『パワーレンジャー』感想 ~~最高の仲間を、ドラマをありがとう~~

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今回は7月15日に公開された『パワーレンジャー』についての感想なのですが、その前に僕の思い出メインの前置きを書かせてください。

 

東映のヒーローは、僕の最初で最高のヒーローなんです

今でこそ趣味は映画観賞、特に最近はアメコミ映画やスターウォーズといったシリーズにドはまりしている僕ですが……「その原点って何だろう」と考えてみると、幼少期から見てきたスーパー戦隊仮面ライダーといった、日本発祥の東映の特撮ヒーローなんですね。

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まだ小さかったので、細かくストーリーや映像のレベルといったところまではよくわかっていなかったのものの、とにかく「かっこいいなぁ」から始まるあこがれや興奮を覚えていました。僕が見ていた作品は、

スーパー戦隊

・『百獣戦隊ガオレンジャー

・『忍風戦隊ハリケンジャー

・『爆竜戦隊アバレンジャー

・『特捜戦隊デカレンジャー

・『魔法戦隊マジレンジャー

・『轟轟戦隊ボウケンジャー

・『炎神戦隊ゴウオンジャー』

・『侍戦隊シンケンジャー

・『天装戦隊ゴセイジャー

・『海賊戦隊ゴウカイジャー』

仮面ライダー

・『仮面ライダーブレイド

・『仮面ライダー電王

・『仮面ライダーキバ

・『仮面ライダーディケイド

・『仮面ライダーW

・『仮面ライダーオーズ

・『仮面ライダーフォーゼ』

・『仮面ライダーウィザード』

・『仮面ライダーTHE FIRST』,『仮面ライダーTHE NEXT』

ですね。これらに加えて、スーパー戦隊だと『VSシリーズ』といった2つの戦隊のクロスオーバーもの、仮面ライダーTVシリーズは未視聴ながら、劇場版なら見たことあるものもたくさんあります(平成ライダーシリーズってTVシリーズから独立したパラレル作品が多いんですよね)。

こうして列挙してみると本当に膨大な数を観ていたんだなぁと自分でびっくりです!

多分、未だにここに挙がっているすべてのヒーローの変身の動きは完ぺきに再現できます(`・ω・´)

それほど、東映のヒーローに関しては思い入れが強く、大好きなシリーズだったわけです。今回は『パワーレンジャー』についてなので、スーパー戦隊に注目していきますが……

いつごろからか東映のヒーローから卒業し、何気なくレンタルビデオ店で借りた『アイアンマン』から洋画にはまっていったのですが、時々ふと東映のヒーローについて思い出したりし、いくつかお気に入りのもののDVDを再生して見直したりします。ある程度当時から成長して大人になり、やはり「ここはチャチだなぁ」「CGのクオリティが……」「役者の演技が……」と洋画で鍛えらえれたこともあり、まだ小さかった頃は全く気にならなかったところが色々目に着くようになりました。しかし、だからといって日本の作る番組や映画のクオリティが低いというわけではないと思います。文面化された設定を読んでいると、けっこう面白い発想やヒネリが満載で、むしろハリウッド以上にアイデアは素晴らしいのではないかと思いますね。

一概に比較できるものではありませんが、日本とアメリカで何が違うかと言えば、一つは予算でしょうか。至極単純な発想ですが、せめてもう少し予算があればビームなどのCG技術を補正するだけでグッとクオリティはアップするよなぁ、と思ったりします。特に超が付くほどの多額の予算を与えられた割にはつまらなかった洋画の超大作を観た時には、「その予算を1/10で良いから東映に流してくれ……」と思ったりもしました。恐らく予算以外にも、製作側の日本的なシステムにも様々な制約があるのでしょうが……

とにかく、スーパー戦隊などの日本のヒーローはその本質が優れていることは間違いないです。なぜなら、そのスーパー戦隊をアメリカでリメイクした『パワーレンジャーシリーズ』の大ヒットがそれを証明しているからです。

 

パワーレンジャーについても少々

パワーレンジャーとは、スーパー戦隊を原作にしたシリーズといっても過言ではないでしょう。ドラマ・パートを様々な人種で撮り直し、変身シーンのCGは新たに作られ、アクション・シーンはより派手に、オリジナルの要素まで付け加えられるなど、様々な面で「あっちの国」の観客受けするように進化しています。最も、街で巨大化した敵と戦隊のロボが戦うシーンはさすがに日本のものを流用していたそうですが……

今や様々な国々でヒットしており、日本で生まれたヒーローは世界中の人々の楽しめるほど優れている、と捉えて良いでしょう。ちなみに、機会あって『ハリケンジャー』から『ボウケンジャー』までの4作品を原作にしたシリーズを一部見たことがあるのですが、確かにクオリティがすごいんですよ。爆発やビームなどの特殊効果はより派手に丁寧に、アクションもキレがあり、オリジナルのレッド専用バトルアーマーもカッコよく、とにかく日本版で不満だった映像面が完璧なまでに改善されており、「悔しいけど、かっこいい……」という具合でした。

そもそも東映のヒーローというのは基本的に子供たち向けなので、卒業した人間は対象外ですよね。それでも、卒業した人間である僕は、「かつて自分を興奮させ、夢躍らせてくれたアツいヒーローたちを、僕ら卒業した人間たちが十分満足できるレベルで観たい」という願望を抱くこととなりました。それは、大量の資金投入で集めた優れた人材によるたハイクオリティな東映ヒーローの映画を観たいということでもあります。

 

 

そして、それがようやくかなったのが本作『パワー・レンジャー』ということなのです。原作になっているシリーズはあるものの、高校生5人が主役であり、よりシリアス、より洗練された本気の一本ということで前々から楽しみにしていたのです。

それをようやく観てきたので、今回はそれを感想にまとめてみました。待ちきれないのでここで書いてしまいますが、これは傑作ですBlu-rayの予約が始まれば即刻でAmazonの購入ボタンをポチりますし、家に届いた日には吹き替え・字幕と何度でも見返したいです。

 

レンジャーである前に、彼は5人の「高校生」

本編が終わり、劇場から出ると胸に感じるのは「物足りない」という感覚。しかし、人間ドラマのパートは十分すぎるほど丁寧に、充実していたし、スーツやメカもハリウッドが本気出しただけあって(超)かっこいい。もう映像面では文句のつけようがありません。それでは、なぜそんな感情が湧くのか?

冷静に振り返ってみると、肝心の変身シーンが映画で言うと終盤のシーンなんですね。極端なことを言うと、変身、ザコ敵を倒し、巨大化した敵と戦い、新たに戦う決意を胸にする_______というのがラスト15分。そこに至るまでは、メンバーの5人の群像劇なわけです。

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スーパー戦隊のお約束を理解した身であり、プロモーションもかっこいいスーツやロボを前面に押し出したものであったので……そうなるとやはりいつも日曜の朝に見ていた5人一斉に「変身!」と叫んでスーツを装着、各々の戦闘スタイルでザコ敵をかっこよく片付け、最後は必殺技を叫んでキメる……という感じのケレン味あふれる展開を予想して劇場に向かいます。特に、近年のアメコミ映画などでもそうなように、アクションが充実したものを期待していくと、その期待は外れたように感じるのが本作でしょう

しかし、1日2日と時間がたってみると、今度は「もう一度、観に行きたい」という感情が胸にわいてきます。その源流をたどると、「もう一度、あの5人に遭いたい」という感情なんです。

 

 主人公は5人の高校生たち。

「5人の高校生が主人公で~」や「高校生たちの青春ドラマが~」といった文句を聞くと、何となく頭の中で「あ、高校生の学園(青春)ドラマなんだ」と勝手に像を作り上げ、見に行く気が特に起きない、という方もいるのではないでしょうか?上記の文句は確かに合って入るのですが、まだまだ本作の魅力が伝わらない言い方であると思うのです。それを熱く、語りたいと思います。以下、5人の主人公について僕なりに紹介をしていきますね

 

レッドレンジャー

今回、レンジャー(=チーム)のリーダーであるレッドを務めるのはジェイソン・スコット。アメフトで名プレイヤーだった彼は、体格が良く、力強い頼りになるキャラクターです。f:id:the-Writer:20170723204300j:plain

しかし、その溢れんばかりのエネルギーを持て余し、バカをやらかして、スターとして約束された将来をパーにしてしまいます。そのことを父親から責められますが……本人もその感情が何でどこからくるのか、本人なりに悶々と悩んでいる様子です。しかし、根はまっすぐで正義感溢れるキャラクターなのです。

ピンクレンジャー

チアリーディング部に所属し、友達もいて顔も美人、彼氏もいて高校生活を思いっきり満喫していたキンバリー。

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しかし、人間関係のこじれなどによるSNS上のトラブルもあり、所属していたグループからはじき出されてしまいました。人間関係の変化で居場所を失い、自分のやってしまった行動に悩み、その航海の仕方などが非常に高校生らしいといえるでしょう。そんな彼女も、根はまっすぐで大胆な人物です。

ブルーレンジャー

ビリーは幼いころに父親を亡くしており、今も恋しく思っています。その上に、自閉症スペクトラムを患っているのです。それゆえの特異な行動やおとなしさをネタにされ、学校ではイジメに合っていますが……

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しかしその学習・記憶能力はずば抜けています。また、彼の内面は繊細で優しく、素直という「純粋」そのものであり、チームではジョーク担当その1だったり。彼の存在が、周りの人間を和ませているのは間違いないのです。

ブラックレンジャー

ザックは不登校気味なアウトローで、今回の5人の中でも特に集団から外れがちな一匹狼で、恐れ知らずです。

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しかし、彼の母は病気で寝込んでおり、彼の何よりの恐れは愛する母を失う事。実は非常に家族思いであり、キンバリーとはまた別の形で、彼もまた居場所を必要とする人間なのです。打ち解けてくると、彼はビリーに続くジョーク担当その2となります。

イエローレンジャー

トリニーは親の都合でよく町から町へ引っ越したりする転校生です。

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実は同性愛者でもあるトリニー。しかしながらそれを両親に全く理解してもらえず、特に母親の方はトリニーに接する時はヒステリー寸前の、完全な「独親」状態です。高校生は繊細な時期でもあるので、彼女は何となくふさぎ込みがちで、皮肉っぽい一面も持ちます。そんな彼女が、偶然夜の鉱山に立ち入った時、物語が動き出します。

 

さてさて、レンジャーの面々を僕なりに紹介してみましたが、人生全てが順調で何の問題もないというわけではなく、何かしらの問題や欠点を抱え、それに悩みつつも日々を悶々と過ごす5人の高校生たちの姿。それは非常に説得力を持って、海を越えてはるかかなたの日本に住む僕らの胸に訴えかけてきます。

 

↑こちらの監督へのインタビューによれば、

私が”大人になる”物語が何故好きなのかというと、高校生やティーン・エイジャーにとって、世の中の全てが重要な出来事だからです。大きいものはすごく大きく感じましたよね。人生の中でもすごくエクストリームだった時期にいるキャラクターたちが成長していく、という物語が良いと思ったのです。

そうして僕らは、彼らに感情移入していくのです。思春期真っただ中の高校生は、「勉強も、部活も、恋も!青春してるぜー!」というキレイで充実したもの……

というよりはむしろもっと、言い知れぬ不満や不安に対する見つからない答えを求めて、自分の中の泥沼でもがく時期だと思うんですね(僕もそうでした)。コントロールできない感情、SNSでやたらと気を遣う人間関係、他人とうまくコミュニケーションが取れない、親とのすれ違いや葛藤、自分の悩みを理解してもらえない苦しみ、出口が見つからない孤独……僕が今回「高校生」と称するのはそんな子供から大人への過渡期の真っただ中(アルファ5の説明通り)で、様々な悩みを抱える人間の事です。

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少なくとも似たような経験をしたことがあれば、気付けば彼らと同じ目線で冒険をし、応援している自分に気付くのではないでしょうか。恐らく、現役高校生の方、あるいは高校生を卒業した方が見れば胸を打つものがあるはずです。そしてそれは、丁度「一度東映のヒーローを卒業した世代」とガッツリあっているのではないか、とも思います。そういう彼らに感情移入するからこそ、彼らのキャラクターが好きになり、彼らが結集していく過程をもっとじっくり観ていたくなり、彼らの高校生らしいジョークを交えた軽い会話が楽しくてたまらないのです。

 

また、それぞれ違う問題を抱える彼らには決して悪いことばかりではありません。

f:id:the-Writer:20170724101852p:plainコインに選ばれ、異常な力を有しているという秘密の共有、毎日学校が終わるとみんなで秘密のトレーニング、たまには一緒に遊んだりもするし、「バンド(=チーム)を組もうよ」という手紙を授業中にコッソリ回す、夜にみんなでたき火を囲んでおしゃべりをする……など、高校生ならではの遊びや興奮も見ていて楽しいです。

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本作は、「ティーンエイジ映画」と言って間違いないでしょう。本作がターゲットとしているであろう高校生以上の年齢層に対して、一度は通ったリアルな高校生の葛藤を描き出すことで、ハートをガッチリつかむというわけです。よって、僕はこれは「ティーンエイジ映画」であり、それを「一つの戦隊のオリジンストーリー」として描いたのだ思います。

 

本当の友情、信頼、絆

今作『パワーレンジャー』ではクライマックスとして据えられ、彼らの大きな目標として設定されているのが「変身」。基本的に、日本の毎週日曜の朝の30分番組では、メンバーそれぞれが変身ガジェットを持って、全員でタイミングを合わせて「変身!」と叫び、ガジェットを起動させて完了のシークエンス。

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(↑スーパー戦隊30周年記念作品『轟轟戦隊ボウケンジャー』より。お気に入りです)

 

夜の鉱山という偶然同じ場所にいた5人が、警備隊に見つかり、車で逃走を図るシーン。列車が迫る中、踏切を突っ切ろうとして容赦なく車ごと列車ごと吹き飛ばされたその時!彼らがそれぞれ手にしたコインが起動、彼らを守るために変身……しません。

その後、5人で宇宙船を見つけて中にいたロボットのアルファ5や、先代のレンジャーであるゾードンから説明を受け、グリッドに立つシーン。グリッドが起動し、ついに変身してスーツを……まといません。

ピットという名前の屋外で、岩でできた大柄のザコ敵と熾烈な訓練を繰り広げ、そのたびにグリッドに立ち、あれこれ方法を変えても変身……しないのです!

これが、「全員で真に心を合わせなければいけない」というかなりハードルが高い目標として設定され、5人は試行錯誤しながらもヒーローのスーツが出現させようと頑張ります。毎日大変なトレーニングを一緒に潜り抜けていくうちに、腕前が上達していく様子や、仲を深めていく様子は見ていてほほえましいですね。

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ある日、ジェイソンが勝手な行動をとったザックとのケンカで、ビリーが仲裁に入ったその時!ビリーにはスーツが装着されていました。しかし、それもつかの間、ビリーの体から砂のごとくサラサラと消えて行ってしまいました。

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それからはゾードンから「もう今日は出ていけ」と半ば追い出されて訓練を終えた5人。その日はザックのトレーラー・ハウスの近くでたき火をし、夜を明かすことにします。

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何とかより仲を深めようと、改めて「自己紹介」をしていく彼ら。高校生ならではの良い雰囲気ですね。

 

しかしストーリーは進み、トリニーの家に敵であるリタが襲撃をかけてから、夜に5人で集合をかけ、最終的にリタに戦いを挑むことにします。f:id:the-Writer:20170724101443p:plain

そして……ビリーが犠牲になってしまいました。未熟な力で敵に挑み、更に本当に命を落とすとは、日曜の朝にはとてもできないような非常にリアルでハードな展開です。

友達を失うことにより、彼らは真に「仲間を心の底から思いやる」「自分を犠牲にしてでも仲間を守る」気持ちを知るのです。僕はこの最初は寄せ集めともいえるメンバーが本当の友情や絆を築いていく過程が大好きでして。

 

アメリカと違い、日本の学校には「クラス」という概念が存在します。突然見知らぬ他の何十人の同級生と一緒に狭い教室に押し込められ、そして言葉は悪いですけど「みんな仲良く」を強要されますよね。クラス目標を作らされ、自己紹介をやらされ、体育祭や文化祭といった行事。「みんなで協力して」というのが暗黙の了解です。しかし、何十人も人間が要れば何十通りの考えがあるので、仲良くなれる人もいれば、どうしても相容れない人もいて。狭い教室で、決められたメンバーで1年間過ごせというのだから、これは大変です。自分の居場所を確保するためにグループが出来、「空気を読む」ということを覚えるのです。しかし、大抵のそのような関係は居場所を確保するためだけの、表層上のうすっぺらいつるみであり、本当に心の底から信頼できる「友」というのは数えるくらいしか存在しないというのが現実ではないでしょうか?

それを経験した方々の中には、『パワーレンジャー』を見ると、なぜか胸が熱くなり、感動した方もいるのではないでしょうか?なぜなら彼らは本物の絆や友情を築き上げたからです。

 

そもそも、宇宙船に初めて入った後、変身に失敗し、先に出ていった4人にジェイソンが語り掛けるシーン。「これに対する答えが、あそこにある。俺は君たちには強制することはできない。けど、明日の4時、俺はここに戻ってくる」すると、5人はまたまた集まることになり、一緒に特訓を受けることになります。あそこで、「あれは夢だったんだ」「こんな大事は、他の連中に任せておけばいい」と逃げてもよかったのに、彼らは1人1人、自分の意志で戻ってきたのです。そして、訓練を過ごす日々で絆を深めビリーを失った後、彼らはそれをきっかけに本当に一つになることができたのです

 

f:id:the-Writer:20170724103053p:plainそれが、特別にビリーが蘇生し、グリッドに立った5人の体をジワジワとスーツが体を包んでいくシーンに繋がります。このジワジワとジックリ時間をかけてくれるあたり、これまでの紆余曲折を静かに高まっていく興奮に昇華させてくれる「カタルシス」ではないでしょうか。

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5人が横一列に並んで登場するシーンは、最高にアツい名場面でしょう。ブライアン・タイラーによる確かなバックグラウンドの演奏と現代的でかっこいい主旋律が融合して、気分をさらに盛り上げてくれます。お約束通りレッドが中心にいますが、別に誰が主役で目立っている、ということを気にする必要はないでしょう。彼らは自分を理解して、真に仲間たちを信頼し、自分の身を預けられることを知っているので、彼ら一人一人が主役なのです。

 

一方で6500万年前、仲間の1人であるグリーンレンジャー=リタが裏切り、まさかの全滅に追い込まれたゾードンのチーム。オープニングから早速レッドレンジャー=ゾードンのみがまだボロボロで生き残っている、というピンチの状況でしたが。

なぜそんな事態となってしまったのか?それは、本編中の示唆的な描写から推測できます。あるシーンでは、リタがトリニーに「私も昔は、今のあなたみたいに純真だった」「けどチームの中では浮いていた」と語り掛けています。また、別のシーンではゾードンが、ジェイソン達5人の変身はあくまで自分の復活のためという趣旨の発言や、「期待していたのと違う」「私にチームを導かせろ」と言ったり、何となくジェイソン達を信頼していない節が見受けられます。

よって、ゾードンのチームには信頼関係が足りなかったのでは?と思うのですね。

「ゾードンの隊は数あるチームのうち、地球を守る担当だった」と説明されているとおり、宇宙にはたくさんのチームが存在しており、ゾードンのチームはその一つであるとされています。しかしそれだけレンジャーが存在するならば、

大量に存在するチームはそれぞれの担当区分を割り当てられる→組織的、業務的になってしまう→メンバーはあくまで仕事仲間であり、本物の友ではない という図式が出来上がってしまいます。f:id:the-Writer:20170724105234p:plainf:id:the-Writer:20170724105245p:plain

あくまで仕事仲間であったゾードンのチームはリタに敗北し、本物の仲間であり友となったジェイソンのレンジャーはリタに勝利を収めました。さらに言えば、仲間であった期間はゾードンの方が長かったはずなのに、です。

この勝敗を分けたのは、絆といった本物のつながりの有無ではないでしょうか?

 

 

 

本作について他にも思う事

非常にリアル

パワーレンジャーの設定や・エイリアンの文明・人間模様・ストーリーの展開など、基本的にこの作品のベクトルは「リアルさ」を突き詰めていると感じました。「バトルが物足りない」「肉弾戦が少なく、すぐロボット戦に移ってしまう」などの意見も結構上がっており、実際それは正しいと思います。

しかし、好意的に捉えるならば、敵側は「ザコ敵」でレンジャーたちを足止めしている隙に、より強力な「巨大化した敵」で目的達成に動く……といった流れは戦略的である、と言えるのではないでしょうか?f:id:the-Writer:20170725113336j:plain日曜朝8時の番組で、「なんで(敵は)最初から巨大化して戦隊をつぶさないの?」という大人げない感想を、実際に脚本に落とし込んできた、と僕は解釈したいです。個人的には、何とかレンジャー達が個々のゾードに乗り込むものの、メガゾードへの合体を発動させることができずに、ゴールダーに対してただひたすらビーム(?)をバンバン打ちまくるしかない、というのはリアルだと思いました。


キャラクター達を極限まで掘り下げて魅力的に描いたキャラクター主体

これは先ほどまでズラッと書いて語ってきたことではありますが!これほどまでに丁寧に、静かにアツく登場人物たちを感情移入できるよう、魅力的に描き出した本作。上記の「バトルが物足りない」というのは、確かにヒーロー映画としては致命的かもしれません(あぁ、今作が好きなだけにこんな事を書くだけで辛い)。

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しかし、その点も「リアルな流れを重視したんだろう」という解釈をしてでも受け入れるならば、今作は極限までヒーローのオリジンを掘り下げた、ヒーロー映画の新たなる金字塔、と僕は断言します!近年、MARVELやDCが次々と繰り出すハイクオリティなスーパーヒーロー映画に対して、このアプローチは新鮮でかつ変化球でもあるでしょう。彼らの変身にいたるまでの部分は、冷静に見直してみると本当にテンポよく、そして楽しく進んでいて、「ティーンエイジ映画」として非常に面白いです。

監督も述べていましたが、彼ら5人の誰かしらには感情移入できる……つまり、地に足が付いたキャラクターである彼らは僕ら観客の憧れで、代表で、友達なのです。


壮大なスケールと映像でありながら、実にパーソナルな物語

観た方ならわかる通り、デザインやサウンドもとても優れており、設定もしっかり作りこまれているので、「もしもこの現実にエイリアンのテクノロジーが埋もれていたら……?」と現実世界と地続きになっている世界観に、難なく入り込むことができるのです。本作は一応『恐竜戦隊ジュウレンジャー』→『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』→『パワーレンジャー』と、以前の作品を原作にしてきているのですが、根幹となる設定は使いつつも、それを一から構成しなおして純粋な「パワーレンジャー」を創り出しているのも素晴らしいです。『ジュウレンジャー』は本当に「原作」であって、ほとんど別物と捉えていいかもしれません。

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また、「敵のリタがジオクリスタルを奪えば、地球上の全生命が死滅する」と突然壮大な世界や危機を聞かされれば、展開が早すぎてポカーンとあっけにとられるのは当然でしょう(実際に劇中の5人もなかなか信じなかった)。しかし、そんなあっけにとられるスケールのストーリーでありながら、その核にあるのは彼ら5人の中ではぐくまれる絆。非常に人間的で、ポジティブなものがこの映画の核なのです。この普遍的で重要な「人と人とのつながり」を、「壮大なスケール」で描き出す事こそ、本作の魅力ともいえるでしょう。



Twitterの反応も! #パワレン 

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待望の続編に向けて

パワーレンジャー』を観て大好きになった僕は、「もっとあの5人が観たい!」「続編が観たい!」と思いました。

僕なりに続編の情報をまとめてみましたが、

現在の所、続編は5本分企画されているそうですね!

2017年6月27日時点で、既に『パワーレンジャー2(仮)』の話し合いが行われているそうです(ただし今作の監督ディーン・イズラライトは参加していない)。

最も、それが本当に実現するかは全世界の興行収入にもよるのでしょうが……是非とも実現してほしいところです。

 

また『パワーレンジャー2(仮)』についてですが、まさかのポスト・クレジット・シーンが『パワーレンジャー』にもついていました!

 

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顔は見せないものの、緑色のジャケット・(恐らく)ドラゴンの刺繍・そして「トミー・オリバー」という名前……間違いなく、次作に6人目のレンジャーであるグリーンレンジャー(あるいはドラゴンレンジャー) 登場のティーザーですね!

 

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  • オープニングの6500万年前の映像に、一瞬ながらリタのレンジャー形態=グリーンレンジャーが登場している
  • リタがメガゾードに吹っ飛ばされる時にコインを持っていない=グリーンレンジャーのコインはエンジェル・グローブ内に未だ落ちている
  • 意味深に『パワーレンジャー』公式からグリーンレンジャーのヘルメットの15秒映像が公開された

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これらの事から、間違いなく次作にグリーンレンジャーは登場するでしょう。

 

原点である『ジュウレンジャー』『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』では、ドラゴンレンジャーとはその色鮮やかなスーツに加えて金色の装甲をまとった追加戦士です。原典の特徴を引き継ぐならば、金色の追加装甲(これはリタの装備が純金の杖なことが伏線になる)・専用のダガーを持つ・専用のゾードを持つ ことは確実です。

 また、本来は男性のキャラクターですが、レッドレンジャーことジェイソンを演じるデイカー・モンゴメリーによると

「僕と多くのキャストで話し合い、グリーンレンジャーは女の子であるべきだという事になりました。3人の男の子、3人の女の子___これならバランスがとれます。まだ空白であり、わかりませんが。誰がそこに入ろうと、たとえ女の子であろうと、間違いなくドラマを創り出すことになります。そのドラマを作品に投入し、僕らがそれにどう関係していてどうやって取り組んでいくのかを観るのは興味深いでしょう」

 

なんと、原典を考えると多少ビックリではありますが、実写化において、特に今回は一からすべてを創り出した事を考えると、このようなヒネリも必要かもしれませんね。実際、MARVELの『ドクター・ストレンジ』では、主人公のストレンジの師匠にあたるキャラクターは、原作コミックでは男性だったのが実写化に際して女性に変更されています。

今回堅い関係を築き上げたこの5人に、追加の1人がどのように絡んできてどのような新しい「化学反応」を起こすのか。続編に関してはグリーンレンジャーについて考えるだけでも非常に楽しみです。また、ザコ敵との戦いで、もっと5人の息の合った連係プレー・レッドだけではない他の4人の専用武器・必殺技 など沢山観たいものがあります。製作陣に期待しましょう。

 

 

 

 

 

以上、『パワーレンジャー』について、思うことをすべて書いてみました。

とにかく僕は今作は傑作だと思いますし、とにかく大好きな一本です。

最後まで本記事を読んでくれた方には感謝いたします、どうもありがとうございましたm(_ _)m

そして、是非とももう一度だけ劇場に足を運んでほしいです!特にバトルシーンをメインに期待していた方は、「これはティーンエイジ映画なんだ」と思って観るとかなり楽しめるようになるのではないでしょうか?

 

最後に……パワーレンジャー』、最高でした!GO!GO! Power Rangers!