カイロ・レン考察Ⅱ~「罪」~

以前のカイロ考察記事、あれで完結かのような終わり方をしましたがそんな事はありません。続きます(`・ω・´)シャキーン

前記事である『~不気味な怪物か、見捨てられた子供か~』を投稿した後、無性に『エピソード7』『エピソード8』が観たくなりました。一応自分が書いた内容が正史である本編と抵触しないかという検証も大きな目的ではありましたが、ガッツリ楽しみながら最後まで見てしまいました……。前記事にはカイロに関する僕の考えを取捨選択して色々詰め込んだのですが、その中で敢えて欠けさせていたものがあります。それはタイトルに書いた「罪」です。

実はそれについても一度は書こうとしたものの、最終的にカットする事にしました。やはり記事の方向性がブレる危険があったんですね……。また、一本の記事にまとめてしまうとカイロ・レンに対する見解の幅を狭めてしまうとも感じたので、伸びしろとなる余地を残しておこうというのもありました。この罪と言う点に関しては、前回以上に議論が分かれる内容になると思います。それどころか、カイロ・レンというキャラクターに対する考えが180度正反対になる重要な分岐点かもしれません。前回はカイロ・レンの過去を徹底的に追及し、謎めいた人物である彼にできるだけ寄り添うことで彼への理解を深めようとしてみました。今回は彼の所業へも焦点を当てることで、僕のより個人的な意見を書いていこうと思います。まとまりのない感じになってしまいますが、それでも良いという方のみ読み進めていただければと思いますm(_ _)m

 

カイロ・レンとしての罪

新たなる悪の尖兵として、漆黒の衣装・赤い光刃のライトセーバー・暗黒面のフォースを使いながら、どこか不自然におぼつかない一面を見せるカイロ・レン。ダース・シディアスダース・ベイダーの跡を継ぐ悪役として(例えばベネディクト・カンバーバッチのような)また新たなるカリスマ性と冷酷さを併せ持つ人物を期待していると、アレ?と予想を裏切られるキャラクター造形です。僕は、「そもそも彼が悪に転向したのは彼が育った環境がどうしようもなく不幸なものだったから」「最終的に、彼は救われてほしい」と論じました。とはいえ、それを書いている間もずっと脳裏にあった疑問がありまして……。

「じゃあ、彼に虐げられた人たちはどうなるの?

f:id:the-Writer:20181210094744p:plainやはりそうなんですよ、彼が育った環境は実は云々~といった話は応用的な内容であって。映画本編を観ていると、彼は理不尽に人々に苦痛を強いる悪役(怪物)なんですよね。ここで改めて、『エピソード7』初見時の原点に戻ったつもりで彼の罪状を書き出してみます。

・ロア・サン・テッカの殺害

・ジャクーの村の虐殺

・新共和国首都の壊滅(に間接的に関与)

・マズの酒場への襲撃作戦を先導

・レイの精神を同意なく暴く

ハン・ソロの殺害

人によっては「これ以外にも罪はある」と言うかもしれませんが、僕がぱっと思いつくのはこの程度ですね。
ここで僕の言う罪とは何なのか、定義すると「相手の人権を侵害する行為全般」です。少し平たく言い換えると、「同意なく相手に苦痛を強いる行為」ともなるでしょうか。生まれた時から誰もがもっており、誰にも侵されず、意義ある人生を自由に送る事ができる権利……それがここで意味する人権です。それを侵害する手段が暴力であり、その内容が罪なのかな、と思います。

f:id:the-Writer:20181210183841j:plainそれが顕著なのはジャクーの村の虐殺・フォースによるレイの精神への侵入ではないかと。前者は何もしていない無実の村人達の命を唐突に奪い、後者はレイが誰にも明かしたくない(自分ですら向き合いたくなかった)秘密の数々を暴いています。
前記事では『エピソード7』,『エピソード8』劇中のカイロの行動を逐一考察(精神分析紛いとも言う)してみました。彼はスノークに付き従い、悪の道を選んでいます。度々葛藤に悩みながらも、悪を続ける彼に大きく影響を与え、変化の可能性を芽吹かせたのはレイとの接触です。しかし彼は最終的にまたしても悪の道を突き進むという決断をしました。悪役なのに色々迷っている未熟な人物……それがカイロの特色の一つです。僕の意見なのですが、カイロは度々良心の呵責に苛まされながらも、結局は変わっていないのではないかと思うのですね。

f:id:the-Writer:20181210182342j:plain理不尽に苦しめられ、虐げられた過去。できればそれを糧に自分は絶対にそうはならない事を決意し、人の人権を尊重し、善き人物として生きるよう日々努力するというのができれば最高ですよね。それが理想です。しかし彼の場合は、虐げられてきた鬱々とした怒りに突き動かされ、結果大勢の人々を苦しめる選択をしました。

なお、苦しめられた過去=人を苦しめて良い理由にはなりません。身近な例えだと荒んだ家庭で育ったいじめっ子でしょうか。家庭で愛を受けられない、安心できる居場所がない……それは自分の楽しみのために人を傷つけていい免罪符ではありません。やってしまった事はやってしまった事として、然るべき対応を受け、罰を受ける必要があります。
ならばつまりカイロ・レンは自分の意思で悪を選び、人々を苦しめている。負の過去を生きたにもかかわらず、それを人にも強いる怪物である……とも言えます。しかし、なぜか僕はそこまで断じる事ができないんですね。

家庭環境などの悲惨な過去によって、悪の道を突き進んだ悪役は他にもいます。『エピソード1』〜『エピソード6』まで諸悪の根源として暗躍したダース・シディアス。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のサノス。『ハリー・ポッター』シリーズのトム・リドル。『バーフバリ』シリーズのバラーラデーヴァ。『LOOPER/ルーパー』のシド。彼らは全員、過去の経験を経たうえで自分の意思で悪を選び、その決断をまるで後悔していません。しかし僕の意見ではカイロは彼らに属していません。ならば彼らとカイロを隔てるものは何なのか?

 

ベン・ソロ救済のために

僕は可能性だと思っています。

カイロ・レンは複雑なキャラクターです。光と闇、善と悪が危ういバランスで混ざり合っておりどっちつかずな状態です。善というには罪を重ね過ぎている、悪というには迷いがある。先ほど彼は自分の意思で悪を選択した、と書きましたが果たしてそうでしょうか?
人の意思……これは本当に判別が難しい、人によって解釈が分かれるところですよね。僕はひたすらカイロの不幸さに着目する解釈です。長い年月をかけて彼の中に蓄積していった誰にも向き合ってもらえない悲しみや怒り、願いが届かずに何も変わらない無念、それによって藻搔いてきた苦痛。f:id:the-Writer:20190102145348j:plain普通、自分の決断とは自分の意思に基づいているものです。しかしそれに至るまでにどれほど他の人、環境の影響があるのかは計り知れません。現実世界に生きる僕ら一般人でさえそうなんです。フォースという霊妙な力が存在するお伽噺の銀河で、英雄の血を受け継ぎ、それでいて一人の人間として蔑ろにされてしまっていた少年への影響はより顕著だったのではないか、と思います。痛みを感じ、ひたすら救いを求めるベン・ソロの心はいつしか麻痺し、希望にすがるのをやめ、カイロ・レンの仮面をかぶることで、その蓄積した恨みを発散することにしました。しかしその仮面の下に、まだベン・ソロが閉じ込められています。

ベイダーを連想させるそのヘルメットを脱ぐと、目は潤み、くちびるがプルプルと震える怯えた少年がいます。その少年はいつも、信頼して自分の親になってくれるはずだった存在に見捨てられ、自分が存在する意味を見失う、その恐怖におびえているのです。f:id:the-Writer:20190102145926j:plainその彼が下す決断に、彼にはどうにもならない環境がどれほど影響しているでしょうか。つまり、彼の意思の主導権はどこまでが自身にあるのでしょうか?確かに上記で挙げた悪役にも、この疑問は適応されます。環境に心を歪められ、従って下す決断も同様に歪んだものです。しかし僕には、彼らは元々あった本当の自分を覚醒させ、自分の信じる道を突き進んでいるように思えるのです。対してカイロはスノークすら殺してなお、まだ目に見えない足かせを引きずっているように思えます。その足かせを引きずっている彼こそ、自分出そうだとは気づかない・あるいは認めたくない本当の彼……ベン・ソロです。ハンやルークの殺害、彼が長年引きずってきた思いを断ち切る決断をしたカイロの顔は、満足げなものではなく「やっと終わった」と言わんばかりでどことなく頼り気がない、そんな顔に見えます。

確かに彼の人権は侵害されました。ですが、その受けた痛みは他の人権を侵害する原動力ではなく、他の人権を守るための原動力にするべきでした。スノークにある程度操られていたとしても、やはり罪は罪ですからね……。まず彼は罪を償わないといけません。彼が悪事を働くのを見るたびに、無力感というか非常にやるせなくなります。「どうしてこうなってしまうんだ……」と。しかし人は変われる。僕はそう思います。生きている限り人は変われるチャンスがあります。そしてカイロにはその可能性がある、と。今は無理でも、信じて歩き続けることはできます。その身をもってそれを示してほしいですね。

さて、それはそもそも可能なのでしょうか?彼は自分の犯してきた罪に向き合えるでしょうか?

SWでは、希望は常にそこにあるものです。人は、それもより良い方向へと変わることができます。SWは概して見ると悲劇の傾向が強いです。しかし邪悪や暗黒の大波がすべてをさらい、どうしようもないとしか思えない時でも、決して潰えない希望の種がありました。だからこそ、全てが悪役の思惑通りに進んで味方が次々に倒れていった『エピソード3』のラストも感動し、明日への希望を見出せるのだと思います。

f:id:the-Writer:20190103142258j:plain『エピソード8』の主要テーマと言うか、大きな特徴として「失敗すらも受け入れ、肯定する」というメッセージがありました。これはグランド・ジェダイ・マスターのヨーダの口から弟子のルーク・スカイウォーカーへと受け継がれた教えです。人が何か目標に向かって進み、つまずき、くじけたとしても、それを否定するどころか受け入れるという重要な教えは、過ちも犯す登場人物たちが絡み合うドラマ、そして『エピソード8』に続いてきたSWの物語を一層面白くしています。『エピソード1』からずっとおり、シスの見えざる脅威に気づかず、旧態依然としたジェダイ・オーダーと共に1万年も続いた銀河共和国の崩壊を許してしまった責任がある、ヨーダの口から語られることで非常に大きな説得力と包括力を発揮した教えでした。もしも、この「失敗こそが最良の師」という教えがベン・ソロのことまで言及していたとしたら?今は大きく道を誤っているが、彼が戻ってくる未来すら示唆しているのだとしたらどうでしょう?クレイトの反乱軍基地で、ルークがレイアに告げる「私には救えない」「誰も真にいなくなったりはしない」という言葉にまた違った説得力があります。

ここで、僕が「かつて悪の思想に疑問をまるで覚えず、都合よく悪の手先として使役されていたものの、その後は改心して自分の罪を償うために戦い続けるキャラクター」として連想した人物がいます。

 

作品が全く違うのですが、『仮面ライダーW』。

f:id:the-Writer:20190102205737p:plain主に2009年に活躍した仮面ライダーで、とある町・風都を守る私立探偵の左翔太郎と相棒フィリップが変身し、日夜怪人と戦う「二人で一人の仮面ライダー」です。この作品でカギを握るのはUSBメモリ型のアイテム「ガイアメモリ」で、敵味方双方に超人的な能力を与えます。実は正義の味方・仮面ライダーとして活躍するフィリップ(写真左)こそが元々「悪の組織」にあたる園崎家に属していた人物でした。f:id:the-Writer:20190103104517j:plain数々のガイアメモリを自身に備わった特殊能力を使って開発していたのです。このガイアメモリ、手軽に超人的能力を与えてくれるので自身の欲望に歯止めが利かなくなり、平然と倫理的な一線を越えることも厭わなくなる危険で麻薬的な道具なんですね。それらを園崎家が風都に流通させることで数々の犯罪行為を誘発していました。当のフィリップはずっと園崎家に監禁同然の「養殖」状態だったので、ひたすらガイアメモリの神秘の探求に夢中になっており、罪悪感というものは持ち合わせずに園崎家にいいように利用されていました。そこにある夜、未だ見習いの翔太郎と師匠にして名探偵の壮吉(写真右)が乗り込んできたことで、Wとしての物語が始まったのです。f:id:the-Writer:20190103104634j:plainここで壮吉はフィリップがずっと必要な情報を与えられずに健全な成長をしていないことを察します。彼に「フィリップ」と言う名前と自分で決断を下して生きることを教え、園崎家から彼を脱出させました。『仮面ライダーW』とは、フィリップ視点では彼が罪を償うために仮面ライダーとして戦い、翔太郎と唯一無二の相棒関係を築き、人間性と自分の人生を獲得していく物語だった……と言えると思います。

 

さて、カイロ・レンに話を戻します。彼は罪をどうやって晴らしていくのか。そこは全くわからないですね……謝罪会見?右腕を切り落とされる?レイにビンタ&説教をしてもらう?適当です、ハイ。とにかく僕は『エピソード9』で彼には救われてほしいです。しかし、その前に罪を償う必要があります。

前記事で『エピソード9』で彼が迎える結末を書きましたが、もっと詳しく書くとこうです。生き抜くことで、自分の過去を受け入れる・自分の過ちを認める・誰かに受け入れてもらう…この3つが僕が考える結末であり、そうあってほしいと期待してしまいますね。

このままいくと、次作での彼の死亡フラグが濃厚なのが不安です。一番ありそうなのは普通に悪役としてレイに倒されるパターン。次に自分が犯してきた数々の罪を悔い、償うために命を落とす___祖父のベイダー/アナキンと同じ道筋ですよね。確かに今までの自分の罪と過ちを認め、死にゆく瞬間に本当の自分へと帰還する軌跡は非常にドラマチックですし、一応スッキリ片付く展開ではあります。

f:id:the-Writer:20190102162444j:plain(↑サンディエゴ・コミコン2018のルーカスフィルムブースにて発売された、アーティストのRussel Walks氏が描いたポスターだそうです。『エピソード9』公開後に出るであろうスカイウォーカー・サーガのポスター完全版も楽しみですね!)

なお僕は前記事でアナキンとオビ=ワン,ベンとルークの師弟関係は非常に似通っていながら、一つ決定的な点があると書きました。それは、師が弟子を見捨てていないことです。『エピソード7』,『エピソード8』は過去作と展開が非常に似ている点が指摘されています。しかし僕は作品を非常に注意深く研究してみると似通った展開の中に根本的に違い、新しい何かが潜んでいるように思えるのです。つまり、SWの創造主であるジョージ・ルーカスが直接手掛けてきた『エピソード6』までのサーガの歴史を繰り返しているように見えながら、時を経て確実に何かが変化しており、より良い方向へと進化しつつある……という風にとらえられないでしょうか。

僕にとって、カイロ・レン及びベン・ソロは「少年」です。現時点での彼はいまだに過去の呪いを背負ってそれに苦しみながら生きており、真に自分の意思で生きる人生はまだ始まってすらいないように思えるんです。『エピソード9』で彼が死亡するのなら、それはそれで受け入れます。それがウィルズ銀河史に記録されているスカイウォーカー・サーガなのですから。なお、今の僕としては彼が生き延びることで、これまでの過ちを清算し、変わり、新たなる旅路を歩いていくことを願っています。それは今まで拠り所だったベイダーの影・アナキンの軌跡からの独立であり、スカイウォーカーの血を真の意味で受け入れつつも自立することでもあります。f:id:the-Writer:20190103155326j:plainスカイウォーカー家の重大な素養として、フォースの強大な潜在能力があります。彼本人が本当にそう望んでいるのならば全く構いません。しかし、その血筋に生まれてしまったから・周りがそういう風に扱ってくるから、という理由ならば「フォースのバランスを担う者」という役割は重荷でしかないのではないでしょうか?なおその座は既に『エピソード7』の時点で脅かされています。そのスカイウォーカーの血以上の潜在能力を秘める女性・レイは、スカイウォーカーと関係ないどころか、どこの有名な血筋でもありません。カイロがスカイウォーカーの血筋が秘める力ゆえに招いてしまう、望まぬ災いにもう苦しまなくてよくなるのです。彼が「望まぬ重荷から逃れたい」という願望は僕の妄想かもしれません。が……『エピソード8』のあるセリフがそれを示唆しているような気がしてなりません。f:id:the-Writer:20190103144936j:plainスノーク、スカイウォーカー、シス、ジェダイ、反乱者共も、全部死なせてしまえ」この後に続くセリフは、彼が今まで誰にも愛してなかった・認めてもらえなかったという感情からくる復讐ゆえ……と言う風に前記事で書きました。ならば「古いものは滅びるべき」という旨のセリフは自分の意思に関係なく、自分に特定の何かになることを強いてくる圧力から逃れたい、自由になりたいという無意識の願いが口をついて出たのではないか……と思います。思えば『エピソード7』での「この痛みから逃れたい」という吐露にも繋がりますし、名前や地位ゆえの重荷に耐えられないというのは一度は失踪したルークとも同じ苦しみですよね。

『エピソード9』ではカイロはレイと共闘し、新たなる敵を倒す。そしてレイア,ランド,レイらの尽力によって改心を決意し、ファースト・オーダーを辞める。彼は自分の罪を心の底から後悔することでどうにかして償うことを決意し、独りで銀河中を放浪の旅に出ることにする。「ソロ」の旅であるが、今までと違って彼は自分を愛してくれる存在を認識し、初めて自分が安心できる居場所を得た喜びをかみしめる……という展開とか。完全に僕の妄想なんですけどね(´・ω・)y-~~ドウナルコトヤラ

 

カイロ・レンに対するより個人的な感想

僕はカイロを「過去は過去。彼は自分の意思で悪を選んだのだから仕方がない」と割り切ることができません。ましてや敵として憎むことも。彼の悪行へ立ち向かい、止めなければいけないことは確かですが、彼本人への敵意はまるで湧かないんですね。だから僕にとってカイロ・レンとは「悪」ではなく、「悪役」なんですね。f:id:the-Writer:20190103154817j:plain悪の役・立ち位置にいるのであって彼本人が悪とは断言できないんです。だから見捨てたくない。カイロ・レンは自分の正義や目的に突き進む英雄ではなく、孤独な少年なのだと思います。彼が悪事を働いていても怒りはまるで燃えず、やるせないですしただひたすらに止めたいと感じます。説教をしてその殻を破りたい。彼が幸せそうにしているところを見たい。彼は今まで激しく怒り、怯えることはしてきました。その無機質な表情をぐしゃぐしゃに崩して、思いっきり笑い、ボロボロ泣いてほしいです。彼を見捨てられないのは、無下に虐げられた恨み・誰かにそばにいて欲しいという切なる願いこそカイロ・レンだから。彼を否定できないのは自分の中にもまたカイロ・レンがいるからなのかもしれません。

(↑こちらのツイートに無茶苦茶頷いてしまったので引用させていただきました)

「導きによっては善人ですら悪人になる」……アナキン・スカイウォーカーの物語で見られたこの現象がここにきてまた見られるとは思いませんでした。確かに自分の意思でジャクーの無実の人々を虐殺し、理不尽にレイの秘密を暴く事で苦しめています。これらの罪は許されるべきではないですし、裁かれるべきです。しかしその行動原理を紐解いていくとこれまた複雑です。本当にこれがやるせない。以前の過去記事に書きましたが、わかりやすい善と悪の対決ではなく、一人の人間と人間のぶつかり合いなのが、この物語を非常に深みのあるものにしていますよね。

 

f:id:the-Writer:20190103151959j:plainあと、やはりカイロ・レンは悪役として未熟ですがその描かれ方のせいでシリアスな笑いを誘う……というのも僕を惹きつけてやまない理由であると思います。愛され要素でも言いますか。癇癪でライトセーバーを振り回しちゃいますし、マスクを着けている時とない時では立ち振る舞いに差が出ているのも親しみを感じてしまいます。確かに僕も日常生活でカゼの予防目的でマスクをつけていて、人と話す時はやはり相手に顔を見せる必要のない安心感を感じたことを覚えています。f:id:the-Writer:20190103155012j:plain(↑伝説の名シーン「衛兵、衛兵」)

フォースはやたら強いのに、剣術ではイマイチなのもまたよろしい。一ストームトルーパーに思いっきり肩を切られますし、レイに至っては途中まで押していたのにそこからは急降下でフルボッコですもん……その癖ライトセーバーを回す時の動きはやたらカッコいい。しかもスノークにボコボコにされた(多分全観客が思っていたこと)のを叱責されると深く傷つきますし。これまた親しみやすいですね。ダークサイドに転向した際にはお爺ちゃんにあこがれてマスクを新調するくらいなので、恐らく割とオタク気質があるのかもしれません。f:id:the-Writer:20190103154243j:plain(↑ネットの拾い画像です。構図が素晴らしいwwww)

ダークサイドの戦士としてカッコよく見えるために色々考えて、わざわざ衣装をボロボロ気味にしたり、ライトセーバーは古代のクロスガード型にしたり、セーバーをカッコよく回す練習もしたんでしょう。セーバーで戦う訓練そっちのけで。そのくせ、いつも脱いだマスクをドンッと置く灰は殺した敵の遺灰だそうで……ドン引きレベルの悪趣味さですね。レジスタンス艦隊の追撃で愛機のTIEサイレンサーに乗り込んだ時はマスクを着けていないですが、そのせいか声が若干震えている感じ何も良い。あのドスが聞いた低い声にしてくれるボイスチェンジャーがないとちょっと自信がないんですかね。あと力勝負で追い詰められると決まってフゥゥゥーーーッッッ!!!という声を出すのも良いですね。

(↑あるあるネタでカイロ・レンへの共感が深まるかも……?!前記事でもカイロ・レンを描いたコメディ漫画を引用させていただきましたが、本当どれもこれも秀逸なのでお目にかかることができて幸運です)

すごい勝手な想像ですけど多分この人、電車で座っていて目の前にお年寄りが来た時の胸中の葛藤がすごいタイプですよ。あるいは目の前を歩いている人が何か落とし物をした際、その時は思わず声が出なくて夜まくらに顔をうずめるタイプかもしれません。SNSでのアイコン画像はベイダー。もしくは中学の卒業アルバムで(ry

「残念な悪役」っぷりがたまらないのがカイロ・レンくんなのですね(`・ω・´)

 

 

 

f:id:the-Writer:20190103151905j:plain……はい、最後カイロ・レンを愛でる感じになってしまいましたが(;´・ω・)

彼がしてしまった事はしてしまった事として最早変えることはかないません。それによって傷つけられ、大切な人を奪われてしまった人が、銀河にはまだ大勢残っているのですから。まあこれだけ議論ができるのですから、カイロ・レンとその近辺とはなんと豊かな土壌な事かと実感せざるを得ません。何だかひたすら同じことを繰り返しているようではありますが……彼には『エピソード9』で生存・贖罪・和解・仲間という「救済」を享受してほしい、それが今の僕の望みです。そのためにも、自分がしてしまったことを心の底から悔い、その上に自分が進むべき道を見つけてほしいなと思うのです。