最後のジェダイ、過ちと希望

 

お久しぶりです、the-Writerです。

気付けば2018年に入り、あれだけ待ち望んでいた『スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』は公開され、日本では『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』が6月29日に公開決定いたしました。

ルーク・スカイウォーカーの如くふらっとブログから離れ、なぜ何の音さたも無かったのか?それはシンプルに「書きたい!」という情熱が湧いてこなかったからです。僕はあくまで楽しむためにブログに記事を投稿しているだけなので、読者が待っているんだ……!と、仕事のような気持ちで書くのはできるだけ避けています。「趣味を義務感でやるのなら、そこでやめた方が良い」どこかでこんな言葉を見た事があります。あくまで娯楽としてのブログ。これからもこれを心がけていこうと思います。

 

さて、今回はついに観てきました『スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』の感想……の一部です。まだ手元にBlu-ray,DVDといった円盤が無い状態で不安はありますが、書いていこうと思います。その一部とは何か?

ルーク・スカイウォーカーについてです。

 

 

f:id:the-Writer:20180109230853j:plain

『エピソード7』ラストでレイがかつて彼の、彼の父のものだったセーバーを差し出し、レイはルークを万感の思いで見つめ、ルークはやさしさと葛藤が要り混じった(『エピソード7』脚本より)瞳でレイを見ている。さあ、ここからどうなるんだ?というところで『エピソード7』 は幕を閉じ、次作へと続きました。

『エピソード8』序盤でオクトーの美しい島が映し出され、『エピソード7』 から引用した不思議な音楽が盛り上がったところで、まさかルークがぶっきらぼうにセーバーを後ろにポイ捨てするとは、まさか誰も夢には思わなかったはず。その姿は動乱の世に嫌気がさし、すべてを捨て、すべてから逃げだした世捨て人そのものであり、過去の若かりしころの栄光の姿とは対照的に落ちぶれ、すさんでいました。

f:id:the-Writer:20180109230402j:plain

レイに修行を施すのはR2の奇策ともいえる機転から、レイに修行を施す事にはします。「レッスンは3つだ」という宣言から始まった修行ですが、その最中のちょっかいは意味不明で、どことなく雑な印象を受けます。

f:id:the-Writer:20180110140925j:plain

(↑「そう、それだ、それがフォースだ!wwww」草ヒラヒラ)

 

 

『エピソード7』を観た観客の予想や期待の真逆を行く人物像に、恐らく多くのファンが混乱した事でしょう。僕が彼について立てていた予想は、

オクトーに引きこもったのは、恐らくフォースにかかわる重要な手がかりを求めて。『エピソード6』から30年、様々な経験を積み、知識と貫録を兼ね備えたジェダイ・マスターとして新世代のレイを指導してくれる……機は熟したとして、再び緑の光刃のセーバーをその手に握り、レンの騎士団、もしかしたらスノークと頂上決戦を演じてくれる……

と思っていました。中には「こんなのルークじゃない」と拒否した人も少なからずいたのではないでしょうか?何を隠そう、僕もその一人で、あの楽観と希望の象徴のようなキャラクターだったルークが全体的に哀愁漂わせ、しかもどこか嫌味ったらしいジェダイ・マスターであり、その印象を観客に与えたままその生涯を閉じてしまうというのは非常に抵抗がありました。

 

しかし、僕は一旦時間を置くことにしました。じっくりと徐々に彼のキャラクターを理解しようとしていき、様々な考察を読んだ結果、「あ、やっぱり彼はルークだったんだな」と、ようやく受け入れることができました。『エピソード7』を観た観客の「期待」したルーク。正直「期待」の方が、王道で観客の観たいものに寄り添っており、僕もそっちが見たかった。はるばる訪ねてきたレイに、老練の賢者ルークが「今までこうして籠っていたのはフォースの更なる訓練と探究のため……今こそ君を立派なジェダイにし、スノークを倒して銀河に平和をもたらそう!」と頼もしく言い切ってくれた方が良かったです。ですが!敢えてその真逆のアプローチでルークを描き切ってくれたライアン・ジョンソン監督の心意気には拍手を送りたいですね。

『エピソード8』を楽しみにして観に行き、「何か違う」「裏切られた」という感想を抱いた方がこれを読んでおり、何か新しい「ある視点」に気付く手助けにもなれば、と思います。

 f:id:the-Writer:20180111225613j:plainf:id:the-Writer:20180111225628j:plain

なぜ最終的に今作で描かれたルークの人物像、そして彼がたどった物語の結末に納得させられてしまったのか。それは、ジョンソン監督の描き出した「その後のルーク」は、地盤(基礎)となったオリジナル・トリロジーのルークとつながっていたからです。ルーク視点で述べるなら、『エピソード8』は『エピソード6』の直系の続編です。

というわけで、『エピソード8』でようやく明かされたニュー・ジェダイ・オーダー崩壊の真実に焦点を置いて、僕なりの考えを書いていこうと思います。ライアン・ジョンソンが今作のストーリーを考える時、まず取り掛かったのが「なぜルークはただ一人、オクトーの孤島に隠れていたのか?」という謎に答えを出す事、だったそうです。よって今作の核ともいえるこの重要な転機をいかに解釈・紐解くかで、ルークの人物像と今作全体に対する印象や評価は大きく左右されると思います。

 

エンドアの戦い~ニュー・ジェダイ・オーダー崩壊のルークがどんな日々を送っていたのか、自分の考察(実質妄想)を描きたいのですが、あまりに長くなりそうなので泣く泣くカット(´;ω;`) ジェダイとして一人前になり、独り立ちしてジェダイの遺物や知識を求めて銀河中を奔走するルークについて考えるのは結構おいしいのですが……

その代わりとして、以下に STAR WARS/スター・ウォーズ 情報考察Blogさんの記事を2つばかり引用させていただきます。記事を書かないときはちょくちょくチェックさせてもらっては「ほえ~」と言っておりましたw

 

さて、本題のそれ以降のお話です。『エピソード8』劇中のルークの証言によれば、彼は自分と集めたフォース感応者の弟子たちしか知らない場所に新しいジェダイ寺院を作り、そこで訓練の日々を行っていました。そしてある日の夜、弟子たちが寝静まった時間帯にルークはベンの小屋を訪れ、フォースを通じてベンの心を読み取ります。その時に感じたのは、想像を絶する巨大な闇であり、彼の脳裏には「このままでは自身の愛するすべてが破壊される」という恐怖か、はたまた本能の声が浮かびます。ルークはその手に愛用のセーバーを握り、緑の光刃を起動させてしまう……

ここでルークの心情の分析に大きな手掛かりになりそうなのが、ベン視点の回想です。ふと夜中に眠りから覚めたベンに向けて、ルークが鬼気迫る表情でセーバーを構えていたこと。とっさにベンは手元に引き寄せた自身のセーバーでルークに対抗しつつ、小屋をフォースで崩落させてルークを撃退することに成功しました。ルークの鬼気迫る表情、特に殺気で見開かれた目を、過去のどこかで観たことありませんか?

 

まず『エピソード5』では、マスターであるヨーダやオビ=ワンの助言を無視して「友達を助けなければ」という本能に従って単身ベスピンのクラウド・シティに向かいました。そこでベイダーに心身ともに叩きのめされましたが、それが後のベイダーに匹敵するほどの実力を身に着ける修行の強い動機になりました。いわゆる結果オーライ。

そして『エピソード6』、第2デススターの中です。銀河帝国皇帝にして、全ての黒幕であるシス卿ダース・シディアスに仕向けられ、ルークは実の父であるベイダーとの対決を強いられました。クラウドシティでの決闘からおよそ1年、独自に修行を積んだルークは既にベイダーと互角以上の勝負に持ち込めるほどの実力を身につけましたが、目的はベイダーを倒すことではなく、アナキンを呼び戻す事。母パドメが死の間際までそうしたように、ベイダーの中にクローン大戦の英雄であり、勇猛果敢で善良なジェダイ、父アナキン・スカイウォーカーを信じていたのですね。途中からベイダーとの対決を拒むルークですが、ここでベイダーが不用意な発言をします。

「そうか、お前には……妹がいるのか」

(中略)

「お前が暗黒面に下らないならば、彼女を引きずり込むまで」

ここでルークが思わず焦りと恐怖、そして怒りでベイダーをセーバー戦で押し込みます。その後どういうわけか姿勢を崩し(僕はルークの怒りのフォースがベイダーの義足を機能停止にしたのだと思いました)、ベイダーが手すりにつかまりながらも構えるセーバーに無我夢中で武器をたたきつけ、右腕をセーバーごと切り落としてしまうのでした。この時、ひたむきに父を救おうとしていたルークが思わず本能的にその父を殺しかけているのですよ。

f:id:the-Writer:20180110145025j:plainf:id:the-Writer:20180110145033j:plain
その後、改めて暗黒面を実感したルークは父と違い、毅然とジェダイとして暗黒面への誘いを断ち切りましたが。

『エピソード8』のベン視点の回想でも、ルークは思わず実の父を殺しかけた、あの時と同じ目をしていました。ルークとしては、ベンに気付かれたときにはすでに心が落ち着いて後悔と恥しかなかったそうですが、ベンとしては命が危機にされされている状況なうえ、ルークの殺気=フォースを感じ取ったのでしょうか。(『ローグ・ワン』でチアルートがイードゥに不時着したUウィングの中で、「殺気を持つ者、暗黒のフォースをまとう」と述べていますし)

 

かつてヨーダに向かって「恐れません」といったルーク。しかし、今は「恐ろしい」のです。『エピソード5』の時と同じように本能の声に従い、『エピソード6』の時のようにそんな思いは一瞬だったはずなのに、悲しきかなベンには気付かれてしまいました。客観的に見て彼はいつも通りの行動をとったはずですが……もはや今の彼は「導く側の人間」という状況ゆえ、今回は惨劇に繋がってしまいました。

基本的にオリジナル・トリロジーでは若く、純粋でやんちゃな一面が描かれた希望と楽観の象徴ルークでしたが、結局彼も一人の人間だったのですね。ベンに刃を向けた時に「愛する者を失いたくなかった」という気持ちは、レイアを守るためにベイダーを滅多打ちにしたあの時と同じですし、更にはパドメを死の運命から救いたかったアナキンとも重なります。ルークも悩み、恐怖する僕らと何ら変わりない一人の人間だった、ということがわかりました。

恐らく一番目をかけていた弟子に「自分は裏切られた」と思わせてしまった恥・せっかく自分が築き上げてきたものが一瞬のうちに崩壊した悲しみ・数々の愛弟子たちを失った悲しみ・そして愛する妹レイアと親友ハンの子供を手にかけようとしてしまったふがいなさ・重すぎる過ちの後悔・銀河中の人々から「英雄」「希望の象徴」と称えられてきた事とのギャップ……これらのことが一気に重なった、と僕は推測します。純粋で優しい性格ゆえ、これらの重荷に耐えられず、ふらりと失踪したと。レイアとハンの元に連絡しなかったのもこれで合点がいきます。一人の人間に課すには、あまりにも大きすぎた責任だったのです。

全てが嫌になってオクトーにたどり着いたルークは、まず愛機のT-65Xウィングを海中に沈め、そのSフォイル(X型に開く戦闘翼の事)の装甲をはがして自身の住居の扉にしてしまいます。これまでとは打って変わってジェダイを冷めた視点から捉える事になったルーク。それが、旧共和国時代のジェダイを「偽善と傲慢」と言わしめ、あの夜の悲劇となった大本の動機であるジェダイの全てを終わらせようという考えも浮かんだのでしょう。様々な条件が一挙に重なり、奈落の底に突き落とされたルークは、その心情をこじらせ、全てから逃げて何とも関わりたくない気持ちになり、殻を作ります。バラシュの誓いどころではなく、フォースすらからも自身を閉ざしてひっそりと死を迎えるのを待つばかりだった……。

 

f:id:the-Writer:20180109230833j:plain

そこに突然、謎の少女(女性?)レイがやってきたわけですね。そこに、かつて生来の右腕と共に失ったはずの、父アナキンのセーバーを期待するような顔つきで差し出されるわけです。『エピソード7』ラストでは考えが読めない彼でしたが、今となっては葛藤あるいはフラッシュバックが起こっていたのではないかと思います。

f:id:the-Writer:20180110153747j:plain

辛い記憶を必死に忘れようと孤島で粛々と生活を送った日々でしたが、父のセーバーの現物を差し出されることで起こったフラッシュバック。まだ自分が平凡な農家の少年で、一生何もない故郷で退屈な日々を送っていくんだと思っていた矢先、偶然に偶然が重なり、ずっと自分を見守っていたオビ=ワンとの邂逅。「君の父は実はジェダイだった」と父の形見であるセーバーを渡され、ジェダイを夢見て送った帝国との戦いの日々。あの時はまだ純粋でしたが、年を取ってから自分が犯した過ちや、過去に抱いた夢や理想とのギャップを感じ取ったのではないでしょうか。やっと決心をつけて全てをひっそりと終わらせようとした(=自殺?)矢先、レイの来訪に邪魔された形になります。過去から逃げたかったのに、それを鮮明に思い出させられたので、受け取ったセーバーを不機嫌な様子でポイ捨てしてレイを置いていく、という反応も納得いく気がします。

f:id:the-Writer:20180111122530p:plain

以上が伝説にして最後のジェダイルーク・スカイウォーカーの謎に包まれていた「その後の30年間」の真実でした。とはいえ、まだまだ語られるべきストーリーはあるのでしょうが……

物語の中盤、上記の真実が判明するまではルークはそれをレイには伝えていませんでした。彼はまだあの夜の出来事、それに追随して起こった感情などをまだ克服できていません。時間が止まったままなのです。ハンに何が起こったのをレイから知らされた後では尚更いうことができなかったのでしょう。「彼を殺そうとしたの?あなたがカイロ・レンを創り出したの?!」という詰問が彼の胸に突き刺さったのは想像に難くありません。

f:id:the-Writer:20180111135824j:plain

レイは単身、レンを説得しるためにオクトーを飛び出していきます。ルークはもうジェダイを終わらせようとたいまつを持って古代の書物を収めたフォースの木の元へ。その時、背後に気配を感じ、振り向いた先に立っていたのは、霊体となってもなお彼を見守っていたヨーダでした。

「若きスカイウォーカーよ」

決意をヨーダに述べてもなお、全てを燃やすことに躊躇するルーク。フム、と一言発したヨーダはフォースによる天候操作で雷を落とし、容赦なく木を燃やします。衝撃を受けるルークをよそ目に、ヒーッヒッヒッ!と大笑いするヨーダ。かつてダゴバで初遭遇した時のお茶目なふるまいを思い出させます。年を取り、ジェダイ・マスターとなっても、ヨーダの前ではルークは一人の弟子であり、ジェダイの貴重な書物を燃やしたことに文句を垂れる時の顔はまさに「若きスカイウォーカー」のままなのです。

「あんなカビ臭い書物など忘れてしまえ!」

「まだ地平線を見るか、ここ、ここじゃ!目の前にあるものを見ろ!」

「あの娘、レイが持つもの超えるものは、あの書物にはない」

「学んだものを受け継ぐのじゃ、強さ、技巧、だが弱さ、過ち、失敗も」

「失敗、そう失敗こそが最良の師」

「わしらは、彼らが超えていくためにある」

ジェダイを終わらせようとした時に、自分の前に現れたジェダイとしての師であるヨーダ。人とのかかわりを絶ち、ずっと自分の過ちを許せずに悔いていたルークに、ヨーダが授けてくれた失敗すらも肯定する教えがどれほど救いになったか。ルークはようやく、自分のことを許すことができたのではないでしょうか。夜の闇の中、霊体のヨーダと並んでフォースの木が煌々と燃えていく様子を眺めている後ろ姿からは穏やかな雰囲気すら感じます。

レイに聞いたハンの最期、R2が見せてくれたレイアのホログラム、そしてフォースを通じてレイアに呼びかけた事……少しずつ心情が前向きに変化していたルークは、ようやく復活を果たしました。かつてのように、銀河の人々のために。帝国を倒した反乱軍の英雄・伝説のジェダイルーク・スカイウォーカーとして。今一度その名前を背負ってクレイトに(幻影として)赴きます。ようやく再開した兄妹。レイアが何も言わずともルークを許すのはグッと来ました。しかし、レイアは自分を探し求めていた間に、ベイダーの娘であることを暴露されて失脚し、長年連れ添った愛する夫ハンを残酷な経緯で失い、息子のベンすら暗黒面に捕らわれて諦めかけていました。そんな彼女にルークがかけた言葉は「誰も真に、いなくなったりはしない」。レイアとの最後の別れが、自分の最期が近いことを悟っていた上でのものだとしたら泣けますね。

f:id:the-Writer:20180111144640j:plain

唯一、ドロイドである3POだけはルークがそこにはいないことに気付いていたのか。いたずらっぽいウィンクは口止めの意でしょうか。ファーストオーダーが突入しようとしてくる入り口の割れ目にローブをはためかせて堂々と向かいます。希望の象徴として、暗闇からついにその姿を現したルーク。それを次々に頭を上げて見る兵士たちが、ルーク復活の衝撃と感動を実感させてくれます。

f:id:the-Writer:20180111144749j:plain

追手が迫る中、民衆の前に一人立ち、逃げ道を切り開くその姿はまさに救世主のモーゼのようです。ルークと決着をつけようと一人来たカイロ・レンもしくはベン・ソロ。ルークが幻影として採用した姿は、ベンが最後に見たルークの姿ですが、衣装が違います。黒地の一見シンプルなローブの下に見える白い衣服。まさに、絶望から復活して希望を見出したルークそのものを表していると思います。

f:id:the-Writer:20180111144802j:plainf:id:the-Writer:20180111144834p:plain

せめてレジスタンスの彼らが逃げる時間を稼ぐために、ルークは幻影として最大限できることをしますね。まずレンが不安定な精神の持ち主である事を利用して、レンが最後に見た姿(レンが殺される寸前に見た姿)で、レンご執心のアナキンのセーバーを持って彼と向き合います。レンを心の底から自分自身に注意を惹きつけ、攻撃をひたすらかわす事で、レジスタンスの撤退を可能にするのです。これで自分の足跡がクレイトの真っ白な地表に残らないことにも気づかれません。この時、ルークのセーバーの握り方なのですが、よく見ると『エピソード5』のあのちょっと変なぎごちない感じの持ち方です(演出が細かい!)。さらに、ルークは基本的に右手を上に構えていたのですが、今回は左手を上に構えているのです。命がかかっている一騎打ちで敢えて逆の手を使う……このことから、ルークはレンと戦う意志は決して持ち合わせていない、と僕は読み取りました。

ここでルークは"I failed you, Ben. I'm sorry."と言います。かつてオビ=ワンがムスタファーでアナキンに言ったようにです。ベンを導きそこなった、失望させた、という思いはあるようです。なお、ベイダーの時のように積極的な救済の意志は見られません。今回は敢えて、本人の好きなようにやらせる一方、次世代のレイたちに希望を託したのでしょうか?

この後はご存知の通り、幻影でレンを翻弄している間に実はレジスタンスを逃がすことに成功したのが知れ渡ります。と、口先と幻影のみで未熟な青年一人を翻弄した辺り、ルークのマスターとしての実力を垣間見ました。"See you around, kid" もう彼が"kid"という側に立ったんですね……(遠い目で)。まさしく、ヨーダから受け継いだ教え「ジェダイはその力を決して攻撃ではなく、知識と防御のために使う」を体で実行に移したのが、この一連のシーンでもありました。

この後ルークはオクトーで双子の夕日を見つめながら、その生涯を閉じます。それは、レイに言わせれば「苦しみや絶望ではなく、穏やかで意義あるものだった」そうです。彼が満足げな表情で故郷を想起させる双子の太陽を見つめていた時に感じていたのは、望郷の念か、レイアやハンへの愛か、次世代への希望だったのか。その結論を出すのは別の機会に譲りまして……彼が最後に満たされていた事は確かです。非常にドラマチックなシーンでした。

一度は「ジェダイは、滅びる」と言い切るも最終的に希望を取り戻し、「私は、最後のジェダイにはならない」と確信したルーク。彼という火花に呼応するように、レイ、そして銀河各地で未だ名も知らぬ子供たちのフォース、そして希望が燃え上がりつつあります。今度復活する時にはただライトサイドに傾倒した者ではなくなっている可能性もあるジェダイ。そんなジェダイがこれからも立ち上がっていく事が示唆されているだけでなく、ルークの希望は次世代の人間たちに受け継がれ、彼らとその物語を前進させるのでしょう。

 

『エピソード8』を受け入れられなかった方の中には、ルークの人物像だけでなく、実際にライトセーバーをぶつける戦いすらせずに最期を迎えた事が嫌だった……という方もいるかもしれません。少なくとも、僕は最初そう感じていました。

しかし、時間をおいて考えると、続三部作はレイ達の物語であり、ルークの冒険は監督も述べているとおり、旧三部作で完結しています。旧三部作の主人公が本格的に復活して一緒に戦うとなれば、レイ達を食うほどの存在感を発揮し、せっかくの続三部作の物語が薄れる恐れがあります。よって『エピソード8』でルークとのお別れは不可避だったのかな、と今では思うのです。丁度ルークの祖母にあたるシミ・スカイウォーカーの言葉を思い出します。「運命は変えられないの。夕日が沈むのを止められないのと同じ」

ルークが旧三部作を終えてからたどった道筋は、決して僕ら観客が期待していたものではありませんでした。「いつまでも幸せに、暮らしましたとさ」という絵にかいたような幸せな生活を送ってほしかったですが。そもそもそんな状態なら、続く『エピソード7』からの続三部作に出演する必要が無いわけで。物語が続く以上は、やはり何らかの試練を受けないと物語として成立しません。仮にその「幸せな」状態で出演したとしても、何一つ不足しているものはない完璧なキャラクターということになるので、それこそ前述の通りレイ達の影が薄くなってしまいます。言い方を変えれば、今回のすさんだ状態は、ルークという最初のSWの主人公である伝説級のキャラクターに対する足かせ、あるいはハンデだったわけです。

f:id:the-Writer:20180111205031j:plain

それでもなお、最後に彼が満足し状態で逝ったなら、自分で自分の歩んできた人生に何か意味が意義が見いだせたなら、少なくとも僕は嬉しく思います。プリクエル世代の僕ですが、『エピソード7』に向けてルーカスのSW6部作を何度も何度も見て、ルークや他のキャラクター達が本当に好きになりました。最初は受け付けなかった『エピソード8』のルークの最期は今では悲しく、壮大で、非常に美しく思います。最高のやり方で、ルークというキャラクターを送り出せたと思いました。

 

 

 

 

以上、現在『エピソード8』のルーク・スカイウォーカーについて思ったことでした。本作品の特別映像インタビューでフィンを演じるジョン・ボイエガが述べた通り「全てが逆の方向に動き始める」、実際ルークは衝撃の人物像でしたが、冷静に少しずつ紐解いてみるとしっかりと旧三部作のルークに根差したものでした。衝撃を裏付ける丁寧なキャラクター構築、脚本も務めたライアン・ジョンソン監督のスターウォーズ愛をひしひしと感じました。その手腕と、ルーク・スカイウォーカーの人生を完結させるという英断には拍手を送りたいです。見事でした……

 

なお、『エピソード8』の感想はこれだけにはとどまりません。元々一本の記事だった予定が、ルークの個所を書いているうちにかなり長くなってしまったので急きょこうして独立した記事にしたわけでして……とにかく、今『エピソード8』について感じた事を書いた記事を鋭意執筆中です。またそこでお会いしませふ(´・ω・)ノシ