした。しかし、『夜に生きる』はALEXA 65(ちなみに6K)によってデジタル撮影されており、その日その日で色調調整が可能になります。一方、JLは35mmフィルムによって撮影されていたことが、今作で撮影監督を務めたファビアン・ワグナーによって確認されています

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これは『夜に生きる』のようにその都度その都度で、撮影した映像を先に色調調整しておくのではなく、撮影→編集(→ピクチャー・ロック)→色調調整、という手順をJLは踏んでおり、2017年の2月17日にはJLはピクチャー・ロックされていたことが導き出されます。この色調調整の作業は、2時間の映画ならおよそ10日ほどかかるとされており、ワーナー・ブラザーズの公式発表通り5月にザックがプロジェクトを離脱したのなら、それよりもずっと前に、ある段階まで製作が済んでおり、その次の段階の作業に移っていたことも考えられます。ちなみにソネンフェルド氏はJLの二度目の色調調整にも参加しており、彼自身がインスタグラムで10月に報告したところには劇場版の色調調整が終わったそうです(投稿されたシーン自体は、ザックが撮ったものであり劇場版からはカットされている)。

この色調調整が終われば、完成・公開まで残る作業は視覚・音響効果を加える作業ですが、ザックの監督下でそれもかなり進んでいたことが、ソーシャル・メディアへの投稿が裏付けています。

 

 

沢山のシーンでVFXはかなり進んでいた

記事の序盤に書いた通り、映画公開後にいくつかのシーンがリークされましたが、それらほとんどのシーンはVFXが未完成でした。ここから一部のファンが推測したのは、ジョス・ウェドンは6月に始まった再撮影よりも前からプロジェクトに参加しており、ザックにはVFXを完成させるほどの十分な時間が無かった、という事でした。しかし、今度はTwitterへのザック・スナイダーの投稿が相当な量のVFXが既に完成されていたことを示唆しています。

その投稿は、ジェイソン・モモア演じるアクアマンが水中を遊泳しているシーン。

しかし問題は映像中のスクリーンに映るアクアマンの映像ではありません。映像の最初、わずか1秒にも満たない時間一瞬映る文字列が、シーンの詳細を示しています。まず日付は2017/2/27。映画全体の色調調整が終わっていると十分考えられます。次に下の方に“DPX for final per request. Original submission not [見えない] –rious internal [見えない] review as proposed final.”文頭のDPXとは、デジタル・ピクチャー・エクスチェンジ・ファイルの頭文字であり、視覚効果とその色調調整(←やはりピクチャー・ロックが終わっている事を示す)に使われるもの。そして分の末尾にある”review as proposed final”、直訳すると「最終的に提案されたもののレビュー」となりますが、つまりザックがこのシーンの最終チェックを行っていることがわかります。

f:id:the-Writer:20180225193620p:plainf:id:the-Writer:20180225193633p:plainここから推測されるのは、このアクアマンがアトランティスを訪れるシーンのVFXだけを完成させた、というのも不自然なので、アクアマンのシーンが完成している=他のシーンもVFXが完成(あるいは完成が近い状態で存在)している事でしょう。

さて、リークされたいくつかのシーンはほとんどがVFXが未完成のものでした。よってスナイダー・カットは存在しても、VFXはほとんど完成されていないのではないか、という指摘の根拠になっています。しかし、これも恐らく覆されます。

f:id:the-Writer:20180225202942p:plainリークされたシーンの一つに、バリーが店内のような場所でスーツなしでスピードフォースにアクセスし、指一本でガラスを突き破り、目の前でスローモーションで起こっている交通事故に巻き込まれている、片思い相手のアイリス・ウェストを助ける、というシーンがあります。特にこの指でガラスに触れると、あたかも柔らかい素材であるかのようにガラスがグニュゥッと変形し、砕け散る……という印象的な個所なのですが、この個所はリークされたシーンではVFXは未完成でしたが、7月に公開された予告編にVFXが完成した状態で挿入されていました(劇場版からはカットされた)。f:id:the-Writer:20180225190512p:plain更に、サイボーグが雲を突き抜けて飛行するシーンも同様の流れであり、こちらは3月時点の予告編にVFXが完成した状態で挿入されていました。この事から、リークされた映像は視覚効果を加える初期段階のものであった事がわかります。

とはいえ、一連のシーンの一部だけがVFXも終わった完成状態で、予告編に挿入されるのもよくあることなので、その他の視覚効果を要する数々のシーンも全て完成している、とは限りません。しかし、相当な量のシーンが既に視覚効果を加える作業の真っ最中だった……というのは間違いないかと思われます。

 

ここまで、JLはピクチャー・ロックと色調調整まで済んでおり、視覚効果の作業も思っていたよりかなり進んでいたことがわかっています。では、音響効果はどうなのでしょうか?

ザック・スナイダーのVeroへの投稿によれば、1/27にワンダー・ウーマンを演じるガル・ガドットがADRを行っていることがわかります。ADRとはAutomatice Dialogue Replacement、訳すると自動台詞変換、要はアフレコです。

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1/27時点でガドットがアフレコを行っているのならば、残りのフォーリー(人物の足音やドアを開ける音などの環境音の事)の収録は既に終わっている事になります。アフレコはやはりピクチャー・ロックの後に行われる作業ですが、ここで日付にご注目ください。先ほど、2/17時点でピクチャー・ロックは終わっていると書きましたが、アフレコが1/27に行われていることを考えると、ピクチャー・ロックが終わっている時期は1/27以前まで早まりますね。

 

さて、このポスト・プロダクションでVFXの進行状況よりもはっきりしないのが、音楽。オリジナルの作曲家であるトム・ホルケンバーグ、またの名をジャンキーXLによるサウンド・トラックです。ジャンキーXLは、前二作の音楽を担当したハンス・ジマーとは師弟の関係にあり、2016年7月のインタビューでは、

「JLの作曲は大変です。BvSでは仕事を共にしたジマーと共に同じ問題に直面しました。キャラクターにはそれぞれ専用のテーマ曲があるものの、場面によってはその場面をサポートする音楽を流さなければならない。BvSでは専用のテーマ曲を流すのはワンダー・ウーマンのみにしました。もしスクリーン上に6人もいて誰か一人と戦ったりしてたくさんの出来事が同時に起こっているのだとしたら、その中から選び出すという作業が必要です。あなたがどう考えるかは自由ですが、音楽は常に映画をサポートする立場です。音楽はそれ単独ではなく、スクリーンで起こっていることをサポートする役回りなのです」

とジャンキーXLは答えています。

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そんな彼が、5月にジョス・ウェドンがプロジェクトに参入してきてその3週間後に解雇されるまで、JLの音楽の作曲や収録にどこまでこぎつけたのかは不明なままです。彼はゲイリー・クラーク・ジュニアと共に映画の主題歌であり、予告編でも流れたカム・トゥゲザーのカバーにも取り組んでいましたが、2017年4月にYoutubeの彼のチャンネルに投稿された動画によれば、同年の6月もしくは7月までは音楽の収録を行う予定はなかった事がわかっています。

その収録を行う予定だった6月(か7月)には、ジャンキーXLはザック・スナイダー共々プロジェクトを離脱しており、「予告編とかにジャンキーXLの音楽が一部使われているんじゃないか」といった予想も彼のTwitterで「インターネット上に出回っている『リークされた』音楽は私が作ったものじゃないですよ トムより」と公式に否定されています。

 よくある事として監督が映像の編集段階で、完成版がどんな感じになるのか確認するために、一時的に音楽をのせたうえでチェックする、というのがあります。つまりスナイダー・カットには部分的にでもジャンキーXLの既存曲、特に過去のDC映画からの流用が使われていることが推測されます。ジャンキーXLが曲を収録していない以上、彼自身が作曲もしくは収録に戻ってこない事には、ジャンキーXLが目指したものが必ず復元されるとも限らない、と念頭に置くことが重要です。

 

 

なぜザック・スナイダーはそこまで急いでいたのか

言うまでもないかもしれませんが、ここまで書いてきたことは全てワーナー・ブラザーズが表向きに発表してきたこととは対照的に違っており、最終的になぜあそこまでオリジナルからの大規模な変更の数々が加えられたのか。

今まではSNS上への投稿でしたが、これは噂になる事を念頭に置いてください。BATMAN-ON-FILM.comのビル・レイミー氏が言うところによれば、オリジナルのJLのラフ・カットは「見られたものではない」と、少なくとも一人の人物によって判断を下されたそうです。なお、彼が情報のソースを明かしていない事や、ラフ・カットのどの点が「見られたものではない」と判断されたのか不明なので、100%本当とは限らない事を改めてご了承ください。

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これが本当なら、それに伴って一定以上の脚本のリライト及び再撮影が決定されますが、なぜザックはピクチャー・ロックをあれほど早く済ませたのでしょうか?これに対する回答は、いつかそのバージョンが日の目を見ることに備えて、と考えられます。

ザック・スナイダーの撮る映画は常にクセがあります。「見られたものではない」は具体的にどの点を指しているのかは不明です。なお、ワーナー・ブラザーズCEOのケビン辻原氏の指示によって上映時間が2時間以内に収められましたし、ザック・スナイダーとクリス・テリオが書き、ジェフ・ジョンズが手を加えた脚本に、更にジョス・ウェドンが作風を明るくするために呼び込ました。そんなウェドンの元で行われた再撮影の映像もふんだんに盛り込まれる事となり、完成した劇場版のJLは(何度も書いていますが)明らかに全2作と比べて映像の色調が色鮮やかで明るく、2時間というコンパクトな長さです。これらの結果から逆算するなら、オリジナルのスナイダー・カットは劇場版よりも映像や展開のトーンが暗く(恐らく少なくとも序盤の雰囲気はBvSから直結している)、そして長かったと考えられます。

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そしてスナイダー・カットはいつかリリースされるという考えを強く後押しするのが、これまでの事例です。『ドーン・オブ・ザ・デッド』『エンジェル・ウォーズ』『ウォッチメン』『バットマンvsスーパーマン』これらは全てザック・スナイダー監督作品であり、公開後にいわゆる「エクステンディッド・エディション」がリリースされていますが、そのどれもが劇場版より高い評価を受けています。ザック・スナイダーが超特急でJLの製作を進めていたとしたら、後にこういったエクステンディッド・エディションのリリースを見越しての事だったのかもしれません。

 

 

 

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 以上、JLスナイダー・カットについて総括すると

確実な事 →ピクチャー・ロック、および色調調整、音響効果までは終わっている

不明瞭な事VFXと音楽の進行度合い

つまり、VFXと音楽が加われば、ザック・スナイダーが構想していた本来のジャスティス・リーグは完成することとなります。以上で、この記事を書くのに大いに参考にさせてもらった記事の内容は終わりますが、まだほんの少しだけ重要な続きがあります。

TwitterFacebook、LINEと比べればまだまだ知名度が低いSNSのVeroですが、最近のザック・スナイダーはこっちで活動していることが多いです。そのVeroで、スナイダー・カットのリリースへ向けて積極的な活動を行っているフィオナ・ゼーンさんが例の記事をurlを添付して投稿したところ、なんとザック・スナイダー本人がいいねしたそうです。普通、自分が途中で降板したプロジェクトで、降板までに舞台裏で起こっていた出来事についての推測記事にいいねを贈るでしょうか?監督であるザック・スナイダーが反応を、それも肯定的な反応を示している時点で、JLスナイダー・カットは確実にワーナー・ブラザーズのフィルム倉庫に存在し、それも製作は相当進んでいる状態で眠っているのです。

 

 

最後に

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さて、以下から完全に個人的な意見になりますが……

過去にワーナー・ブラザーズ製作作品において、当初の構想通り製作がかなり進む→諸事情により当初の構想からかなり違う形で完成・劇場公開→のちに当初の構想通りの作品を完成、ソフト化という作品があります。1980年に公開された『スーパーマンⅡ/冒険編』です(奇しくもスーパーマンが重要な役割を担う作品ですね)。詳しくは以下の記事をご覧ください。

スーサイド・スクワッド』でもワーナー・ブラザーズによる大幅な介入が噂されましたが、JLでは署名運動に参加しているだけでも17万人のファンがオリジナルのスナイダー・カットを望んでおり、実際にはもっと大勢の人間が同じ願いを持っているはずです。それだけ大勢が望むのなら、劇場公開でコケてしまったJLを後のソフトリリースで挽回とまではいかずとも、金のなる木をもう一本増やしておくのも悪くない話だと思います。劇場版とスナイダー・カットの2種類が存在すれば、JLを楽しむ幅が広がり、より大勢のファンがDCEUを楽しめるようになりますし。

現在のワーナー・ブラザーズでDC映画を担当する部門はメンバーが入れ替わりましたが、ソフト化及び再製作にどれほどの権限を持つのかは不明です。一度事実上の凍結まがいを行った作品を再起動させるのは当然ながら多額の金と人員が必要となります。それにJLは、興行収入においてDCEU作品群の中で最下位を記録することとなりました。ワーナー・ブラザーズがJLは完全に終わったものとして放棄するのか、それともスナイダー・カットのリリースで挽回を狙うのかは目下全く不明です。

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しかし、一般に向けて発売されるJL映像ソフトに、未公開映像を少しだけ含めているあたり、スナイダー・カットを願う身としては何かを感じます。監督主導で製作→スタジオがラフカットを見る→スタジオ「アカン」→スタジオ主導で再撮影、音楽含めて大幅に作り直し→公開という流れ、実はルーカス・フィルム製作の『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』がほとんど同じ経過をたどっています。そんなルーカス・フィルムは秘密主義でも知られますが、『ローグ・ワン』には未公開シーンを映像特典として全く含めませんでした。

一方のJLは未公開シーンReturn of the Supermanを含めました。じっくりとしたテンポ・MoSでジマーが作曲したスーパーマンのテーマ・MoSを踏まえた展開・スーパーマンとしての復活・最終予告にあったものの本編にはなかったシーン……合計2分程度ながら、特にMoS,BvSと追ってきた方には様々な重要な意味合いがくみ取れるものとなっています。

更に、これは明らかにスタジオが排除したがっていたザック・スナイダー成分100%のシーンです。ワーナー・ブラザーズが一連のDCコミック実写映画化計画において、JLはもう終わったものとしてみなしているのなら、ルーカス・フィルムがしたように、一切の未公開シーンを含めずに「そんなものはなかった」とシラを切ればいいだけの話です。もしくは『バットマンvsスーパーマン』や『スーサイド・スクワッド』がやったように、10~30分程度の未公開シーンを含めたものを「エクステンディッド・エディション」として出すのもアリでしょう。それを、それもわざわざザック・スナイダーによるシーンをティーザー的にちょびっと含めるあたり何か思惑があるのでは、というのは考えすぎでしょうか。

ジョス・ウェドンが大いに手を加えたJLの劇場版のBlu-ray&DVD(通称:円盤)は米国では3/13発売、日本では3/21発売です。スタジオが仮にスナイダー・カットをリリースするつもりでいても、さすがに劇場版の円盤が売り出される前に大勢のファンが待ち望むスナイダー・カットを「リリースするよ!」なんて言うとは思えません。そんなこと言った日には「じゃあ3月の円盤は買わない!」なんてなって売り上げがた落ちですからね。「スナイダー・カット観たかったけど、これでもいいかぁ」なんて妥協して買ってくれるファンも見込みつつ、スナイダー・カットに関しては一切発表をせず、劇場版を販売。ある程度売れたら、その後にスナイダー・カットをリリース……というのがワーナー・ブラザーズが秘密裏に計画しているのではないでしょうか?

現に、このDCEU(DCFU?)で劇場版にカットされたシーンを追加した延長版を販売したケースは4件中2件、『バットマンvsスーパーマン』と『スーサイド・スクワッド』です。ただし、BvSは劇場公開からわずか5日後、カットされたJLに繋がる重要な伏線シーンをYouTubeに公開しており、非常に積極的な動きを見せていました。

また、BvSとSSは延長版が販売されたのは共に、劇場公開からおよそ4か月後、通常の劇場版と同日発売です。JLスナイダー・カットが一般向けにリリースされるのはいつになるのか……

似たようなケースとして先に挙げた『スーパーマンⅡ』ですが、これは途中で降板したオリジナルの監督であるリチャード・ドナーが戻り、監修を務めています。ならば、ファンが望むオリジナルのスナイダー・カットを一番よく理解しているのはザック・スナイダー本人に他ならず、彼の帰還は不可欠です。しかし、彼は愛娘が自殺で亡くなるという悲劇に見舞われており、残された家族とともに療養の時間は必要です。僕はスナイダー・カットは一刻でも早く見たいことは確かですが、家族との時間を捨てさせてまでザック・スナイダーにJLを続けてほしくありません。また、去年2017年10月時点でのザック・スナイダーの活動予定は、

予定としては、次回作の映画のポストプロダクションに入るころになると彼は語っている。その次回作は、元々は『300 <スリーハンドレッド> 〜帝国の進撃〜』の公開直後に制作を開始した『The Last Photograph』というドラマになる見込みだ。また彼は、依然として近日公開される多くのDC映画の製作責任者であるが、当面は脚本の執筆や『The Last Photograph』の制作準備が仕事の大部分を占めるだろうと語っている。

しかし、『ジャスティス・リーグ』についてはどうだろうか? ウェドンが引き継いだ際に、スナイダーはスーパーヒーローの団結を有能な人材に委ねたが、彼自身はまだ関わっているのだろうか? 少なくとも目をかけているのだろうか?

そういうわけでもないようだ。映画制作から長らく離れたあとにまた彼が関わることは、「あらゆる点で不公平になります」とスナイダーは語る。「わたしは『ジャスティス・リーグ』にワクワクする立場にありますし、仲間と一緒に喜んでいます。制作に取り組んでいる人々が大好きです。彼らはわたしの家族であり素晴らしい仕事をしてくれていると思います」とスナイダーは語る。「わたしはただ、製作陣には自分の仕事に集中してもらいたいんです」

出典:なぜ映画監督のザック・スナイダーは「iPhoneだけで撮影した」短編作品をつくったのか?

となっています。願わくばジャンキーXLにも戻ってきてもらいたいですが……例えJLのスナイダー・カットを復活させる動きがワーナー・ブラザーズ内にあったとしても、それを目にする日が来るのはまだまだ先のように思えます。

詳しくはまた別の記事に書きますが、僕は劇場版も嫌いではないです。むしろ「ジョス、めっちゃいいシーン撮ってくれたな(*゚∀゚*)=3ムハー!!」というシーンもいくつかあります。しかし、オリジナルのJLは3時間近くもあったとされ、劇場版に色々なものが欠如していると感じた方には十分といえるレベルでしょう。作中で描かれたイベントを適切な規模で楽しむなら、スナイダー・カットがベストであると思います。まずは、3/13まで待って。そこを第一通過点として、とにかく希望を持って待とうと思います。

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色々書きましたがかなりの部分が推測で成り立っており、「そんなわけないじゃん」と思う方もいるかもしれません。なお、その推測は確かなソースなどの証拠から成り立っており、製作に携わった関係者もそれを認めています。ザック・スナイダーや、DCEUに深く携わっており、ザックとは親友の写真家クレイ・イーノスは”Never Compromise”と投稿していました。僕は信じます。

また、ここまで読んでくださった方々の多くは僕と同じくスナイダー・カットを望む方々であると思います、ありがとうございました。そして最後に一つ、お願いがあります。特にSNSをやっている方、是非ともこの記事を、JLのスナイダー・カットの存在を広めてもらいたいのです。署名運動が行われるなど、姿勢が非常に積極的な海外に対して、日本のファンの方々にはこういった「本来こうなるはずだった」JLに関する情報があまり知られていないように思えます。スーパーマン・トリロジーの正当な完結編であるスナイダー・カットを観たいと願う日本のファンの方々にも、この情報は知られる必要があります。

また現在そのスナイダー・カットは具体的にどんなもので、どんなシーンが存在するのか?という記事を鋭意執筆中です。近日中に公開いたしますのでそちらも併せて読んでいただければと思います。

追記:書けました!よろしければどうぞ~f:id:the-Writer:20180225191351p:plain現時点ではリリースされるかはわかりませんが、少なくともオリジナルのJLは確かに、製作がかなり進んだ状態で存在します。ワーナー・ブラザーズからは一切の発表がない中、心細い状況ではありましたが、それだけでもかなりの希望が持てるのではないでしょうか。JLは、スーパーマンと同じくきっと元の姿を取り戻して復活します。あきらめるのは未だ早いです。希望は、生きています。

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