「とびらあけて」は傑作です

『シンデレラ』『白雪姫』『ピーターパン』『リトル・マーメイド』『くまのプーさん』…… ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが作り続けてきたアニメーション作品は、時代を超えて大勢の人々にインスピレーション、メッセージを与えてきました。

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そんな中で、「ディズニー・プリンセス」というくくりが存在しますね。そのままとれば、ディズニーが創り出してきたお姫様たちの事です。シンデレラ, 白雪姫, オーロラ姫などが特に顕著ですが、清純で心優しく、美しいお姫様が何らかの危機に陥った時、王子様が颯爽と助けに来てくれる……(コアなファンの方々から怒られそうな書き方ですが)。初期のころに製作された作品群のプリンセスたちは、その性格・行動を持って僕らに普遍的なメッセージを伝えてくれますが、近年はそういう「受動的な」姿勢を打ち破ろうという姿勢が見られます。インターネットの発達もあり、世界中の人々の交流が盛んになるこの情勢で、これまでの伝統的な様々な枠組みを壊そう、もっと自由になろうよ、という動きがいたるところで起こっています。

さて、ディズニーのアニメ作品で最もヒットした作品は何でしょうか?

 

アナと雪の女王』です。

アメリカ本国は2013年11月27日、日本では翌年の2014年3月14日に公開されました(原題は"Frozen")。

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アナ雪という略称でも親しまれている本作品ですが、特に大好きな一本です。

僕は小さいころからディズニー作品に囲まれて育ったのでなじみは非常に深く、なんとなくディズニー作品が持つ雰囲気や世界、その温かみを肌で感じていました。その記憶が時々フラッシュバックのごとく蘇ったりしますが、非常に心地よいものです。

そして『アナと雪の女王』をも観た時、「こ、これは正統なディズニー作品だ……!」と直感で感じました。家族愛、認め合うことの大切さなどのメッセージはもちろん、作品が持つ雰囲気が僕がディズニーに慣れ親しんだ感覚、感じたことをビビッと思い出させてくれたんですね。

アナと雪の女王』には、鑑賞済みの方ならご存知の通り、"Let it go"「ありのままで」以外にも数々の名曲が入っています。その中で僕が特に気に入っている曲が、"Love is an open door"「とびらあけて」なのです。

 

 

「とびらあけて」の魅力

アレンデール王国の戴冠式の日。女王であるエルサと、その妹であり姫のアナは、エルサの戴冠式のパーティーに参加します。するとアナは、日中偶然出会ったサザンアイルズ王国のハンス王子と再会します。夜の誰もいない窓辺に腰かけ、二人は上に兄や姉がいるゆえの境遇を打ち明け、意気投合……

そうして始まるのが、このアナとハンスのデュエット曲「とびらあけて」ですね。


この曲は本当に大好きでして。iphoneで何回再生したか数え切れません(もしかして3桁行ってる?)。デュエットならではの、歌う2人が織りなす「歌」が良いんです。なので時々youtubeニコニコ動画で、いわゆる「歌ってみた」という一般人が歌っている動画をあさったりします。

そういえば、『アラジン』で有名な"A Whole New World"「ホール・ニュー・ワールド」が世界中で大ヒットし、アカデミー賞を受賞していましたね。言うまでもなく、大好きなデュエット曲ですが、「とびらあけて」はそれに匹敵する……それほどに好きなのです。

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一番好きなのは原点にして頂点の原語版でしょうか。このアナ役のクリスティン・ベルと、ハンス役のサンティノ・フォンタナの相性が最高で、その2人が歌うメロディは唯一無二、最高の一曲です。実際、後に彼女らが何らかのライブ?で歌った時の歌を聴いたのですが、「この劇中のバージョンにはかなわないなぁ」と思いました。

日本語版も良いのですが、ハンス役の津田英佑がサビの「とびらあーけーてー」のところで、アナ役の神田沙也加に押し負けている気がするのですね。惜しいところです。

 

 

原語版基準でこの曲について思う事を書いてみますと……

アナとハンスがそれぞれ自分の境遇を告白しあった後、少し沈んだ雰囲気になったところで曲のイントロと共に、ハンスがアナを受け入れる意思を示します。ミュージカルならではの、場面転換の合図なのですね。すると、アナも気持ちを切り替え、"OK, can I just, say something crazy?"「ねぇ、ちょっとおかしなこと言ってもいい?」と始め、曲が続きます。

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この曲は全編通してテンポが良く、アナとハンスがリズミカルに会話を重ね、サビに繋がります。Love is an open door~♪と2人で声を合わせてのびやかに歌うサビは非常に気持ちが良いです!直線的にまっすぐ歌うアナと、それをサポートするように、しかしアナを相互的に引き立て、聴く人を虜にするハーモニーを作るのですね。最後に行くにつれて2人の息がますますピッタリ合っていくさまも必見です。

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この歌の分かれ目はこの2回あるサビ、長めの高音をキレイに2人で調和して歌いきれるか、といっても過言ではないと思います。繰り返しになってしまいますが、クリスティンとチャドのコラボは聴く者を恋させるほどに素晴らしいものなのです。

また、機会があればこの曲のBGMのみ(カラオケ)を聞いてみてはいかがでしょう?普段は歌声に目が行きがちですが、普段とは違うこの曲の魅力に気付くかもしれません。

(この先、『アナと雪の女王』の重大なネタバレがあるので未見の方はご注意ください)

 

 

 

 

 

 

 

「とびらあけて」の裏に潜む真意

物語が終盤に差し掛かると、なんとハンス王子が悪役であるということが判明します。彼の背景をよく掘り下げると、末っ子ゆえに兄たちに相手にされず、王の子に産まれても王位も継承できないので、自分が王になるために平和なアレンデール王国の姫と結婚する……それが彼の目的でした。

この主人公のお姫様のパートナーとなるはずの王子が悪役(ヴィラン)という展開は、先のエルサの「その日に会った人間と結婚するものではない」というセリフ含めて、初期に製作されたディズニー・プリンセスの型への、いわゆる「アンチテーゼ」なのですね。

しかし、この豹変ぶりに戸惑いどころか違和感を感じた人も多いはずです。そこで、監督等から明かされた裏設定、ハンス王子とは本当は誰なのか……それが以下のサイト様の記事です。

かいつまんで言うならば、ハンス王子は「鏡」です。ハンスは、その場面に居る登場人物たちの気持ちを反映した行動や態度をとっていた……これを頭に入れてもう一度本編を観ると「あぁ、確かにそうかも」となると思います。

幼少期から兄弟たちに虐げられて性格がゆがんだハンス王子。彼は、

・意志を持たない、物語の記号的存在の「鏡」(ある意味神話的でもある)

・その時々にいる周りの人々に合わせ、望まれる態度をとる狡猾な「鏡」のような人物

と、2通りの捉え方があるでしょう。

「鏡」であるハンスが映すアナの「理想」とは、見方によっては偽物であり、本物です。設定上、「とびらあけて」の最中含め、ハンスの語る言葉は全てウソ・演技ということになってしまいます。確かに、ハンスが悪者ということ知ったうえでの「とびらあけて」はどこかうさんくさく聞こえてくるという巧妙な作りになっているのです。「とびらあけて」が気に入った僕としては受け入れがたい真実です……(´・ω・`)

 

 

……しかし、それでも僕は「とびらあけて」が大好き、と言いたいです。

しかし、歌が持つ魅力は上にも書いた通り、素晴らしいものです。なので、僕はこの歌自体は好きなのです。できれば、続編の"Frozen2"(原題)で、アナとクリストフに「とびらあけて」のリプライズ版をうたってもらう・あるいは「とびらあけて」をアレンジしたメロディを一部使った新しいラブソング を聞きたいですね。

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例えば、今作の「生まれて初めて」のリプライズ版は、一度目の「生まれて初めて」から加速したエルサとアナの気持ちのすれ違いを、リプライズとして歌っていました。ならば、アナは本当に自分を愛してくれるクリストフと、「とびらあけて」のリプライズ版をうたってもいいですよね。ここでクリストフはもちろん、アナのセリフをコピーするのではなく、自分の気持ちも正直に述べるべきですね。

余談ですが、特に記憶に残っている中では『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』や、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』は過去作のテーマ曲の引用やアレンジ、それを使うタイミングがとても巧みで、ファン泣かせの音楽でした。

 

 

 

アメリカよ、これが日本の「とびらあけて」だ。

2人で歌う曲ということで、カップルに最適(もちろん同性もアリです)!な「とびらあけて」。僕が長い間動画サイトを巡ってきた結果、「これは皆さんにも聞いていただきたい!」というオススメのものを下記にまとめます。ほとんどがニコニコ動画が出典なのですが、なるべく多くの人が手軽に見られるよう、Youtubeに転載されたものを載せておきますね。(やむをえずいくつかニコニコ動画を載せますが、アカウントを持っていない方応見られると思います。)

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どれもとても素晴らしく(言っていることが合唱祭の審査員みたい)、それぞれが独自の「とびらあけて」を歌い上げてくださいました。中にはアナとハンスの両方を兼任している方もいますが、そこを技術と笑いでカバーしており、結果的に実際に2人で歌っているものに匹敵します。「え?笑いって何よ」と思った方!是非とも読み進めてくださいませ

 

1.アナ:うなぎ さん ハンス:NORISTRY さん

王道の「歌ってみた」です。全体を通してとてもハイレベルな質を保っており、まさにお手本にしたい「とびらあけて」。本家の日本語版よりこちらが好きになる方もいたり?

 

2.アナ:38番 さん ハンス:しゅーず さん

先ほどのお二人とはまた違う上手さです。上手さのベクトル(向いている方向)が多少違っており、敢えて言葉にするなら、38番さんとしゅーずさんは特に楽しそうに歌っています。聞いているこっちまで心が弾みそうな明るさであり、『アラジン』の"A Whole New World"のブロードウェイ版にも通じるものがありますね。

 
3.アナ:☆イル さん ハンス:ユーキ(E.L.V.N)さん

日本では珍しい、原語版の「歌ってみた」ですね。発音もきれいで、少しアレンジが聴いて一味違う"Love is an open door"です。原語版のファンの方は必見です! 

 

4.アナ:ろん さん, タイヤキ屋 さん ハンス:そらる さん, タイヤキ屋 さん

元々そらるさんとろんさんが歌っていたものに、タイ焼き屋さんの歌を編曲して合わせたものですね。そらるさんとろんさんが安定して歌う中、どちらかというとネタ方面に走ったタイ焼きさんの力強い声が絶妙なタイミングで挿入され、上手いのに爆笑もの、という仕上がりです。やたらワイルドなアナに、初見で吹き出さなかったらすごいと思います……。ちなみに僕は開始5秒で撃沈しました。あとハンスが変t

 

5.アナ:メガテラ・ゼロ さん ハンス:メガテラ・ゼロ さん

こちらも多少ネタ方面を向いていますが、「デュエット曲を一人」というハンデをフル活用した技術でカバーしてきます。ネタと技術が両立した数少ない例ではないでしょうか?違和感のないJ-Popのような仕上がりに、初見はニヤニヤが止まりませんでした。後半から始まるバック・コーラスはズルいですって……

 

6.アナ:いかさん (さん) ハンス:いかさん (さん)

メガテラ・ゼロさんと同じくアナとハンスを兼任していますね。こちらはタイトル通り女性なのですが、「これ実は2人じゃないか?」という違和感のなさです。一度目のサビが終わった後の、2人が廊下を滑って「飛び出せるよ~」と歌うテンポの子気味良さはピカいち!ハンスパートは男の僕がヘコむうまさですね。

 

7. アナ:りす さん ハンス:七尾 さん

やたらテンションが高い七尾さんのハンスと冷静にいなすりすさんのアナは、例えるならまるで犬と猫のよう。元気すぎるハンスが聴く人を笑顔にしてくれます!最初から何かがおかしいです

 

8.アナ:しゃけみー さん ハンス:しゃけみー さん ハンスの連れ ボクラモイルヨ!>(゚∀゚ )(゚∀゚ )(゚∀゚ )(゚∀゚ ):しゃけみーさん

(この動画を転載した方が、youtube以外でのサイトの視聴を認めていないので、動画ウィンドウの埋め込みができませんでした……)

恐らくこの中では一番有名なしゃけみーさんです。「ふ」の発音に問題があるアナ、そしてハンスが連れを連れてきてしまい、もはやデュエットではなく合唱と化しています。とにかく最初から最後までにぎやかに(そしてカオスに)突っ走ります!初見は爆笑必須なので是非ともご覧あれ。しゃけみーさんは他のアナ雪の劇中化で「効果音全部俺。」をうたっており、それらもオススメですよ!

 

9.アナ:うらたぬき さん, ヲタみん さん, しゃけみー さん, タイ焼き屋 さん, にららぎさん, ろん さん ハンス:そらる さん, すずなみ さん, あほの坂田 さん, コゲ犬 さん タイ焼き屋 さん, にららぎ さん, しゃけみー さん (連 ゚∀゚)連れ:しゃけみー さん

【耳が幸せな合唱シリーズ】その1!以上に挙げた「歌ってみた」の方々が結構入っていますね。全部観た方にとっては『アベンジャーズ』のごとく、知っているヒーローが大集合という豪華な絵面です。巧みな編集でそれぞれの良さが活きており、楽しい「とびら開けて」となっていますよ。

 

10.アナ:うらたぬき さん, ヲタみん さん, しゃけみー さん, タイ焼き屋 さん, ろん さん ハンス:そらる さん, あほの坂田 さん, コゲ犬 さん タイ焼き屋 さん,しゃけみー さん (連 ゚∀゚)連れ:しゃけみー さん

 

【耳が幸せな合唱シリーズ】その2!その1からメンバー数が減り、編集は大味になりましたが楽しさはその1以上。また違う編集で豪華な合唱になっており、個人的にはその1よりも好きかもしれません。本来はデュエット曲のはずですが、歌が上手い方々が結集することによってここまでの感動が生み出せるんですね……

 

 

 

 

 

以上、『アナと雪の女王』の劇中歌「とびらあけて」でした。

書いてみるとかなり長くなってしまいました(;´・ω・)。それにしても作詞・作曲のロバート・ロペスとクリスティン・アンダーソン=ロペスの二人は、ストーリーを踏まえたうえで素晴らしい歌の数々を創り出してくれました。このロペス夫妻の作品で、他にも未公開曲や短編の『エルサのサプライズ』のテーマ・ソングなどもあり、これらも本編の曲と並んで非常に良いです(いつか記事にしようかな……)。皆さんも、自分のお気に入りの「とびらあけて」を見つけてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

"Frozen2"(原題)は2019年11月27日、全米公開ですよ(ボソッ